気どった「食」の楽しみ方
食べ歩きの話というのは、ほとんど風俗のことである。あそこでこういうものを食べた、それはこういうつくりで、こういう味がして、こういう満足が得られるとか。
こういう類の話しは、「フーゾク店」と書き表される、さまざまなセックスに関するサービスを提供する店の話と同じなのだ。
しかし、「食」に関して書いているひとには、どうもその自覚がないようだ。そして対象にせまるより、自分の知識や文章で気どることに熱心である。それは、性の分野で活躍する風俗ライターと比べれば歴然で、その結果、とても滑稽な現象が生れている。もう笑いが止まらない。この気どった知識や文章を、「性的」に置き換えながら読むと、とても笑える。また、「食」を自覚し突っ込んでないから、簡単に置き換えられるのだ。
もちろん、どちらも根が欲望に発することなので、共通するところはある。しかし食べ歩きの場合は、なんだか「性」は教養ではなく「食」は教養であるかのごとき、つまり形而上と下をわけ優劣をつけているような、セコい「教養主義」がそこはかとなく感じられ、とても滑稽なのだ。
「男子厨房に入るべからず」の伝統は、一方で、男が「食」を教養や趣味として語ることについては、「高尚」なものとしてきた。台所シゴトは形而下のことだが、食べ歩きの話は形而上のこと、という股裂け分裂である。そして、うまいものを知ることは男の教養であるとの錯覚がマンエンした。
そのマンエンの歴史は、とても面白いものがあるのだが、それはとにかく、こうして現代の男たちのあいだには、いやあ、あそこのソープはね、こうこうこうでウフフなのよ、ああんカネがないならソープじゃなくて、ここに行けば、こんなウフフなサービスがあるよ、という類と同じ話を「食」をネタにして白昼堂々と、印刷物はもちろんブログなどでも、気どって行うことが流行しているのである。
自分の知識や文章で気どることに熱心な姿、そこには同根と思われる知識と文体がある。
セコい教養主義、スケベ親父のやることである。
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コメント
いやあ、自分がスケベ親父のせいか、もう困っちゃうよ~というぐらい、スゴイ楽しめます。
このあいだは、テーマになっている料理の名前一つを「オナニーセット」と変えただけで、スゴイHな文章になるものを発見し、コーフンしました。
風俗ライターの方の話を聞くと、テーマ性の強い飲食店の構造というのは、コスプレサービスなどの店とキホンは同じようなもので、そこでの男たちのふるまいも、似たようなものらしい。
マジにスノビズムとナルシズムな食べ歩きをしている方もいるようで、目が離せぬおもしろさです。
投稿: エンテツ | 2005/08/25 17:43
案外このキドリッちゃん具合を観るのが楽しかったりして。書いてる方にも変装趣味やコスプレに近いモノがあるような気もするけどな。スノビズムとナルシズムの一大共同制作となるとこれはもう、勘違いではなくて、発狂か!?
投稿: 塩庄 | 2005/08/25 16:11