喪中
ダメだ、なにもやる気がおきない。二日酔いかと思ったが、そうでもなさそうだ。揚羽屋のオヤジが死んじまってよう。どないしたらええねん。
東陽片岡さんの漫画に「勝新が死んじまってよ。う」という漫画がある。『されどワタシの人生』(青林工藝社)に載っている。タイトルのそばには「どないしたらええねん。」
例の、ちゃぶ台が真ん中にある四畳半畳絵的な、部屋の片隅で男が寝ている。女が言う「ちょんとアンタ、いい加減にさ、仕事に行ってよ。」「もう米を買うお金もないんだからね。」男「うるせー!!」「勝新がよぅ、死んじまったんだぞ。」「仕事なんえやってられるけえ!!」
女「勝新が死んだってアンタ、もう2ヵ月もたってんじゃない。いい加減にしろ、バカ!!」男「きのうニュース23で言ってたっけな。」「北朝鮮じゃ金日成が死んで、三年間喪に服していたそうだ。」「勝新が死んじまったんならな、俺ぁ十年だって喪に服してやるぞ、バカ野郎!!」「これで森繁でも死んだら、一生喪に服してやらぁ」
怒った女「ああいやだ。もう我慢出来ない。」「あたしゃ家出ていくからね。」
男「けっ、テメエなんざいなくたって、生きていけらぁ。」
女「12年間もあんなバカの相手してきた自分が、偉いと思うよ、つくづく。」と部屋から玄関のある台所に出ると。玄関たたきのそばの流し場の下で、ガキが男と同じように寝ている。
女「何やってんだよお前は」
ガキ「え? ロバートミッチャムの喪に服しているの」
いやあ、マジに、その心境だぜ。
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