呑斉会、若い酒好き女に囲まれて
呑斉会は会員でないと会の通知はないし参加申し込みもできない。会員でないおれは、今回は武井さんが参加できなくなったから、武井さんを通しササキさんに参加申し込みをお願いした。ササキさんは若い女性の編集者だが、名刺にトックリと盃のイラストを刷っているぐらい酒好きだ。呑斉会で1度、それから先日、池袋の永利で一緒に呑んでいる。
会場である中野の「大将」には、おれが先に着いた。主宰者の高瀬斉(たかせひとし)さんに会費を払い、ササキさんの席を向かい側に確保する。ササキさんあらわれ座る。乾杯が終ったころ、以前この会で隣の席だった、ホリコシさんがあらわれ、あいていたおれの隣にすわる。ホリコシさんも女性編集者。ササキさんもホリコシさんも酒がらみの仕事もしているので、詳しい。
そして、そのホリコシさんの前に、おれの筋向いだが、子連れの若い女性が座った。子連れは初めてで、あらわれたときに会場が一瞬ざわついた。名刺交換をしたら、「唎酒師、食育デザイナー」の肩書の新倉ゴマさんだ。すごいなあ。唎酒大会などで、いい成績をおさめているらしい。お子さんは3歳のお嬢さん。
というぐあいに若い酒好きというか酒通というか酒豪の女性に囲まれて、呑んだ呑んだ。
会場は50名~60名入る。呑斉会の正式の名前は「呑斉の市販酒を楽しむ会」であり、これは高瀬さんが町中の有力な酒屋さんにお願いし、オススメの酒をそろえてもらって呑むところに特徴がある。今回の酒屋さんは、京都の錦小路に店をかまえる、津之喜酒舗さんだ。創業が天明8年の老舗、社長の藤井輝男さんは、まだ若く元気がいい。近くの新京極の、あの大衆居酒屋食堂スタンドへは週に1度は行っているそうだ。
その藤井さんは、酒米の生産者とも交流を深めて欲しいと、綾部市の若手農家、西山和人さんを連れてきた。西山さん、保育士をしていたがやめて酒米つくりを継いで3年という、会場でも最年少と思われる若者。伏見の招徳酒造が、その西山さんが育てた酒米、減農薬の日本晴で造った酒に、「西山」のラベルをつけた。それを持っての参加だ。
低迷と廃業などのニュースの多い清酒業界だが、若い人たちの熱気に可能性を感じた。能書きたれずに、若い力が活躍できるようにすれば、大丈夫なのだ。
さてそれで、藤井社長が用意した酒。
みやこつる 純米大吟醸 無濾過原酒 (京都 伏見 都鶴酒造)
ひょうたんから駒 (丹後 ハクレイ酒造)
月の桂 祝 純米吟醸 (京都 伏見 増田徳兵衛商店)
松の司 心酔 山廃純米吟醸 (滋賀 松瀬酒造)
松の司 純米大吟醸 黒ラベル (滋賀 松瀬酒造)
招徳 西山 純米 (京都 伏見 招徳酒造)
梅の宿 純米酒 温 (奈良 梅の宿酒造)
梅の宿 ゆず酒 (奈良 梅の宿酒造)
相模灘 純米吟醸 (神奈川 久保田酒造)
能古見 純米吟醸 中汲み (佐賀県 馬場酒造)
不老泉 山廃純米吟醸 中汲み (滋賀 上原酒造)
富翁 丹州山田錦 純米吟醸 (京都 伏見 北川本家)
以上、12種。梅の宿は食前酒なので、最初に一杯ずつ飲んで、ほかは呑み放題ぐらいあった。
これらを口にふくんでは、ああでもないこうでもないというのが楽しい。単純に良い悪いの話ではなく、酒の表情について語り合うというのかな。かなり詳しい人たちなのに、決して通ぶらず、呑みながらの会話を楽しむ。食べる脳が自由に活発になる。
「これ、どう思います?」「これはね、モダンな味ね」「じゃあ、これはクラシックというのかな」「この酒はおもしろいね、舌のうえでボソッというかんじで消えるよ」「でも続けて呑んでいるとよいかんじになる」「これは、ちょっと味がばらけている、苦味が突出しすぎ」「ちょっと、こういうの暑苦しい味というの」「人間も暑苦しいのはいけませんかね」「えっ、ワタクシ的には、悪くありませんね、この田舎っぽいところがいい」「この、そこはかとなくある雑味が、たまらなくよいですね」「わたしはこういうのダメ」「舌の上の感触はよいのに、ノドにイガイガが残るね」「この煮物のシイタケを食べて呑むと、また違った味になります」そして燗をしてみて「うーん、これはよくなった」「おもったほどよくはならないね」とか……とか云いながら、なにしろ全種類を一杯ずつ呑んだだけでもけっこうな量になるから、もう途中から酩酊なのだった。
