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2004/01/14

料理は娯楽?

女…「料理は娯楽である」という言い方は、あまり聞きませんが、「ゲーム感覚のグルメ」とかいう言い方はありますね。

男…料理は生活だけど、マーケットとして、料理が娯楽になってしまったのが「ゲーム感覚のグルメ」といえるかもなあ。

女…ようするに食品産業や外食産業としては、生活だろうと娯楽だろうと芸術だろうと、売れればよいわけで。

男…スポンサー頼りのマスコミも、そういう食品産業や外食産業の意向をくむどころか、そちらの方向へ積極的に流れているね。いまのマスコミには、マスコミ文化として、普通の生活料理を話題にする力がない。そういう積み重ねがないから。普通から外れた突出したことを「ニュース」としてウリにしてきたわけだし、普通の生活より「娯楽性」や「芸術性」のほうがセンセーショナルに扱えて、ウリやすいということだね。

女…料理が生活じゃ、おもしろくでもないですからね。

男…でも、生活でも、楽しめることはできるんだよ。たとえば、古くは、明治の『食道楽』の村井弦斎さんなんか、彼の著書は題名からすると「道楽」の本みたいだし、彼は実際、食の道楽を極めたといっていいぐらい、道楽しているわけだけど、そこに止まって「どうだおれは、食通なんだぞ」と威張っていたわけではない。普通の家庭の食の楽しみを追及しているんだな。だから彼の「食育論」なんか、いま食育を問題にしている連中も読んだほうがよいくらいの内容だよ。

女…もともと生活である料理を、娯楽や芸術にするには、それがあたかも「客観的事実」であるかごとき装いが必要になりますね。

男…そこに生まれたのが、とくに80年代以降だけど、ある種の「料理評論家」や「料理研究家」そういう肩書ではないにしても、「フードライター」「グルメライター」とか、何千軒くいたおしたとかいう、そういう権威だね。権威をリーダーにして新しいマーケットをつくるというのは、最近はよくある方法さ。また、この食の関係には既存の「学会」という権威が存在しないから、「全国何千軒くいたおした」といった「数」が簡単に権威になる。食文化の中味なんか関係ない。

女…そして料理は娯楽になった。A級グルメは「料理は芸術」、B級グルメは「料理は娯楽」、という感じでしょうか。

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