先週末金、土、日と秩父の山奥で森林再生機構の視察&肝臓鍛錬のち、月曜日は在宅しアレコレあって、18日(火)19日(水)は桃源郷で肝臓鍛錬へと出かけた。これが、ま、いつものように行き当たりバッタリの結果、とんでもなく肝臓によいものを手に入れることになった。
桃の花といえば、山梨県。有名どころは一宮だが、あのへんはたまたま機会があって3回ばかり見ているし、ワザワザ行くなら有名どころは避ける習性でマイナーな韮崎地域へ。
韮崎は、むかし、登山でよく利用した。韮崎に着いて、バスの待ち時間に食堂に入って酒を飲み始めたら、登るのがめんどうになり酒を飲み続けたこともあるな。下山してからフラフラ桃畑の近くを歩いていると、農家の人がよかったら食べろといってくれたのが、キズがついて出荷できない大きな桃。これがもううまくてうまくて3個ぐらいムシャブリついて食べたこともある。そんなわけで、印象のよい土地でもあるね。
甲府で乗り換え中央線各駅停車穴山駅。駅舎があるだけマシの無人駅、つまり乗り越し分は払わずに済む。一駅もどるカタチで新府駅へ向って歩く。ちょうど見ごろ、しかし、黄砂のため眺望はきかず。うっすら雪をのせた甲斐駒ケ岳が、ちょっとだけ見える。ま、でも、桃の花と菜の花はヨシッ、満足。汗をかく暑さ、1時間半ぐらい歩き、着いた新府駅は駅舎もない。
韮崎へ出て、宿泊のペンション「ビスタポイント」へ。ペンションというとおれの柄じゃないようだが、そうとは限らない。けっこう落ち着いた、よいところもある。今回はインターネットで調べて予約してから行ったが、アタリだった。黄砂で遠望はきかなかったが眺望はよく、風呂も24時間OK。ご主人と奥さんも、気どらず大衆食堂のような雰囲気。それに、なんといっても、こういうところにしては、酒が安かった。良心的だね。
夕食が、よかった。うまかったので、頼んでメニューを書いて貰ってきた。漬物(カブ浅漬、スモークドタクアン(これは市販品))、豆腐のひき肉あんかけ、花ワサビのしょうゆ漬、ウドとアスパラの梅肉あえ、菜の花白あえ、カレイホイル焼、牛肉のほうば焼、山菜天ぷら(行者ニンニク、ハリギリ、つりがねニンジン、ノビル、ウド、リョウブ、春ラン、南天ハギ、ユキノシタ、フキノトウ、ウルイ、タラの芽)。この山菜天ぷらは、この順番で一品一品揚げたてが運ばれてくるのだ。山菜天ぷらは揚げたてじゃないと、すぐ食感が落ちるから、こういうサービスは本当にうれしいね。
最後にめしと汁そしてイチゴシャーベットで〆だったが、ゆっくり2時間ぐらいかけて飲んで、めしをおかわりして食べたなんてのはめずらしい。
最初にビール、つぎにイチオウ山梨のワインに敬意を表して白ワインハーフボトルをやって、ちょうど山菜天ぷらが出てくるころに、清酒を飲んでいた。そして、この清酒が思わぬ展開になるのだった。
「栴檀」という酒、いろいろ種類があって、純米を頼んだ。一口ふくんだら、コレは、という味。簡単に言えば、芳醇にして淡麗という感じなのだが。うーむ、うまい!な味。奥さんに聞くと、市川大門というところにある酒蔵だという。市川大門というのはどこかと尋ねたら、ここから離れた向こうのほうで、ほんの少ししか造っていない小さなところだという。ますます気になるが、向こうの方とは、どのへんかと思いながらも酔っていたから、ま、韮崎ではない向こうの方なんだなと納得し、とにかくお替りを重ねる。
