2004/01/31
男…「明日への希望」とか「未来」とかいうけど、それはまず前の日に、明日の朝おきたら何を食べるかということから始まるんだね。
女…え~、そんなあ「明日」とか「未来」というのは、そんな近い日のことじゃないし、「希望」も朝ごはんのことじゃないでしょう。
男…いや、でも、明日朝おきたら何をくうかを考えないで、明日も未来も希望もヘチマもカボチャもナットウもない。明日朝おきたら何をくうかを考えると、まず生きていることが楽しくなるし明日が楽しみになる。
女…そんことありません、ああ、朝が来たら、また何かくわなくてはいけないメンドウだわと思うだけです。
男…では、あんたは将来への夢や希望はないのか。
女…それはありますが、それと朝ごはんは関係ないでしょう。
男…そういうこといっているやつには、未来はないね。すべては、朝めしから始まる。だいたいな、人間は寝ることで一度死ぬ、毎日一度は死んでるわけだ。それで、オフ状態になるだろ、で、おきればオンになるかというとならんのだよ、めしくってオンにして生き返らないと、その段階で夢も希望も消えるのさ。
女…それは極論でしょう。朝、目が覚めて、食事をしなくても、身体は生きてますわよ。
男…それは「生きている」ことを錯覚しているにすぎない、ただちにめしを食べなくてはならない。鳥や動物をみたまえ、おきたらすぐめしだ。それでイノチはリセットされる。人間の場合は、大脳がじゃまして、そうはいかない。朝おきたら心臓が動いていた、そこで「ああ生きている。このイノチに何かを与えなくては」と思わなくてはならない。しかし、そのとき何も食べるものがなかったら、どうする、イノチに対して失礼であろう。そういうイノチに失礼をはたらくやつが、明日だの希望だの未来だのを口にするなんてしゃらくせえ。
女…朝おきて、「ああ、まだ生きていたか、目覚めないで死んでいたらよかったのに」と思うことがあります。
男…そりゃ、こないだ、オトコにふられたときだろう。しかし、人間は、このサイトのメシゴトロジーのところにもあるが、山田風太郎さんが「最愛の人が死んだ日にも、人は飯を食う」と書いているように、そういうものなのだ。そういうものだから、前の日から翌日の朝めしを考えると、生きることが楽しくなるのさ。
女…ほんとでしょうか。
男…さあて、明日の朝めしは、何をたべよっかなあ。
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2004/01/30
男…今朝はね、昨夜買ってきたコンビニのオニギリを茶漬にして食べたよ。
女…コンビニのオニギリなんか食べていいのですか。
男…そんなものは、時と場合さ。まず、朝、食べるということが先決だからね。もう酒飲んで酔っぱらって12時過ぎの帰宅ということでありましたから。
女…わざわざ茶漬にしたのですか。
男…これがうまいんだなあ。オニギリをね、割ってめし茶碗に入れ、納豆をかけて、お茶をかけるのさ。納豆は、いま「きりざい」という、おれの田舎、新潟の味噌漬けをきざんだやつがあるのだけど、それとシラスをまぜる。
女…納豆にシラスですか。
男…納豆とシラスは常備だね。日本人の基本はな、穀物と大豆と魚だよ。
女…あと、お茶。
男…おお、わかってきたな。ようするに、まずは、食事や料理を「生きる」という感覚のなかにとりもどさなくてはならない。
女…力強く生きる感覚ですね。
男…おお、わかってきたな。食事や料理は、いままで「調理」と「栄養」そして「味覚」や「躾」に偏向していた。矮小化されていた。「生きる」という感覚が欠落して、あれをやってはいけない、こうでなくてはいけないという、それは調理師とか栄養士とか家政学者とかグルメ評論家とかが稼ぐための観念的なリクツであって、そのために食事や料理はおかしくなったんだよ。だからさ、そういう人たちが増えて、テレビなんかでも、そういう人たちを権威にしてガンガンやっているにもかかわらず、実際は、朝食を食べる人が少なくなっているとか、ちゃんと3食たべないひとが増えているとか、ということになるのさ。そういうリクツから働き生きる感覚のなかに食事や料理をとりもださなくてはいけないのであ~る。
女…でも、そういうプロのみなさんは、朝ごはんちゃんと食べなさい、家庭で料理を作りましょうとか言ってますよ。コンビニのオニギリや弁当、おかずはいけないとか。
男…プロというのは、自分で荒野をつくっておいて、そしてまたその荒野をネタにリクツを言って稼ぐのだよ。だから、前からいわれているだろ、日本では、同じテーマが同じレベルで蒸し返される、って。そういうプロの言うことなんか、どうでもええの。自分の「生きる」感覚で食事をすることさ。
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2004/01/28
女…朝、コーヒーじゃ、いけないのですか。
男…いけない、とは、なかなかいえないのだが、コーヒーというのはメシへの広がりがないよなあ。やはり、茶を飲むね。緑茶でもほうじ茶でもいいのだが、どうも緑茶のほうが、目覚めはよいし食欲が刺激されるような気がする。
女…コーヒーとトーストにハムエッグに生野菜少々なんてのが、朝からオシャレな気分でやる気が出ると思いますが。
男…だめだめ、そういうこといっていたら、メンドウで朝めしくわなくなるよ。だいたい、あんた、そういう朝めしが続いているのか。
女…いえ、そういうのが、朝からオシャレな気分でいいな、ということで、休みの日のブランチですね。
男…そうだろ。出勤前の朝はな、戦場のようなものだぞ。そういうときは戦場で食べるつもりでやらなきゃ、朝めしの習慣なんか身に付かないのさ。朝からオシャレなんかしゃらくせえ、戦場の戦闘のめしをくえってんだ。つまり行動食だよ。
女…となると、カロリーメイトでしょうか。
男…ああ、なんですぐそうなっちゃうんだろうねえ。まず、お茶だよ、お茶。お茶はな、旨みも渋みもあるぞ。うまくて、味覚が刺激されるね。それでお茶を飲むと、忙しくてもめしをくいたいなあ、と、気分が高揚するのさ。
女…でも、めしのしたくも大変でしょう。
男…大変なものか、みんな前の晩に多めに作っておけばいいのさ。
女…となると、前の晩、めしを作らなくてはならない。
男…ま、そういうことだ。
女…しかし、晩ごはんは外食が、ほとんどです。あと買ってきて食べるとか。
男…だから、まず、朝、お茶を飲むんだよ。晩めしもつくらないやつが、いきなり、朝めしちゃんと作って食べられるわけないんだから。まず朝は、茶を飲むことから習慣化するんだな。しかし、電気釜セットしておけば、めしが炊けているんだから、ついでに茶漬でもという展開は簡単なんだよ。コーヒーじゃ、そうはいかんだろ、コーヒーで茶漬できるか?
