倒産、そして出版とカネ
7月15日に書いたが、その前の日、以前『ぶっかけめしの悦楽』を担当したフリー編集者ホリウチさんと浅草で会い昼酒した。そのとき、『ぶっかけめしの悦楽』の発行元である倒産した四谷ラウンドの田中清行社長のことを、上原隆さんが取材して書いています、「お金」ということで、幻冬舎アウトロー文庫の『雨にぬれても』です、立ち読みでもいいから読んでみてください、といわれた。アハンウフンと返事をしていたおれは、めったに本屋へ行かないし、めったに本を買わない、それを見抜いているのだろうホリウチさんが、そこのところをコピーして送ってくれた。
ライターは倒産する心配はないが、おれを含めて雑魚のごとくいるライターの本を出している出版社は、いつも倒産のリスクを負ってやっている。出版社と編集者、印刷会社がなくては本は、できない。そして、一番リスクを負っているのは、この人たちだ。だからまあ、編集者に勝手に原稿を直されても仕方ないかと思うこともあるが。それは冗談として、リスクというのは、この人たちにとってはカネであり、弱小零細出版社においては、それは即生活だ。ライターも生活がかかってはいるが、倒産の心配はない。その違いは大きい。
そういうリスクを負ってまで、一人で負うには大きすぎる額の借金を抱えてまで、なぜ田中さんは出版というシゴトをやったのだろうか。そして「お金」について、どう考えているのだろうか。「社長は、驚くべきことに一円も稼ぐ気がない人なんですよ」という、かつての四谷ラウンドの社員の話から始まる、短いが、迫真のレポート。その田中さんを知っているおれなどは、涙なしでは読めない。涙ながしても涼しくはならないのになあ。涙よりビールほしい。
そして、田中さんは懲りずに、もう再起して出版社を興したのだ。なぜ、そこまでやるのか。しかも「市井文学株式会社」という、いかにも、あえて、儲け主義に挑戦するような、儲からなさそうな社名で。ま、幻冬舎アウトロー文庫の『雨にぬれても』の「お金」を、ごらんください。
「市井文学」のHPは http://www.shiseibungaku.com/
「よい本とは売れる本のことだ」と某出版社の社長がいったそうだが……。「民主主義は数だ」とかいった公党の幹事長もいるそうだし。田中さんのような人がいなくては、この世は、真っ暗闇でございます。
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