森林の再生か肝臓の堕落か
「都市再生機構」なるものはあるらしいのだが「森林再生機構」というのはないようだ。これはオカシイのではないか順序が逆だろう。ならば、と、「日本森林再生機構」なるものをつくることにした。メンバーは、おれと大将と、ハナサンの、たった3人。
そして日本森林再生機構の第1回森林視察の地に選ばれたのは、埼玉県の群馬県境に近い秩父郡小鹿野町の山間だ。20戸に満たない家が、谷川沿いにパラパラとある。あたりは平地などない、谷深く日の出は、この時季でも10時ごろだ。
そして、ワレワレは着くとスグにイノシシ汁をつくって、飲み始めたのだ。森林視察は、どうなったのだ。いやさ、議員先生や役人様の「視察」というのも、食って飲んで抱くだけじゃねえか。ガンガン食べよう、飲もう。「抱く」がないが、ま、いいか。
が、しかし、ここにガキのころから林業手伝い、中学卒業して林業に入った古老一人あり。その話を大将とハナサンは聞いているあいだに、おれがイノシシ鍋をつくった。いいイノシシ肉が、たっぷりあった。いい、酒もあったなあ、みんな飲んでしまったぜ。ま、林のことは、土地の古老に聞くのが一番だ。
さて2日目、森林視察のハズである。とにかく、天気がよい、山ツツジや山桜や菜の花はもちろん、これならカタクリも咲いているだろう、そうだ二子山へ登ろう。というふうに話は転がり、いまや関東では有数の岩登りゲレンデとなった二子山へむかった。登山口までクルマで行く間に、ちゃんと左右の林を見ながら論評を加える。大将は「もっとヒドイ状態かと思ったら、けっこうちゃんと手入れされているね」
ま、とにかく、双子山西岳、約1100メートルの頂上に立った。重装備の数パーティが岩にへばりついていた。われわれは、極めて軽装で、1人1本ずつのペットボトルにチョコを持っただけぐらいの、おれなどは部屋にいたときのままの格好でハンテンをひっかけ、頂上に立った。険しい登りで鼻歌うたいながらとはいかず、胸が張り裂けそうだったが。
頂上にいた重装備の男二人連れが「ずいぶん軽装ですね」と声をかけてくる。なんじゃ皮肉か、大きなお世話だ、これぐらいの山で、その装備は大げさすぎやしないかと思いながら、「やははは、地元ですから」と答える。
しかし、エト、これは土曜日だったが、きれいに晴れて、小さな花がたくさん咲いて、山々が重なる向こうには、雪をのせたアルプスまで見えて。ま、きれいだった。そして、そのきれいな景色の下に、人間の営みのアレコレがあるのだった。
写真は、その頂上から西の方角を撮影した。すぐ目の前の岩峰、われわれが立つ頂上も、向こうから見ればこのような岩峰だ。慎重に歩かないと、マッ逆さま。このあたりで毎年死人が出ている。
それはともかく、目の前の岩峰の左側、てっぺん近くの向こうに、白い台地が見える。これは、もとはといえば、この岩峰に近い高さの、ちゃんと名前のある山だったのだが、そっくり削られセメントの材料になって、ビルや道路に化けてしまった姿なのだ。いまでも削られている。森林どころか、山ごと消えたのだ。前に名前を聞いたことがあるのだが、忘れてしまった。そのように、そこに山があったことすら、誰も気にしなくなっていくのだろう。
そのあとの森林視察は、道を間ちがえて藪こぎをするハメになり、大変だった。そして見た林。大将は言った「ああ、こうなると、こりゃだめだ」 つまり、そこにあった景色は、つい数年前までは、耕された畑と、それを囲むように手入れされスクッと伸びる杉や檜の林だった。いまや、畑の耕作は放棄され草が生え、杉や檜の林は伸び放題の竹林に侵略され、たぶん1世紀以上かけて耕し木を育ててきたであろうその地は、荒野にもどろうとしていた。
急な傾斜地に土砂崩れを防ぎ少しでも平地を得ようと苦労して積んだ石垣が見えた。それもやがて、藪に消えるだろう。はたして藪に消えるのは石垣だけなのか。これは日本列島の未来の姿ではないのか……。ああ、いったい人間の営みとは、なんなのだろうか。われわれは押し黙った。
するとハナサンが「ちょっとセンチメンタルになっちゃうか」と言った。ま、そう見えたかも知れないが、じつは、おれは、今晩の酒のツマミは何にしようかなあ、きのうのイノシシ鍋が残っているが、うふふふ、あれはきのうよりうまくなっているにちがいない、とか、考えていたのだった。そして、その夜も、イノシシ鍋をくって飲んだのだ。
はたして森林は再生されるのか、その前にわれわれの肝臓が堕落しくたばるのか。日本森林再生機構に明日は、あるのか。
| 固定リンク | 0
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
どーも、ご苦労さんでした。
さらにまた肝臓を鍛えに出かけてました。
帰って来たら、肝臓強化剤が届いていました。
どうもありがとうございます。
第二回大会に向けて鍛えておきます。
投稿: エンテツ | 2006/04/20 10:34
日本森林再生機構の第一回大会お疲れさまでした。肝臓を鍛えないことには、森林の再生もないことが明らかになりつつあります。日本森林再生機構京都支部から肝臓強化剤が明日にも届くはずです。それにより次回大会まで、肝機能上昇に是努めていただきたく、お願い申し上げます。
投稿: 大将 | 2006/04/18 18:34