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2004/01/26
男…断っておくけどね、俺はラーメンが嫌いなのではなく、荒野をつくるだけのゲーム感覚のラーメングルメをいじめてやりたいだけなのさ。今朝も、その鋭気を養うために、朝めしをシッカリくいました。今朝は、めしと味噌汁と納豆だったぞ。納豆ってのはさあ、立派な食べ物だよなあ。江戸のビンボウ庶民も常食にしていて、いまでも食べられている。ま、江戸期の納豆とは違いがあると思うけど、食は、ゆっくり少しずつ変わっている面と、急激に大きく変わっている面、全国的に平均化されている面と地域的あるいは家庭レベルで異なる面、そういう総合なんだな。その一つだけを取り出して、ああだこうだ言っていると全体を見落とすね。
女…だから、なんですか。
男…だから、朝めしは大事、基本だということだよ。ラーメングルメにはわからんだろうがな。
女…朝めしというのは、なんとなくメンドウですよね。
男…だから、朝めし問題が大事なんだなあ。というのも料理、つまりめしのしたくと後片づけについて、料理は義務だとか、イヤ料理は楽しいものだし楽しくやれる、とか、いろいろ言われてきたけど、朝めしを考えると、そのどちらも当たってないような気がするし、そういう風に語っていたから、朝めしを食べる習慣が瓦解しているとも言えるんじゃないだろうか。
女…前の晩、コンビニで買ってきたニギリメシを食べますけど。
男…それでもいいんじゃないかな。朝めしは、なるべく家庭を出る前に家庭で食べる、そのことで1人暮らしの部屋でも家庭になるのだし、ましてや家族がいたら、どんなかたちでも何を食べてもいい、お茶を一杯飲むだけでもいいから、まずそういう習慣が基本になるというのが、すべての生きていくことに関わる一歩だと思う。
女…外食じゃ、いけないのですか。
男…1人暮らしで炊事設備がないとか、ときには普通ではない事情があって外食というのはありうるけど。気どるな力強く生きよう、ということであるなら、朝、まずはお茶の一杯でもいいから飲んで、「よーし、やるぞ」という気分になることではないだろうかと思うのだ。
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2004/01/25
男…「一年の計は元旦にあり」というセリフ、いまでも使うのかな。それはともかく、一日の始まりは朝食にあり、だね。
女…朝からラーメン食べるのですか。
男…バカタレ、朝は、一杯のお茶から始まるのだ。起きたら、まず湯をわかし、テーブルの前に座って、お茶を一杯飲む。もちろん、緑茶だよ。うまいんだなあ、これが。これで、スッキリするね。
女…電気ポットで、いつでもお湯が沸いてます。
男…バカタレ、朝はガスでお湯を沸かすんだよ、部屋も暖まるだろ。
女…お部屋にはエアコンがついてます。
男…バカタレ、エアコンつけて薄着しているやつ、こういうバカは、大衆食堂のラーメンのうまさがわからんやつだ。しかし、ちかごろは、大衆食堂も暖房完備がふえて、コート着たままラーメンにかじりつくなんてことは、あまりないな。しかし、大宮のいづみやの場合は、店内が広いし古い建物で天井も高いし、あまり暖房が効いてないからコート着たまま酒飲んでラーメンにかじりつくね。ラーメンというのはな、そういう雰囲気が大事なのだよ。
女…朝めしの話じゃないんですか。
男…朝めしというと味噌汁に納豆かな。おれは味噌汁にタマゴを落として、めしにかけて食べるね。これで一日がガツンといく。朝、力強くめしをくうかどうか、これで一日の元気がちがうね。ラーメンなんかクソクラエだよ。だいたいラーメン屋の家族は、朝からラーメン食べているのか、日本一のラーメンだって、ラーメン好きだって、三食ラーメンというわけにはいかないだろう。一日一回ラーメン食べるだけでも異常だね。ラーメン屋の家族の場合は、一日一回はラーメンを食べるのかな。
女…ラーメンのことは、どうでもいいんでしょ。朝めしは?
