衣食足って欲ふくらむ
「講座 食の文化」(監修・石毛直道、責任編集・吉田集而)に、柴田武さんが「言葉からみた食」を書いている。
衣と食と住は人間の生活を支える基本的なもので、言葉としても「衣食住」がひとつになっている。だけど、さらに分析すると「衣食」と「住」で、「衣食足って礼節を知る」という言葉があるように、衣食の結びつきはつよい。そして、たとえ住と衣がなくても、食だけはなくては生きていけない。
テナことが書いてある。しかし、ホームレス生活でも、衣食は最低必要のようだ。青い珊瑚礁、常夏の国なら、衣なしでもよいかも知れないが、日本では衣食がセットだろう。
「衣食足って礼節を知る」という言葉は、いつごろどう生まれたか知らないが、都市化も消費主義もみえていなかった時代に生まれた言葉にちがいない。消費都市生活者は、「衣食足って」さらに何かを欲しがり欲望はふくらむ。そもそも欲望をあからさまに消費に群がるのは、資本主義的な礼節のうちだ。
その消費構造は、とくに東京のような大消費都市のばあい、国があることによって成り立っているから、東京の生活に慣れると国が亡んだら生きてゆけない。消費心理は、必然的に国にぶらさがる。きのうと話は逆だ。最近の国家運営というか政権運営というかは、そのへんのことを、よく読みきっているように思う。衣食足って膨張した礼節を知る欲望を満足させられる少々のカネを渡しておけば、都市生活者の多くは「快適」に過ごす術を心得ている。趣味すらも、消費を超えることはない。
それはともかく、柴田武さんがまとめた、「食」をめぐる比喩的表現を、じっくり眺めているとオモシロイ。笑ってしまった。「礼節」のイメージに近いものは、ほとんどない。現実は、なかなか腹黒く欲深くオモシロイ。
分類 表現
欲望 面食い 初物食い つまみ食い
経済的 食いはぐれる 食いつめる 冷飯食い 共食い
支配 人を食う 大物食い
処理 煮ても焼いても食えない うまく料理する 人を肴にする
意識 焼きもち 一夜漬け 清濁あわせ呑む
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