翌日19日、朝10時にペンションを出て韮崎へ。むかし入ったことがある駅近くの食堂を確認してから、とにかく甲府へ出る。甲府で、ナントナク身延線に乗りたく思う心がはたらき路線図を見ていると「市川大門」を発見。オオッ、これがあの「栴檀」の酒蔵があるという「市川大門」だろう。ならば、とにかく行って見よう。身延線各駅停車ワンマンカーに乗り約40分。降りた市川大門駅、なんじゃこれは中華料理屋かいなと思われるハデハデ赤青塗りのコククリートの駅舎、だけど無人。どうも解せないなあ、ま、いいか。山梨といえば「土建王国」でもあるのだ、解せない建造物など珍しくない。
駅前に観光案内地図らしきポツンとあり。だけど「栴檀」の酒蔵は載っていないようだ。なにやら紙漉き工房なるものがあるようだし、それに陣屋なるものもあるようだ。とにかく歩いてみよう。なにもない街を行き当たりばったり歩くのは好きだ。
だいたい田舎町の観光地図というのは、駅前にそれがあることに意義があるのであって、本気で観光客を迎えるつもりでつくってないから、かなりイイカゲンであるのが普通だ。道を間違えながら、やっと紙漉き工房なる前に立ったが普通の民家だ。「無形文化財」ナントカなる名前の看板が塀越しに見えるだけ。なーんだ、見学もできないし紙も売っていないようだ。しかしこのへんは紙屋が多い、ということは水もよいのか、ならば酒蔵もあるわけだなと思考し、まずは陣屋があるらしき方角へと向う。
また道を間違えたらしい、と、見れば、市川大門駅の一つ手前にあった「市川本町」なる無人駅の前ではないか。ぎゃははは、いつの間にか一駅歩いてしまったぜ。小さな駅舎の前に建設現場にある移動便所が3個並んでいる。商店街の案内広告地図がある。見ると酒屋がある。そこへ行けば「栴檀」が手に入るだろう。
酒屋に入る。誰もいない、スカスカの棚を見渡せど「栴檀」はない。デハと出て行こうとするとオバサンが奥から出てきた。栴檀はないのかと聞くと、あそこは小売には出していないが、このすぐ近くに酒蔵があって、そこで買えるという。オバサンは親切にも店の前まで出て来て、ホラあのいま人が歩いているあたりですと教えてくれる。
どうやらここは旧街道らしい。古い蔵造りの家があったり。オオッ、そしてついに「栴檀」の前、いや酒蔵の名前は「二葉屋酒造店」だ。この建物、写真を見てもらったほうがよい。写真をクリック地獄で拡大。いやあ、なんだか出会えてよかったなあ~。しばし、眺める。
入口で声をかけると、ご主人が出てくる。純米酒900を求める。「これがうまいという人はマニアです」といわれるが、アタシャそれほどのものじゃありません、ただの飲兵衛です。100年前の建物、ぜんぶケヤキ造りだという。建物の前の古木が「栴檀」という木なのだそうだ。
中の写真も撮っていいというから、どんどん撮らせてもらった。そのうちザ大衆食のサイトに掲載しよう。ここの酒は、御坂山系つまり富士五湖の精進湖や西湖などがある山系の水をつかっているらしい。ご主人と酒の話がとまらない。おもしろいし聞きたいこともあるが、甲府からの特急の指定券買ってあるし、残念ながらまた、いつか。急いで市川本町駅へ。
ビスタポイントでの栴檀との出会いが、このように転がった、楽しい快食快飲おもしろく肝臓が鍛えられる小旅だった。小さい酒蔵、小さいペンション、小さいところが未来に何かを残すような気がした。小さいが、やろうじゃないか。「生業再生機構」なる言葉が頭に浮かんだ。
インターネットで調べたら「栴檀は双葉より芳し(せんだんはふたばよりかんばし)」という言葉がある。二葉屋と栴檀は、ここからきているのだな。
二葉屋酒造店
ビスタポイント