男…ラーメンというのは、利益率がいいんだよね。だから不況でもドンドン出店できるのさ。原価率は定食の三分の一だろうね、経費だって安いものさ。最短一週間ぐらいで覚えて出店できるんだから、出店コストも安上がり。悪貨良貨を駆逐すの勢いだね。ああ、荒野のなかで、今日もまた朝からめしをかきこみ、ラーメングルメとの戦いがはじまる。
女…そういうバカいってないで、ラーメンブームにのってひと稼ぎして、私にビトンのバッグ買ってちょうだい。
男…クタバレ! ラーメングルメとの戦いのためにも、朝は、お茶とめしと味噌汁は必需だね。
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2004/01/23
男…しかし、なんで、ラーメンブームなんていう、どうでもいいことを話題にしているのだろうか。
女…さあ、確かアミノ酸あたりの話だったと思いますが。でも、ラーメンブームというかラーメングルメをネタにするのって、けっこう面白いですよね。女から見ると男たちのバカさ加減というか、かわいらしさというか。ラーメンブームの担い手は、圧倒的に男でしょ。「魂のラーメン」なんていう言い方、あんなの男じゃないと口にできませんね、と、ある新聞社の女性記者と話をして笑いました。もっと作る方も食べる方も「たかがラーメンされどラーメン」というぐらいの気楽さで楽しめないものかしら。
男…20数年前は、○木屋にしてもどこのラーメンにしても「一流」や「魂」なんて言葉を口にする風潮はなかったのにね。そんなものはラーメンの歴史でも伝統でもないよ。80年代以後のグルメたちの創造さ。
女…でも、あなたがた男は、そうやってラーメンを堕落させたのよ。食べ物に一流二流をつけることで、自分は一流の人間、一流がわかる人間だということを主張して、陶酔し優越感にひたりたい。食べ物を、そういうことに利用するなんて最低よ。女のように、食べ物は純粋に味わいや食べる雰囲気を楽しみ、自分を一流に見せたいときはビトンのバッグなどで勝負するものよ。
男…ケッ、しゃらくせえ、なにがビトンだ。そんなの身に着けたってバカ女はバカ女で一流にはなれないよ。
女…でも、食べ物を、そういう道具に使う根性は最低よ。
男…ケッ、男にビトンやティファニーを買ってもらっている女が何いうか。
女…ふん、男なら、女にそれぐらい買ってくれるものよ。それもできない、あんたみたいなウドの大木無芸大食男が、ラーメンで一流ヅラしているのよ。
男…こらこら、おまえ男にふられたな。
女…うるさい!この甲斐性なし。讃岐うどんの安いうまいを見習って、ラーメンも安いうまいで勝負してみなさい。750円のラーメン、しかもラーメンしかださない店が、大衆食堂の450円のラーメンよりなんぼうまくても当然というものよ。そんなものを、ありがたがり、おだてあげている客も、どうかしているわ。
男…うへー、男にふられた女はこわい。大宮のいづみやのラーメン食べながら「行列のできない大衆食堂のラーメン」でも考えていたほうが、こんなバカ女の相手しているよりいいや。
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2004/01/22
女…○木屋さんて、こうなると、なんだかちょっと悲しいですね。
男…ま、お互い人間だから、おかしくなることはあるけど。マスコミに翻弄されたというか。ちょっと高飛車すぎるね。
女…やはり歴史が浅いからでしょうか。
男…そういうこともあるかな。ラーメンブームは「ゲーム感覚」つまり「競技感覚」のブームなんだけど。歴史が浅くて、だから味覚文化としては成熟してない単調な料理ほど、競技の具にしやすいんだなあ。何か面白いことないかなと思っている人も飛びつきやすい。ラーメンは、その典型だね。で、本来、優れた職人であるなら、料理をゲームの具にするなど、潔しとしないはずなんだけど……新しい業界は野心も強いから。
女…○木屋さんの文章を見ると、ゲーム感覚のブームのなかで人間がどうなるか、こわいものがあります。
男…ま、人間、欲があるから、こういうブームにまきこまれたら、おれもあんたもどうなるかわからんけど。
女…ゲームというのは、熱中してしまうし。
男…長い歴史の料理、うどんやそばはそうだけど、ブームがあっても、ゲーム感覚のグルメの対象にはしにくいんだよね。仮にゲームの対象にしても、ゲームをするには、比較のポイントをいくつかに絞って比べるね、なるべく単純化しないと比較はできないから。
で、その結果が出ても、それだけじゃ、うどんそばを把握したとはいえないぐらい多様で深いから、ゲーム感覚のブームが全体を支配するということにはならない。それぞれのつくり方たのしみ方が強く生きている。
ラーメンの場合は、たとえば麺だけど、ほとんどシコシコ感とかツルツル感の食感あるいは太さの比較で皮相的、粉の風味や味が話題になることはないし、話題にする力がない。まだそういう状態なんだな。
女…おなじ麺類でも、そばやうどん好きのほうが、人間も深みがあるような気がします。
男…それはどうかわからないけど、ラーメンでグルメだなんていっているうちは、日本の味覚文化は堕落というのかな。志が低いというか。簡単に飛びつけるものに飛びついて、そりゃまあ好き好きだけど、それぐらいで偉そうな顔だけはしてほしくないな。もっと、いろいろな味覚を楽しまなくては、味覚は相対的なものだから、ラーメンだけ食べていてもラーメンの味はわからない面が残るでしょう。うどんそば好きから見たら、どんなラーメンも、単調なものかもしれないよ。
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2004/01/21
男…こんなメールがきたのだけどね。
女…長いですねえ。なんだか怒ってますねえ。
男…要約して紹介しよう。しかし、たしかに、ラーメンブームはおかしいことになっているな。
(男に届いたメールの要約)
アミノ酸味のこと、面白く拝読しています。ラーメンブームですが、バブル経済と似たものがあるように思います。バブルのときのように自己を失い思い上がっています。
と申しますのも、かの有名な荻窪の○木屋ですが、そのホームページには「創業50年。妥協を許さず日々研修を重ね、一流を守りつづけています。」とあるのです。ご存知でしょうか?
「一流を守りつづけています。」ですと! 驚くべき無知、傲慢。いったい、いつからどうして「一流」になったのでしょう。確かにラーメンの値段が750円で、高いことにかけては「一流」といえましょうが。
すでに一流との評価があっても、つねに一流をめざしているのが普通だと思うのでありますが、臆面もなく自ら「一流を守りつづけています。」とは……。それに、たとえば江戸期の創業で「幻の酒」といわれる逸品をつくっているような蔵元でも、「創業50年。妥協を許さず日々研修を重ね、一流を守りつづけています。」というような仰々しいことはいわないでしょう。真の一流ほど、もっと謙虚であります。
また、こんなことも言っています。「過去にこの味を習得しようと○木屋の門をたたき、この味を出せることを安易に考え、退職した人は数多くおりますが、実際、修行5年にて○木屋の全て(秘)のほぼ2割と考えています。そこにたかがラーメンといえども奥深きものが一杯の器の中にこめられているのです。」
