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2006/01/03

雑穀料理の元日 キビ入りおこわ

kibi元日は、バアサンが炊いた、キビ入りおこわを食べた。キビ入りおこわってのは、初めてだ。ただの赤飯じゃツマラナイからと、バアサンは、キビを入れた。黄色い彩りもいいし、味も香ばしくなる、正月らしくていいじゃないかというのだ。いつも炊いているおこわだが、このようにチョイと変化をつけてみようという料理のココロが楽しいし、食卓も楽しくなる。

キビは地元産、埼玉県小鹿野町の農家が生産したものだ。いまでは、キビをつくる農家は少ない。輸入物が圧倒的な勢力を占めている。だが、バアサンがいうには、この地元産のキビは、ほんとうに味も香りもよいのだそうだ。

そのおこわを、口に含みかみしめるとホンワカ香ばしい甘味がした。「うまい、うまい」と言いながら食べると、バアサンは、こんげなキビなんか、こうやってコメにまぜて食べるぐらいならちょうどよくてうまいし、いまじゃアレルギーにいいとかで人気らしいけど、小さいころはこればっかり毎日食わされて見るのもいやだった、と言った。彼女の、昭和の、キビを毎日食べなくてはならない生活は、貧しさ以外のなにものでもなかった。だが、『汁かけめし快食學』にも書いたが、その貧しかった雑穀食にも、あるものをできるだけうまく食べる工夫として、「つつっこ」や「えびし」などの味わい豊かな料理が生れたのも事実だ。

ちかごろ、雑穀ブームらしい。それはそれでよいことだろうが、あるものをおいしく食べる精神を失って、健康によいアレルギーによいといった「打算」の健康志向や栄養学で飛びつくと、痛い目に会うかも知れない。植物性ならアンシンという神話があるようだが、植物性食品だって発がん性物質を含んでいるし、アレルギーにもなる。そもそも日本でアレルギーが問題になったのは、たしか、北海道かどこかの児童の「突然死」が、蕎麦のアレルギーが原因だったからではなかったか。

ま、それはともかく、近年一時は鳥のエサでしかなかった、この黄色い実は硬く、これを子供のころから毎日食べていたらアゴが発達しそうだと思いながら、よく噛み噛みし、ひょいとバアサンの顔を見ると、頑丈そうなアゴをしていた。10年前に乳がんの手術をしたが、その後はどこも悪くなく、ますます元気なのは、やはり雑穀食のおかげか? いや、それだけじゃないだろう、ありふれたものをうまく食べて生きる「力強さ」のおかげじゃないかと思うのだった。

よく、人間は自然によって生かされている、だから自然に感謝しなくてはいけない、というような全宇宙を理解している神様のようなことを言って、まさに神様になったかのごとくイイ気になっている独善をみかけるが、とんでもないことだ。人間が自然のものを生かし料理することを覚えてこそ、人びとは生き延びてこられたのだ。むしろ、いま必要なのは、自然に感謝する精神より、自然から得たありふれたものを生かし、生きる、力強さだろう。

ザ大衆食「つつっこ」
http://homepage2.nifty.com/entetsu/sinbun/tutuko.htm
ザ大衆食「えびし」
http://homepage2.nifty.com/entetsu/ebishi.htm

黍(キビ)
http://www.hana300.com/kibi00.html

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