大衆食堂が潰れる? 貸金業モンダイ
優雅な散歩などしながら、大衆食堂を食べ歩いて「採点」している方は、ご気楽だが、たいがいの大衆食堂は零細経営だ。数少ない立地に恵まれているところはともかくとして、経営は楽ではない。その上、とくに小泉内閣になってからは、政治の軸足が完全に産業界と富裕層に移り、街の生業が成り立つ条件は、かなり厳しいものになっている。
と、今日は、論文のような書き出しだな。
金融業者の悪質な取り立てが問題になり、金利も含めた貸金制度の改革が検討されているわけだけども、社団法人全国貸金業協会連合会が「意見書」なるものを発表している。
「はてな」に「埼貸協ブログ」というのがあって、そこにのっているのを見つけた。埼貸協とは、埼玉県貸金業協会の略。「はてな」ユーザーというと、こういうナマナマしい人たちではなく、メディア貴族とその周辺の人たちといった美しくも輝いている芸術文化な亀田る芸能のイメージがあるので、おどろいた。
それはともかく、「上限金利を現行利息制限法レベルに引き下げた際の影響について」ということで、このように「意見」を述べている。
以下引用……
《利用者にとっては》
◇多くの借り手が信用供与の停止・制限を受ける事となる
(1)推計値ではあるものの、クレジット・信販業界を含む消費者信用マーケット全体から信用供与の停止・制限を受け、また、資金回収を迫られる借り手が700万~800 万人にも上る。
(2)このような借り手像は、「中小・零細企業勤務者」「ブルーカラー」「自営業者」「賃貸住居居住者」「勤続が短い者」など社会的に弱者といわれる庶民である。
(3)この制限・停止、また、回収を受ける庶民のなかから、所得の収支コントロールが出来なかった人が経済的に破綻し、自己破産・民事再生などの法的手続きに頼り、あるいはヤミ金等に流れてしまう可能性がある。
(4)日賦特例が廃止されると、主な利用者である大衆食堂などの飲食店10 万軒の資金繰りが悪化し、その結果、相当数が潰れる可能性がある。
(5)事業者金融を利用している中小零細企業約30 万社は、返済を迫られ、その多くは倒産する可能性がある。
……引用おわり
じつに、メディア貴族たちがつくる記事より、こういう実務的な文章の方が、低層で懸命にやってもどうにもならずあえいでいる姿がナマナマしい。おれは、おれのフリーライターというシゴトは「ブルーカラー」の「自営業者」だと思っているうえ、家賃の安い木造ボロアパートの「賃貸住居居住者」であるから、ぐへっ、おれのことかと思ってしまう。
とにかく(4)だ。「大衆食堂などの飲食店10 万軒の資金繰りが悪化し、その結果、相当数が潰れる可能性がある」と。この人たちは、日賦の主な利用者であると。
「日賦」というのは、一般には「日掛け」といわれている。と書いても、インターネットをやる余裕のある人たちには、わからないかも知れない。
これはおれの認識としては、「サラ金」といったものが登場するまえからの、かなり古い仕組みだ。簡単にいえば、むかしのトイチといわれた高利貸は、これを主にやっていた。というのも、おれが小学校4年生のころ、家業は1回目の倒産をするのだが、そのとき、うちのオヤジは、この日掛けに手を出して苦しんでいたので、知っているわけだな。「三丁目の夕日」などには登場しない戦後昭和の闇ですよ。
ようするに、これは、一日にいくら返すかが基準になって、貸金と利息を含めた返済期間が決まる仕組みなのだ。たとえば、ま、無理のないところで一日500円の返済としましょう、それで初回だから5万円貸します、と。それで、元金の5万円分と金利分を、毎日500円づつ払っていく。無担保で簡単に借りられるかわりに、金利が高く、返済条件が厳しいのだけど、毎日500円ぐらいなら返せらあと思ってしまうので、借りるときは厳しさを感じない。
しかも、このへんの仕組みは、なぜなのか、よく知らないが、貸したものが毎日集金に来ることになっている。どうやら、いまの制度でも、70%は、そのように集金することになっているらしい。銀行送金や直接持参というのは、認められていないらしい。そして、金利も、9%だから、ほぼトイチに近い。トイチというのは、10分の1、つまり10%だから。昭和30年代は、ちゃーんとイマも生きているのだなあ。
むかし、おれのオヤジが町の高利貸から借りたときは、町では有名なコバヤシという婆さんからだった。駅前通りで鉄工所を営んでいた亭主が死んで、彼女は、それでくっていたのだと思う。その彼女が、毎日着物姿で茶巾着をぶらさげて取り立てに来た。ウチでは、そういうことがあったかどうか記憶にないのだが、この婆さんは、その日の分が払えないと、家の中にあがりこんで、そのへんにあるものを持って行ってしまう、「ごうつくばり」で有名だった。
うちのオヤジも、それなりにこの婆さんには苦しめられたらしい。この婆さんには、若い美人の養女がいて、彼女は、ある夜駆け落ちするのだが、そのときの様子は、よく覚えている。彼女の駆け落ちの相手は、ウチの裏の家に下宿していた、たしか警察官だったような気がするが、警察官と駆け落ちは似合わないから記憶ちがいで単なるサラリーマンだったかも知れない。とにかく、彼と彼女は、ウチにときどき遊びに来ていて、おれも可愛がってもらったりしたが、その2人が、ある夜、雨か雪が降っていた、ほうが駆け落ちの情景としてはよいのでそういうことにしよう、血相変えて来て、あの婆は、どうしても結婚を認めてくれない、もうキチガイのように邪魔をする、ガマンできないからいまから駆け落ちするから荷物を預かってくれ、居場所が決まったら連絡するのでそこへ送って欲しいということだった。うちのオヤジは、ただちに、うれしそうに、ああそのほうがいい、あの婆じゃろくなことにならない。と、まあ、そういうことで、2人は、まさに手に手をとって、夜行列車に乗るべく、雪か雨のなかへ消えて行ったのだった。あとで、おれのオヤジは、うれしそうに、あの婆ザマアミロと大笑いしていた。
ま、どうやら、そういう名残りのようだが、とにかく担保もない日銭商売のものにとっては、今日の自分たちの食べる分や仕入れ材料費にもこと欠くようになると便利というか、もともと銀行には見捨てられているのだから、日掛けに手を出すことになる。
しかし、なんだね、青木雄二さんの「ナニワ金融道」では、借り手は困ったときには頭を下げて借りに来るのに、返すときになると金融業者を悪くいう、という話があったけど、そういう面もあるし、いわゆる町金融というのは、政府や銀行が見捨てたところを援けている面もあるし、しかし、しかも、そこへ金融して儲けているのは銀行だったりして、ようするに銀行が悪玉の大将というわけだな。
なにを書こうとしたかわからなくなったので、おしまい。
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コメント
おっ、無事に退院されました。
それはなによりです。
これを機会に断酒されることをオススメします。
かわりに私が飲みますので。
投稿: エンテツ | 2006/08/05 09:01
あとで、おれのオヤジは、うれしそうに、あの婆ザマアミロと大笑いしていた。
遠藤さんは、父親似なんでしょうな、きっと。おかげさんで、今日、無事退院できました。酒は来週末までおあずけですが。
投稿: コネズミ | 2006/08/04 18:31