これは自慢話なのでしょうが、こんなことを自社の宣伝に書くとは、これまた驚くべきセンスです。こういうおためごかしは、ラーメングルメ界ではよく聞きますが、修行に長くかかるというのは、修行期間が短くなるような教え方の工夫研究を怠ってきたからにほかならないのであって、日本料理業界にもあった(最近はなくなりつつある)悪癖にすぎません。
○木屋がこのようなことを堂々とホームページに書くのは、ラーメンブームの実体をあらわしており、ラーメンブームの店も客も、とてもレベルが低いことの証明と見てよいと思うのですが、いかがでしょうか。
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2004/01/20
女…なんだかラーメンを目のかたきにしているようですが。
男…ブームがもたらす、ラーメン荒野を問題にしているだけだよ。「酸いも甘いもかみわける」という言葉があるね。あれは「酸いも甘いもかみわける」ようになったら大人という意味だろ。いろいろな味を食べ理解して成長するんだな人間は。幼児期には幼児期の味覚文化があり、青年期には青年期の味覚文化があり、老年期には老年期の味覚文化がある。
女…「苦みばしった男」なんていう言い方もあって、子供には使われませんね。あなたも、別な意味で、そういうふうには言われないけど。
男…なんじゃ、おれがいい男じゃないというのか。フン。先日、知り合いが「私もやっと大人になったのか、ワインの苦味のよさがわかるようになりました」といっていた。酸味、辛味、苦味、渋みなどは、大人の味なのだな。
これは、人類が自然から食べ物をとりいれた歴史と関係あるようだ。まず甘いのが安全ということで覚えたらしい。子供の場合は、食べ物について十分の経験と知識がないから甘いのを「うまい」として好み、酸っぱい辛い苦い渋いなどはキケン信号になっている。嫌がり、吐き出す。子供はなんでも口にいれるから、そういうふうになっているんだろうねえ。で、人類が食について経験と知識を蓄えながら、甘味以外の味をわがものとし楽しみ料理を広げてきたように、子供も成長する過程で味覚を広げ、食文化的成長をする。つまり大人になる。
女…その場合、アミノ酸味つまり旨みというのは甘味と関係あるのでしょうか。
男…日本人の場合「旨み」というぐらい「うまい」のもとになっている。子供のときから甘味とセットだね。それに塩味とも関係するようだな。甘味は、ちょっとした塩味と一緒のほうがうまく感じるように、旨みも塩味とセットのほうがうまく感じるようだ。これも人体が塩分を必要とし、甘いものを食べながら塩分をとってきたことに関係するだろうね。そういうものは早いうちに「うまい」と覚える。
女…ラーメンは、その旨みと塩分のセットのものだと。
男…子供が好むものはたいがいそういうものだということだね。ある意味じゃ、根っこのところじゃ単調なんだよ。大人になっても、そんな味ばかり追いかけていたら、アタマも単調になるんじゃないの。
女…あらあら、そんなこと言ったらラーメン好きに袋叩きですわよ。
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2004/01/19
男…ようするに、人間は、いろいろなモノを食べ、いろいろな味覚を楽しむ、それと、新しいモノや味覚にチャレンジしてみるということで、味覚文化や食文化を発達させてきたわけだ。
女…それが、なんでもアジノモトでアンシン、それを基本にしたバリエーションでしかない、ということでは荒野になるということですね。
男…ま、アジノモトは、もっというと「アミノ酸」味ということになるけど。
女…いつのまにか「化学調味料」とはいわず、「アミノ酸」になりました。
男…「アミノ酸」ということになると、これは普通「旨み」というわけで、これがいろいろな食品を楽しむための使い方ならよいけど、「アミノ酸」味に中毒しちゃうってかんじになると、まったく話はちがうね。ラーメンの場合は、アジノモトを使ってなくても、味のベースがアミノ酸味だね。それは、もともとアジノモトで味を決めていたベースがあるから、そうなってきた。
女…アミノ酸味さえよければ、あとは五味などゴミみたいなものだと。
男…こらこら、そんなとこでダジャレして。ま、だけどそういうことなのだな。たとえばラーメン食べて、苦味や渋みについて、ウンチクたれるやつはいない。ラーメンだけ食べていたら、苦味や渋みを楽しむという感覚そのものが失せてしまうだろうね。
女…日本人にとっては旨みは、ベースなのではないでしょうか。
男…そうではあるけど、それは甘味と同じように早く知る慣れる味ということで、大人に成長するにしたがい、酸味や辛味や渋みも一緒に楽しむようになるのだけど、それがアミノ酸レベルでとまってしまうということが問題なんだな。
女…では、ラーメン好きが多いというのは、味覚的には成長のとまった幼稚なガキが多いということなのですね。
男…ま、そういうこと。あんなもの、ガキでもよろこんで食べるだろ。ガキのうちから食べて、そのままラーメン好きやっていたら、ま、味覚の楽しみを知らないに同じだろうね。そういう意味じゃ、最近、寿司屋でガキ連れて、カウンターに座ってガキにお好みで食わせているバカ親が増えたけど、おかしいね。サビぬきの寿司をガキに食わせて、そのガキはというと醤油をべっちゃりつけて食べる。寿司と醤油じゃ、アミノ酸味たべているようなものだよ、サビを上手に効かせてこそ寿司なのに、もう根本から間違った食べさせ方しているね。
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2004/01/18
女…アジノモトはイケナイということでしょうか。
男…イケナイということじゃないね。アジノモトが味覚の根っこのところ、基本的なところをつくっているものについては、それが拡大すると味覚文化にとっては荒野をつくるだけだということを、いまは話しているだけ。
女…ラーメンは、最近は、アジノモトの類をつかわないものも増えてますよね。
男…しかし、それは、いくつか問題があるんだなあ。その話はいずれにやることにして。どのみち、いまのラーメンブームは、アジノモトで普及したマーケットにのっかって、つまりアジノモト文化から生まれたものではある。「レベル」の高さを決める、その舌の文化の根っこにアジノモトの味覚があることは否定できない。そもそもカリスマが存在できうるということが、その証明だよ。カリスマというのは、カリスマがよいという味をほかの大多数が熱烈に支持して、カリスマになるわけだけど、つまりそれは「レベルが高い」というけど、もっとも幅広い支持のある味で、言い方を変えれば個性がない。そういう構造がなぜできるかというと、もとのところの基準にアジノモトがあって、すると、それは同時にアジノモト的でないところへも一緒に動いていく構造であるにすぎないということだね。アジノモトを克服しているわけじゃないのさ。
女…個性的な味も、カリスマが褒めることで、広く受け入れられるということがあるのではないでしょうか。
