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2005/12/03

王子のたぬき

ouji_tanuki(画像はクッリクすると大きくなるよ)

おれは酒は好きで飲むけど、それほど酒に詳しいわけじゃない、おれより詳しいひとはたくさんいる。だけど、なぜか、このブログでも飲んだ話をしているせいか、酒が好きで酒にくわしいと思われてしまことがあるらしい。ま、それで、酒がらみ企画で相談にのって、という話がときどきある。きのうは、そういうわけで、北区の王子を飲み歩きながら、アレコレ酒について、酔っぱらいながら話した。うふふふ、これは、いいシゴトの話になりそう。

10月20日「王子、柳小路とさくら新道」にも書いたが、王子は好きな町のひとつだ。好きだけど、なぜ好きなのかよくわからない、なにしろしょもない町なのだ。だから行くたびに、ナゼおれはこの町が好きなのか考える。

きのうは、相手のスズキさんが山田屋という有名な下町大衆酒場にも行ってみたいというので、まずそこから始めた。そして、お決まりの柳小路の福助、さくら新道のリーベ。もう一軒いや二軒か、さくら新道で寄りたかったが、そんなに飲めねえよ、飲み疲れて帰って来てしまった。トシだなあ。

ようするに、王子は労働者の町なのだ。しがないサラリーマン、しょもない零細業者の町で、ここにはブンガク的芸術的虚飾はないし、最近すこし変わってきたが、マーケティング的虚飾も目立たないほうだ。しょもない人間のしょもない町ってところがいいんだなあ。あと気がついたのだが、あまり密集感がないのがいいのだなあ、坂があって空が広く見えるせいだろうか? 言い方をかえると、バラバラっとした締まりのなさが漂う、緊張感ナシ、おおらかだね。

でも、地下鉄南北線が通ってから、変わりつつある。が、イキナリ巨大な再開発ビルができるわけじゃない。古い建物が同じ敷地のまま建て替わり、古いビルが改装して新しくなる、このていどの変化はトウゼンだろう。

スズキさんは若いから、福助やリーベのように、昭和20年代からやっている建物も古いが人間も古いババアとオシャベリしながら飲むのが、いたく気に入ったようだ。かれに言われて気がついたが、そういう機会というのは、あまりないらしい。なるほど。福助のババアは背中がまがったが80歳で記憶はしっかりしているし、リーベのババアママは80過ぎで背筋はしゃんとして、しゃきしゃきシャベル。彼女たちの、戦前戦中戦後これまでの生涯の話を直接きくのは、本で読むのとはちがうものがある。

おっと、前置きがながくなった。それで、きのうは王子へ行ったついでに、まだあるかどうか気になっていた食堂があるんで、早めに行って確かめた。写真は、97年ごろの撮影で、小さな看板に「甘味喫茶 たぬき」とある。ごらんのとおり、相当ふるい建物。外からは、入口のところに洗濯物がぶら下がったり、もう営業しているかどうかわからん状態だったが、ちゃんとめしがくえたのだ。

やはり、この姿は、なくなっていた。でも、建て替えて3階建ての個人の家であり、1階は「狸」という居酒屋である。これが「たぬき」の名残りだろう。王子駅北口から川のある山側へ出て、ラブホの前の道を行き最初の交差点を左、坂を上りすぐ右側になる。駅から5分かからないところ。このあたりは、大きなビルになることなく、このように少しずつ変化している。しかし、飲み屋が多くなった。

「たぬき」という名前は、「王子のキツネ」という有名なハナシをひねったのかな? そうそう最初に入った山田屋には、おれの故郷の小さな酒蔵、高千代の辛口がおいてあった。都内で、この酒がある酒場に入ったのは初めてだ。うれしかったね。

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