茶漬と汁かけめし、そして即席飯
『旅ゆけば 小沢昭一的こころ』(小沢昭一・宮腰太郎、新潮文庫)を読んでいたら、「信州信濃、お湯にひかれて善光寺詣り」に、善光寺門前の院坊の一つ「兄部坊(このこんぼう)」で、「茶漬」を食べる場面があった。
十数品の料理がでて、「さて最後は、白いゴハンに、大根おろし、刻みゼリ、ユズ、白ゴマ、カヤの実をのせ、椎茸と昆布と大豆のダシをかけたという、ま、精進料理のお茶漬けが出てまいりまして、まこと、微妙な味わい。」というぐあいで、「うまいんですねェ、もう動けないぐらいうまいんでありまして、こんなゼイタクしてよろしいんでしょうか。」と。
『汁かけめし快食學』にも、辻嘉一大先生御大家のオコトバなども引用しながら、茶漬と汁かけめしのちがいについて書いたが、小沢さんが食べたのは「茶漬」ではなくて「汁かけめし」だ。たぶん、この寺の精進料理でも、「茶漬」とよんでいるのだろう。
数日前、ウチのテーブルのうえに、永谷園のカップ食品が転がっているので、見たら「とんこつ茶づけ」という商品名だ。めしもついているやつ。しかし、これも原理的には、お茶をかけるのではなく、湯をかけるのだけども、とんこつダシの粉末をかけて湯をかける、つまりダシ汁をかけたのとおなじだから、手づくりするなら汁かけめしの調理法になる。
で、ふと考えたのだが、『汁かけめし快食學』では、茶漬と汁かけめしのちがいを整理はしたのだが、これは「伝来」したといわれるカレーライスと「国民食」といわれるほど普及したカレーライスの調理のちがいを解明するほうにネライがあったので、ナゼこうも汁かけめしが茶漬とよばれるようになったのかについて、あまり考えてこなかったなあと思った。
ま、そういうこと。
テーブルのうえに転がっていた、永谷園「とんこつ茶づけ」は同居ツマが買ってきたもので、そういうものを黙ってたべると、激しく怒られることがあるのだが、とくに明星チャルメラなどは激しい奪いあいになったりするのだが、というのも、こういうものが無闇にたべたくなることがあるのだ。しかし、今回のこれはもしかすると、かようなものが売られているぞ、たべて勉強せよという意味かと思ってたべてみた。ま、ようするに、永谷園のインスタント食品の味だった。これは、汁かけめしでも茶漬でもなく、それ風の新しい即席飯なのだ。
そりゃそうと、「椎茸と昆布と大豆のダシ」というのは、珍しいね。そういえば、むかし、大豆を炒ってダシをとることをしていたように思い出したが、炒ったあとどうしたか見た覚えがない。
| 固定リンク | 0
この記事へのコメントは終了しました。
コメント