男…それは一般的にはありうるけど、ラーメンや清酒にとっては、いまのところ、そういうキザシはないね。それはラーメンや清酒を別々に考えていたのでは、この「荒野」問題の本質的なところは、わからないのだよ。アジノモトが根っこのところにあるマーケット全体を見ないとね。とくに、ラーメンも清酒も「汁モノ」という面があるわけだけど、そういう意味では、アジノモト味で、どんどんいろいろなものがつくられている飲料水のたぐいとの関係は見逃せない。アジノモト味の「汁モノ」への中毒といってよいほどの執着が、ラーメンブームの背景にあると思う。
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2004/01/17
女…でもあなたは清酒が好きですわよ。
男…そりゃ、ガキのころから清酒だからね。ドブロクだって飲んだぞ。だからといって、ほかの酒がマズイということじゃないし。清酒は清酒のよさ、焼酎は焼酎のよさ。おれの田舎は越後の米どころだから、おれがガキのころは、焼酎は貧乏人の飲む酒といわれていたよ。
女…そんな新潟の片田舎まで焼酎があったのですか。
男…あったよ。白波とか寶とかが。で、焼酎が安かったのは、酒税法上の扱いの違いで、焼酎そのものが問題なわけじゃなかったけど、焼酎は「安い」「臭い」だから貧乏人の飲む酒という偏見ができたのかなあ。なにしろ、なにがなんでもコメがイチバンという土地柄だったから。
女…焼酎は、ニオイや味にクセがありますよね。
男…だから、あんなにクセのあるものがブームになるというのが、おもしろいね。焼酎は、清酒と比べたら、猥雑な味覚のものだよ。清酒は、名前からして清新で、ニオイはあるけど焼酎とちがって、ほのかな香りで、なんとなくお上品というのかな、それに対して焼酎は「民衆の酒 焼酎は」って、うたわれたぐらい労働者の酒で、文化的にまったくちがうね。
女…焼酎の香りが好きという女のひとも少なくないですよ。
男…だからさ、それが面白いね。たしかに、イモ焼酎のニオイなど、なかなかいいんだけど、清酒とくらべたら、そうとうクセがあるよ。女のひとは、クサイ香水を使うようになったから、焼酎のニオイにも抵抗がなくなったのかな。
女…香りを楽しむということが多様になってきたということでしょうか。
男…さあな。とにかくおれは猥雑系のものが偏見なく受け入れられるようになったというのが面白いと思っている。
女…もう「幻の焼酎」なんてのもありますし。
男…すぐそうなっちゃうってのがね、しょうがないんだけど。「幻の酒」としては先駆の越の寒梅は、幻の酒をつくろうと思ってつくっていたわけじゃなくて、大きな流れがアジノモト化するなかで、コツコツ地元のひとのための酒をつくっていただけなのさ。あそこの姿勢はいまでも一貫しているけど地酒だね。つまり「地酒は本来、地元の食材とともに味わってこそ価値が生まれるもの」ということだね。新潟もかつては、地域がちがうと酒の味がまったくちがっていた。
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2004/01/16
女…焼酎は、女性のあいだでも、かなりのブームです。
男…焼酎ブームの動向は面白いね。これはラーメンとは対極にあるブームといえそうだし、そもそも日本酒イコール清酒という構造がおかしかったのだから、ブームというより、清酒に偏向していた日本酒が、本来の現実的な多様なカタチにもどる動きかも知れない。
女…では、焼酎ブームはラーメンブームと違って、荒野ではなく未来が期待できるということですね。
男…そう見ていいんではないかな。清酒は、そういう意味では荒野をつくってきたわけで、ラーメンと似ている。
女…清酒メーカーの戦後の躍進やナショナルブランド化には、アジノモトが欠かせませんでした。ということですね。
男…いまでも堂々と三増酒のたぐいが売られているし、それは三増酒として明確に区別されて売買されているなら問題にすることはないけど、表示も、わかりにくいし。
女…しかし、焼酎もブームで、ウンチクがすごいですね。
男…それは嗜好品につきまとう文化で、あらゆる酒がウンチクを飲むようなものさ。おれみたいに酔えばよい、アルコールならよいというひと以外はね。焼酎と清酒が基本的にちがう点は、文化的にという意味だけど、焼酎は自分で、いろいろと味を変えて楽しむことができることだね。材料にしても、いろいろ。飲み方も、いろいろ。女性に普及したのは、ジュースのたぐいで割って飲めるということも大きいだろうね。清酒は、アジノモトで均一化されて拡大したマーケットに、次は機械的な量産で対応していったから、飲む側の自由裁量の幅は狭いし、そもそも味覚の幅が狭いところで成り立ってしまったのだなあ。だから一方で地酒ブームというのがおきたわけだけど。
女…ラーメンや清酒には「カリスマ」といいますか評論家がいますが、焼酎にはいませんね。ナシでブームになった。
男…これはインターネットによる口コミも大きいし、これから評論家が出てくる可能性はあるけど、ラーメンや清酒のようなわけにはいかないね。カリスマが成り立つには、一見個性があって、だからウンチクも楽しめるけど、味覚の基本的なところでは無個性であるアジノモトで成り立ってきた市場でないと難しいと思うよ。個性的であることに慣れてない人が群がるのが、清酒でありラーメンである、というふうに言えるかも。いままでは。
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2004/01/15
男…ラーメンで日本の食文化は荒野になる。というか、すでになった。といえるような気がする。もともと、ラーメンの味覚文化の根っこのところにはアジノモトがあって、それが、ラーメンは歴史が浅いにもかかわらず、短期間に巨大マーケットに成長できた最大の理由だから。
女…それはまた「荒野」とは悲観的な。どういう意味でしょうか。
男…食文化というのは、料理の想像力の源だね。ある料理を創造、ま、新奇の料理の創造ではなくても、ある材料から何か作ろうというときには、まず最初にイメージが必要だな。そのイメージを生む想像力というのは、簡単にいってしまえば食文化に源がある。で、どんな食べ物も、その歴史の背後には、そういう文化の蓄積がありながら普及してきたということがあるね。ラーメンの土壌には、うどんやそばやそーめんの文化があった。では、ラーメンの文化は、そのように、うどんやそばやそーめんの文化がラーメンを生む土壌になりえたように、何かの食べ物を生む土壌になりうるかというと、なれない。袋小路なのさ。それが、どんどん広がっている。そういう荒野だね。
女…つまり基本的にはアジノモトで成り立っていたマーケットを、手をかえ品をかえやって、広がってきただけで、想像力が育ってない。ということ。
男…ま、そういうことだね。ラーメン文化は何も生まない、という意味で荒野だということさ。
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2004/01/14
女…「料理は娯楽である」という言い方は、あまり聞きませんが、「ゲーム感覚のグルメ」とかいう言い方はありますね。
男…料理は生活だけど、マーケットとして、料理が娯楽になってしまったのが「ゲーム感覚のグルメ」といえるかもなあ。
