老人は、なにを知っているのか
いやあ、もう昨日になったけど、おもしろいことがあった。夕方、ちょいと歩く駅のほうのC級スーパーへ行った。ここは、けっこう大きなセルフサービス店だが、統一的なマネジメントではなくレジが一つなだけで、食料品八百屋と肉屋と魚屋がそれぞれ勝手なマーチャンダイズィングでやっているにちがいない店だ。
魚売場は、対面販売ではないが、売場に隣接したガラスごしのバックヤードで加工してはケースにならべているし、ちゃんと魚屋のオヤジみたいなのがいて、声をかければ注文どおりに加工してくれる。
で、だね。おれより年上にみえる60歳後半のばあさん、家持ち定年退職主人の奥様専業主婦一筋というかんじが、魚屋の20歳半ばぐらいのにいさんをつかまえて聞いた。「鯛のお刺身、どうしてないの、いまシュンでしょ」と。
すると魚屋のにいさんは、こう応えたのだ。「今日は目鯛だけです、これは鯛とちがいますが、いま鯛にはシュンなんかありませんよ、養殖だから一年中のものです」
いやあ、もうおれは思わず、にいさんとばあさんの顔をジッと見ました。ばあさんは当惑した顔で言いました。「このあいだ鯛のお刺身買っていったら主人がとてもおいしいとよろこんで、また買っていきたいのだけど、では、アレ、養殖だったの?」
魚屋のにいさん、「そうですよ、うちで買われたのなら、養殖です、シールにもそう印刷してありますよ。でもおいしかったでしょ、こんどあるときまた買ってください」。ばあさん、「そう、養殖なの……天然ものだと思っていたわ」 そういうばあさんにかまわず、にいさんは並べるものをならべると、さっさとバックヤードへもどっていった。
真実と認識のズレは、じゅうぶん体験しているはずの日常のことにおいても、このように大きい。闇ですなあ。
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