『名門高校人脈』光文社新書
8月25日に「鈴木隆祐の近著『名門高校人脈』」の紹介を、本のタイトルだけで、まだ読んでないけどよろしく~と書いた。そのあと、ポストを見たら、その本が入っていた。なんという偶然。送ってくれたのは担当の編集者で、彼とも10年来のツキアイだから、そうそう鈴木さんをおれに紹介したのは、この編集者だから、なかなか濃い関係の一冊であるなあ。
大ボス小ボスと利権的な人脈。日本の政治経済は地方のすみずみまで、それで動いている。中央の大ボス大利権をめぐっては、とかく大学人脈が話題になるが、地方となると市町村レベルでは中学、道府県レベルでは高校の人脈に注意しないと思わぬ失敗をする。そういう利権構造のなかの「名門高校人脈」を、この本はときあかすのかと思ったら、チトちがった。
これは、有名高校の「文化的資産」つまり人間を育成する文化的な環境の見方考え方なのだ。「どこの大学を出たか、よりも、どこの高校を出たか、を知る方が、その人の「人となり」がわかるような気がしないだろうか。」そして、気になる有名人のタテヨコを集めてつなげてみると、そこに「校風のようなもの」を感じるというわけだ。
そして鈴木さんは、その「校風のようなもの」を「ハビトゥス habitus」という、「フランスの社会学者、ピエール・ブルデュー独自の理論」にもとずく概念をキーワードに、各高校の「文化的背骨」を探求した。その「文化的背骨」を持つ高校が、その内容において、本書では「名門高校」なのだ。
「名門高校人脈」というタイトル、帯にある「進学の名門300校を厳選!」は、ウリを意識したものだろう。実際の内容は、そういうことで、直接的には受験の子を持つ親たちの高校研究に役立つものであるが、古くは「人国記」から近代の県民性や商圏特性などの研究に見られるような「地域の文化性」や「地方の文化的背骨」を、高校人脈から解き明かした、なんとまあ、たいへんな労作である。
登場人物約1500人、登場高校300校。資料をあたり直接会ったり、ジグソーパズルを組み立てるような作業。鈴木さんは「地を這うジャーナリスト」と、自分でも言い、知る者はそれを認めるのだが、そういう彼ならではのシゴトだ。日本の文化的風土を知る一冊になるだろう。
鈴木隆祐(すずき りゅうすけ) 1966年生まれ。40歳を前に、一つの区切りとなる大シゴトをやった。
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