女…ようするに食品産業や外食産業としては、生活だろうと娯楽だろうと芸術だろうと、売れればよいわけで。
男…スポンサー頼りのマスコミも、そういう食品産業や外食産業の意向をくむどころか、そちらの方向へ積極的に流れているね。いまのマスコミには、マスコミ文化として、普通の生活料理を話題にする力がない。そういう積み重ねがないから。普通から外れた突出したことを「ニュース」としてウリにしてきたわけだし、普通の生活より「娯楽性」や「芸術性」のほうがセンセーショナルに扱えて、ウリやすいということだね。
女…料理が生活じゃ、おもしろくでもないですからね。
男…でも、生活でも、楽しめることはできるんだよ。たとえば、古くは、明治の『食道楽』の村井弦斎さんなんか、彼の著書は題名からすると「道楽」の本みたいだし、彼は実際、食の道楽を極めたといっていいぐらい、道楽しているわけだけど、そこに止まって「どうだおれは、食通なんだぞ」と威張っていたわけではない。普通の家庭の食の楽しみを追及しているんだな。だから彼の「食育論」なんか、いま食育を問題にしている連中も読んだほうがよいくらいの内容だよ。
女…もともと生活である料理を、娯楽や芸術にするには、それがあたかも「客観的事実」であるかごとき装いが必要になりますね。
男…そこに生まれたのが、とくに80年代以降だけど、ある種の「料理評論家」や「料理研究家」そういう肩書ではないにしても、「フードライター」「グルメライター」とか、何千軒くいたおしたとかいう、そういう権威だね。権威をリーダーにして新しいマーケットをつくるというのは、最近はよくある方法さ。また、この食の関係には既存の「学会」という権威が存在しないから、「全国何千軒くいたおした」といった「数」が簡単に権威になる。食文化の中味なんか関係ない。
女…そして料理は娯楽になった。A級グルメは「料理は芸術」、B級グルメは「料理は娯楽」、という感じでしょうか。
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2004/01/12
女…料理は芸術といわれたりしますね。
男…料理は生活ですよ。
女…料理は芸術ではないのですか。
男…料理は芸術だ、というやつらの「芸術」が、どうも芸術ではない気がする。
女…あえて生活だといいたいわけですね。
男…あえてね。安っぽい芸術の仲間に料理を加えたくない。料理は生活なのである。
女…では、生活は芸術でしょうか。
男…おお、いいところを突いてきた。しかし、生活は生活である、と、あえていいたい。生活を安っぽい芸術のシモベにしたくないから。
女…ようするに芸術は安っぽいということでしょうか。
男…生活こそ最高のもの。あんた、めしくわずに芸術できるか?
女…いえ、それはできませぬが、しかし、そういうことじゃないでしょ。
男…そういうことなんだよ、そこを、なんかカンチガイしたまま、芸術だのクソだのといっても始まらないのさ。下品なうまさについて理解せよ。
女…えっ、なんです、「下品なうまさ」とは。「上品なうまさ」ではないのですか。
男…下品なうまさだよ。それが理解できたら、料理は芸術であってもいいだろう。
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2004/01/11
昨夜、エンテツは、今年初めての外出アンド飲み会で、はしゃぎまくり酔っ払って転んで、帰って気がついたら頭にコブができていました。うれしいので、ここに書くことにしました。以上。
かなり酔っていたということもありますが、ここのところ引きこもりが続いていたので、かなり足腰が弱っているような。
力強くめしをくっているだけじゃなく、毎日散歩ぐらいしないといかんなあ。
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2004/01/10
女…日本のグルメ騒動のグルメたちを見ていると、「食卓の喜びについて洗練された嗜好を深めた人。飲食について、優れ、また、好みの厳しい人」が「グルメ」とは、ま、押し付けがましいぐらい「好みには厳しい」ようではありますけど、その前のほうは、そうかなあ、と思います。
男…日本の「グルメ」という言葉は、そんなに深い意味はないからね。ファッション、風俗として「うまいもの好き」という感じなのかなあ。あるいは「食べ歩き好き」とかね。どうも後者が、ちかいような気がする。それに、メネルさんが書いている「ガストロノーム」や「グルメ」は、啓蒙主義の影響が色濃い時代背景だからね。貴族趣味と啓蒙主義が、「ガストロノーム」や「グルメ」に深く関係している。
女…「力強くめしをくえ」というのは、「うまさ」とどういう関係になるのでしょうか。
男…オノレがうまいとするものをうまいとせよ、というぐらいかな。あるいは「力強くめしをくう」感覚そのものを「うまい」とする。とかね。
女…美食の否定ですか。
男…美食の否定ではない。ただ「美食」は、日本の場合、それと「粗食」が一対で、「贅沢な食」「貧しい食」という観念ができあがっていて、そこでは「普通の食」がなかなか見えにくいわけだけど、そういう歴史があって、「うまい」は「美食」だけに引きずられてきた歴史が長い。
女…「美食」と「うまい」は別のもの。
男…「うまい」は普通の生活に、いくらでもあるよ。
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2004/01/09
男…スティーブ・メネルさんの解釈によれば、サヴァランさんは「ガストロノーム」ってことになっているね。
女…日本におけるガストロノームというと誰でしょうか。”自分の「食卓の喜びについての洗練された嗜好」を深めるだけでなく、それについて書くことによって、他人が嗜好を深めるのも助ける人”と、他人から評価されなくても、自認しているひとがたくさんいるようですが。
男…ああ、すぐそういうふうに外国の例を日本にあてはめようとしちゃいけないね。スティーブ・メネルさんはフランスとイギリスを対象に研究したのだから。フランスとイギリスは隣同士だということもあって、似通っているけど、日本はまったくちがうからね。だから、フランスのミシュランあたりを真似して格付けしようとするとおかしくなるのさ。
女…でもみなさん「ガストロノーム」つまり「良き食の判定者」気取りじゃござんせんか。
男…ま、自分の食べたことがある店を自分の整理として格付けすることぐらいは、なにも「ガストロノーム」気取りということにはならないと思うけど。
女…でも、自分は3千軒食べ歩いたとか6千軒食べ歩いたとかいって、「良き食の判定者」気取りのひとは少なくないんじゃござんせんか。
男…では、そういう人を判定してみたらどうかね。
女…なかなか言いにくいでございますわ。
男…スティーブ・メネルさんは、イギリスとフランスの例から、「好き嫌いは、決して社会的に中立なのではなく、人々が属す階層その他の社会グループと、常に関連している」という教訓を導きだしているのだけど、これは日本にもあてはまる普遍的な事柄のような気がするな。
女…では、その「洗練された嗜好」というのは、自分がどの社会グループに属しているかによって、違ってくるというわけ?