こういう酒の呑み方も、一つの「大人の食育」でありますね。
地産地消の清酒酒造や酒米農家のためにも貢献度は高いし、食育予算から補助金もらえないかなあ。
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コメント
ネズミですか
まずそうですね
孤立したり飢え死にしそうになったらやりましょう
無理して食う物じゃあないでしょうよ
投稿: 庄左衛門 | 2006/11/29 18:34
小鹿野の山は、イノシシだけでなく、
ネズミが大繁殖して大変だそうです。
ネズミ、食べられますかね。
ネズミ鍋、どうですかね。
パリコミューン下で孤立したパリ市民は、
ネズミでディナーをとったと聞きますが。
投稿: エンテツ | 2006/11/29 10:53
みやこつる
この中ではこれしか飲んだ事が無い
飲み比べたことがないので
自分お好みがわからない
比較
だいじですね
違いを知るということは
いろんな事が計算機でマルかバツで結論されてしまうので
曖昧な主観の許された味覚の話にみな集まり
そっと力をぬくのでしょうね
それを法律にしたり定義したりたいへんだ
森林再生機構の忘年会は酒とシシの飲み比べ食べ比べしながら
舌上伐採っすね
12月から湯河原の森、いよいよ伐採はじめます
来年は小鹿野と銀座がつながります
またね
投稿: 森林再生機構 | 2006/11/28 12:58
ああ、どうも、あの夜は、あなたは電話に出ないし、
ここのところ、オンナにふられ続けで、
もうダメだ、おれの人生オシマイだと、
一人45番街の、あの荒れ果てた暗闇で夜空をあおぎ、
一滴の涙がホオをつたい、
人生の孤独をしみじみ味わい……
ということもなく、あなたに電話したころは、
すっかり酩酊していたので、あれで呑まずに帰って、
ちょうどよかったのです。
でも、45番街を見てタメイキをついたことは覚えています。
まったく、ヒドイ状態です。
大丈夫、ほかの愛人を格下げして、
あなたの位置は確保しておきますんで。
先日、よしばんと呑んだのですが、そのこともありますし、
また連絡します。
投稿: エンテツ | 2006/11/27 13:37
エンテツさま
土曜日の夜、せっかくお電話をいただいたのに、出られなくてごめんなさい。結婚式の仕事が二組ありまして、朝から晩まで、人々が飲んで騒いでいる風景を写真におさめて、終わったのが9時過ぎでございました。
ああ、愛人ランク格下げですね(涙)
また、連絡お待ちしております。
投稿: まりりん | 2006/11/27 13:23
楽しかったですねえ。
ずいぶん呑みました。
今回は、わりとシッカリ覚えていましたが、
あの会場のなかで移動したあたりから、
急激に酔いがまわり記憶がアイマイに。
でも、佐々木さんにいただいて飲んだ薬がよかったのか、
朝の目覚めは快適で、
しかもトシのせいか朝は早く目が覚めるますからね、
それでさっそく日記をアップしただけ。
って、ことで、3日もよろしく~。
投稿: エンテツ | 2006/11/27 09:22
エンテツ先生、こんばんは。
昨日はお疲れ様でした!ご一緒できて楽しかったです。
いつものことですが、閉会後もたもたしていたら、
先生もホリコシさんもすでにお帰りのようでした。
きちんとご挨拶もせず、失礼いたしました。
日記を拝見しました。昨日の今日でアップされるとはさすが先生。
物書きの鏡です。あんなに呑みましたのに…
私なんぞ、昼過ぎに起きてぐだぐだと過ごし、
気がつけば今日という日もそろそろ終わりそうです…情けない。
そうそう、12月3日の落語会ですが、以下の「落語馬花」です。
ご都合がよろしければぜひ!
http://www13.plala.or.jp/shoppana/index.html
投稿: ササキです | 2006/11/26 22:49