嗜好と味覚の「白型」と「黒型」
嗜好は味覚と密接だ。食べ歩いて店の味を評価し紹介しているような場合でも、じつはそれは自分の嗜好で評価し述べている場合が少なくない。
で、このあいだからときどき、嗜好あるいは味覚の「白型」に「黒型」を、アレコレ思考している。それは、たまーに行く小さな居酒屋食堂で厚揚煮を食べたとき、フラッと思いついたのだった。
厚揚煮が、すごく甘辛いのだ。甘露煮のような。そして、かぎりなく醤油ナマの色つまり黒に近い。最初一口食べて、ウヘッこれはかなりのものですなあと思いながら、それをツマミに飲んでいると、あとから来た、30代ぐらいの男が同じものを頼んだ。んで、オヤジと話をしている内容で察するに、オヤジは栃木県の出身で、男もそうなのだ。男はこの厚揚煮を食べるのが楽しみで来ているのだった。つまり、これは、どうやら「ふるさとの味覚」ということらしい。
しかし、ほかの料理は、そんなに甘辛くないのにねえ。厚揚煮だけがそうなのか。まだ全部のメニューを食べてないからわからない。
よく関西風と関東風の味覚を比較する。うどんの汁など顕著だが、関西風は「白型」で関東風は「黒型」といえるだろう。塩気からすれば、どちらも同じようなものであっても、白型は薄味とみなされたりする。で、ちかごろは関西風が優勢のようだけど、これは味覚の違いというより、「白」と「黒」に対する嗜好の違いや優劣観の歴史が、味覚に影響していると考えてみると、なにかオモシロイなと思ったのだ。そういえば、西でも、九州だと「黒型」っぽいかんじもある。
つまり関西風の味覚が優れているということではなく、「白」と「黒」に対する嗜好が背景にある。んで、なんらかの理由で「白」の優位から、「白型」の味覚のものが好まれ広がったというふうに考えてみる。
日本人が「黒型」の玄米や雑穀米より白米を食べるようになったのも、「白」と「黒」に対する嗜好が関係しているかも知れない。そういえば、東えびすに京おんなは、「黒」と「白」のイメージだろう。西のタイ、東のマグロも、「白」と「黒」だ。
とか、考えて、まだ何が出てくるかわからないが、味覚の背景には、そのような嗜好がはたらいているかも知れないなあ、これは、ザ大衆食のサイトにも紹介した「料理分類学研究所」があったら、おもしろいネタになりそうだと思っているのだ。
チョイと前だが、雑誌『談』編集長によるBlogに「以前立ち上げた料理分類学研究所、再出発させようか」があったけど、やってくださいよ。
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