男…そこのとこは難しいけど、少なくとも自分をより優れた人間として「下」のものから区別するために、食べ物や食べ物に対する嗜好が利用されている関係は、あるように思うね。
女…ははん、あなたは、つまり、日本の「良き食の判定者」を気どっているみなさまを、そのように見ているわけね。
男…さあてね、どうでしょうかね。
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2004/01/08
女…それで、去年の末に述べた抱負については、どうなったのですか。
男…もう、抱負のセンで始まっているよ。
女…でも「本物の味」や「本場の味」などの表現に攻撃を加えていないではないですか。
男…そんな、今年はまだ始まったばかりなのに、いきなり直接的な攻撃をしたら、すぐ終っちゃうじゃないか。いまは外堀の外側を埋めているところだよ。ジワジワやるの。たとえばね、新潟の山菜と群馬の山菜、どちらが本物の味か本場の味か、昨日の話から考えてみろよ。
女…地産地消にとっては、自分のとこが本場で本物ということになるのでしょうか。
男…だから、それじゃ味の表現にならんでしょ。ま、とにかく、それはおいといて、ちょっと一つの整理を、忘れないうちに書いておこう。「ガストロノミー」は1800年代初頭に考え出された言葉で、フランスでもイングランドでも、「繊細な食の術と学」を指すのに使われるようになったということだね。
女…そして、「ガストロノーム」は「ガストロノミー」からの逆成語で、「良き食の判定者」を指す。と、あります。
男…「エピキュール」「グルマン」のいずれもが、もともとは「グリュットン」に近い軽蔑的意味を持っていた。つまり、がつがつと必要以上に食べる人たちを指した。で、「エピキュール」は、19世紀初頭以降、特にイングランドで、「食卓の喜びについて洗練された嗜好を深めた人。飲食について、優れ、また、好みの厳しい人」というよい意味を持つようになった。フランス語では、「グルメ」がこれにあたる。
女…スティーブ・メネルさんの『食卓の歴史』(中央公論社、北代美和子訳)でありますね。ちなみに「グルマン」は「グルメ」から区別され、「おいしい食に情熱を傾ける人」という意味とともに、あいかわらず「グリュットン」的な意味もある。とあります。
男…「ガストロノーム」とは、通例、自分の「食卓の喜びについての洗練された嗜好」を深めるだけでなく、それについて書くことによって、他人が嗜好を深めるのも助ける人、と理解される。ガストロノームは、グルメ以上であり、料理の嗜好についての理論家、布教者なのだ。ってこと。
女…ま、サヴァランさんあたりが、その「ガストロノーム」でしょうか。
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2004/01/07
男…で、まあ、新潟県と群馬県はオトナリ関係だな。だけど、山菜で、名前は忘れたが、群馬県のひとは食べるけど新潟県のひとは食べない、その逆とかがあるのだよ。
女…では、それをうまくお互いに交換しあったら「地産地消」は、どうなるのでしょうか。
男…また「地産地消」の話をするのか。そうじゃなくて、わずかな距離なのに、一方はそれをうまいと思い、もう一方では見向きもしない状態があるということだよ。
女…とるすると、なにからなにまで新潟と群馬では味がちがう、ということになりそうですが、まさかそんなことはないですよね。
男…そりゃそうだ。だけど、そこなんだよ、問題は。
女…違いはあるし、違いがあるのはあたりまえなのだけど、なにからなにまで違うわけじゃない。
男…では、その違いと共通性、その関係は、どうなってるんじゃ、ってことだよ。
女…で、「地産地消」とは、どういう関係なのでしょうか。
男…アンタしつこいね。「地産地消」なんてね、生産者のご都合主義の精神運動みたいなものですよ。消費者には、「ありふれたものをおいしく食べる」しかないわけだから、そこに近づく努力を生産者はすればいいのであって、それもやらない生産者が「地産地消」をいうなんて、ようするに、オレのものを食べろという生産者志向でしかない。
女…では、自分の土地にある山菜については、好みをいわずに食べよう、というのは正しい「地産地消」運動になるのではないでしょうか。
男…だからね、そういうことじゃないんだってば、わからんのか、このアホ女。
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2004/01/06
女…しかし、いまどきハヤリの「地産地消」や「スローフード」をちゃかしているようじゃ、またさらにあなたはアリガタミのない存在になるわね。
男…ちゃかしているのは、アンタでしょ。おれはちゃかしちゃいないよ。それが食問題や農業問題を解決する策のようにいっていることに対してだね、バカヤロウといっているだけだよ。
女…ほらほら、またバカヤロウなどといい。
男…「地産地消」や「スローフード」は、どうしたら実現するかというと、現在の、つまり1960年代以後の幹線道路網や高速道路網を破壊すれば簡単に実現するわけだよ。そういうことを、「地産地消」や「スローフード」を唱えるひとは主張しているのだな。
女…でも、いまや「地産地消」や「スローフード」を唱えていた方がアリガタミがあるのです。あなたも偏屈ばかりいってないで仲間に入ってカネかせいだらどうなの。
男…あんたが仲間に入って稼いでおれに貢いだらどうだ。おれは田舎で「スローライフ」するから、そこにカネ振り込んでよ。
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2004/01/05
男…新型肺炎で騒がれているハクビンシンなんだけどね。秩父地方で急増して被害が大きくなっている。
女…日本にも野生のハクビシンがいるの。
男…どんどん増えているらしいよ。誰かが飼っていたのが野生化したらしいのだが。身が軽く高いところへ登ること、サルと同じだからね、増えるとクマやイノシシより手に負えない。けっきょく、サルやハクビシンにやられない作物を栽培しなくてはならない状態になっている。
女…今年はサル年です。
