ガストロノームそしてグルメ
女…それで、去年の末に述べた抱負については、どうなったのですか。
男…もう、抱負のセンで始まっているよ。
女…でも「本物の味」や「本場の味」などの表現に攻撃を加えていないではないですか。
男…そんな、今年はまだ始まったばかりなのに、いきなり直接的な攻撃をしたら、すぐ終っちゃうじゃないか。いまは外堀の外側を埋めているところだよ。ジワジワやるの。たとえばね、新潟の山菜と群馬の山菜、どちらが本物の味か本場の味か、昨日の話から考えてみろよ。
女…地産地消にとっては、自分のとこが本場で本物ということになるのでしょうか。
男…だから、それじゃ味の表現にならんでしょ。ま、とにかく、それはおいといて、ちょっと一つの整理を、忘れないうちに書いておこう。「ガストロノミー」は1800年代初頭に考え出された言葉で、フランスでもイングランドでも、「繊細な食の術と学」を指すのに使われるようになったということだね。
女…そして、「ガストロノーム」は「ガストロノミー」からの逆成語で、「良き食の判定者」を指す。と、あります。
男…「エピキュール」「グルマン」のいずれもが、もともとは「グリュットン」に近い軽蔑的意味を持っていた。つまり、がつがつと必要以上に食べる人たちを指した。で、「エピキュール」は、19世紀初頭以降、特にイングランドで、「食卓の喜びについて洗練された嗜好を深めた人。飲食について、優れ、また、好みの厳しい人」というよい意味を持つようになった。フランス語では、「グルメ」がこれにあたる。
女…スティーブ・メネルさんの『食卓の歴史』(中央公論社、北代美和子訳)でありますね。ちなみに「グルマン」は「グルメ」から区別され、「おいしい食に情熱を傾ける人」という意味とともに、あいかわらず「グリュットン」的な意味もある。とあります。
男…「ガストロノーム」とは、通例、自分の「食卓の喜びについての洗練された嗜好」を深めるだけでなく、それについて書くことによって、他人が嗜好を深めるのも助ける人、と理解される。ガストロノームは、グルメ以上であり、料理の嗜好についての理論家、布教者なのだ。ってこと。
女…ま、サヴァランさんあたりが、その「ガストロノーム」でしょうか。
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