男…サルは手に負えないよ、人間は完全にお手上げ。昨年末、山梨県の塩山の奥、秩父との境の方へ行ったら、もう人間がいても平気。ヤツラ、畑をセッセとほじくりかえしていたよ。だいたい人間の姿よりサルの方が多いから、睨まれるとコッチがビビルよ。その奥地から秩父にかけて、サルやハクビシンの天下らしい。クマやイノシシは畑に囲いをするなどしてあるていど防げるけど、サルやハクビシンは、いまのところ決め手になる対策がないらしい。ときどき、ドーンとかいう鉄砲の擬音を鳴らしているぐらい。塩山周辺はモモやブドウ、果物の産地だけど、去年は天候不順とサルの被害で、かなりひどかったようだ。
女…サルやハクビシンの被害にあわない作物もあるんでしょ。
男…葉モノは、わりと被害が少ない。なんだかカボスがやられないから、ユズをやめてカボスにするかという話があったな。
女…サルやハクビシンは正しい地産地消で生きているから、人間も同じようにやれるかもね。
男…あんた、秩父の山奥で、サルやハクビシンと暮らしてなさい。
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2004/01/04
男…田舎のウチに散らばっている農業委員会だか農協だかのニュースみたいなの見ていると、さかんに「地産地消」ということを唱えているんだなあ。一緒に「スローフード」とか「スローライフ」とかもあって。
女…ハヤリ言葉ですね。
男…そういう中味のアイマイなハヤリ言葉が「政策」のように語られている。地元でとれるものを食べていると長生きするようなことまでいっているよ。
女…1950年代からの農業は間違っていたと反省しているのでしょうか。
男…反省なんかしているものか。政府農協一体で、大都会で売りやすいものをつくって、そこが輸入ものに押されて売れなくなったから、地産地消をいっているだけさ。
女…でも、平均寿命は延びているし。いま平均寿命以上生きているお年寄りは、地元のもの以外食べなかったということなのでしょうか。
男…んなわけないだろう。そんなちゃんとした裏づけのある話じゃないのさ。そこが問題なんだよ。いつもそのやりかたで聞こえのよいこといって、現実をごまかしてきた。
女…地産地消を徹底したら、食べるものが偏って病気になるひとがたくさんでますよね。
男…そんなにチャント考えていっているわけじゃない、観念的な話さ。だから、おかしいのさ。そういうハヤリ言葉でオシャベリしているうちに、現実はドンドンおかしくなる。1970年代だって、そうだったよ。だけど、今度は、チャント現実をみないと、えらいことになるよ。
女…えらいことになりますか。
男…えらい、えらい、もう想像以上に農協はガタガタだよ。それが何を意味するか、わからんだろうねえ。農協ダメでも、ありがたや、アメリカも中国もあるさ、ってことかねえ。それに、地産地消が救ってくれるのでしょう。あなたまかせでグルメしてましょう。
女…「地産地消」の「地元」とか「地域」とか「自分の土地」というのは、どんな範囲をいうのでしょうか。
男…自分の家の庭でとれたものを食べていなさい。
女…私の家には庭がありませんが、私にとっては地球が私の庭です。地球家族だもん。
男…勝手にしろ。
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2004/01/03
男…えっと、元旦は雑煮のないところだったので、本日、ウチで雑煮を食べましたです。
女…雑煮がないって、モチがないのでありますか。
男…モチはあるけど、正月だからといって雑煮を食べる風習がないというのかな。そういうところは、全国見渡してどれぐらいあるか知らないけど、あるわけだよ。
女…ついたモチは、どうなるの。
男…ま、テキトウに焼いて食べたりするけど、新年としてかしこまったものじゃないね。
女…では、新年のお祝いとしては、どういうものなの。
男…赤飯。モチゴメにアズキだったけど、普通のコメにアズキのこともあるようだ。元旦の朝は、お神酒をかわし、赤飯や御節でというぐあいで、雑煮なんかない。なんというか、普段はウドンやソバや、モチのようなマンジュウといった、ネチネチモチモチしたものだったから、もしかすると、モチは普段の感覚で、あまりアリガタミがない。米粒のツブツブのものがアリガタミがあるってことなのかもしれないなあ。
女…雑煮を食べないと、お正月って気がしないけど。
男…そこでは、雑煮なんか、まったく関心がないよ。
女…それ、どこの話です。
男…ココ同じ埼玉県だけど、秩父地方のこと。秩父地方全域がそうだってことじゃないけど。
女…で、今年の抱負は?
男…ま、お互いを知り理解するってことだね。
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2004/01/02
新年おめでとうございます。ま、今年もよろしくお願い致します。
女…では、さっそく、昨年末に書いた「抱負」のセンではじめますか。
男…いやいや、まだ抱負があるんだなあ。
女…まだ始まったばかりだから、今年の抱負ということでもおかしくはありませんね。
男…抱負とはちがうのだけど、昨年末行った先で、突然アヒルが気になってね。
女…なんですか、アヒルって。
男…いや、おれがガキのころはアヒルを飼っていた家がけっこうあって、卵にしても、ニワトリの卵のほかにアヒルの卵も店で売っていたんだよ。で、そのアヒルのほうを、たぶん食べていたと思うのだけど、いつごろからどうやって食べるようになったか、気になったものでね。
女…ずいぶん突然の気になり方で。
男…それが、塩山のスーパーで馬肉を見ていて、突然アヒルを思い出したわけで。
女…塩山のスーパーの馬肉からアヒルですか。
男…東京から中央線で笹子トンネルをぬけると山梨県、ま、特急の停車駅でいうと大月、塩山、山梨、甲府というぐあいだね。で、その山梨に入った大月あたりから、スーパーの肉売り場で馬肉が目立つようになるのだなあ。今回は、塩山の街の肉屋でも煮込み用の馬肉を売っているところを見つけたよ。
女…東京と山梨は近いけど、ずいぶん食文化が違います。
男…そうそう、よくある話はカツ丼だけど。それだけじゃなくて、ずいぶん違う。でも違いがあるのは当然で、違いだけ一個づつとりあげて、ホラ違う違うぞ、こんなに違うぞと言ってみても、しょうがないんだなあ。違いと共通性というか関連性というか、両方から見ないと、食文化としては意味はないんだなあ。その馬肉の例だと、ほかの豚肉や鶏肉や牛肉との関係は、どうなのかということだね。あと、むかしのことになるとカモやイノシシやシカも関係するかな。
女…で、アヒルですか。
男…ま、そういうこと。じゃあね。
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