もう5年すると
ちかごろスーパーのレジにならんで、シミジミおもうことは、「年寄り」がふえたということだ。このおれも、その「年寄り」の1人なのだろうが。その「年寄り」が、おなじ「年寄り」を見て、イライラしためいきをつく事態だ。
そのふえた影響は、レジのところで顕著にあらわれる。「年寄り」は、ほんとうに遅い、グズだ。歩くのが遅いうえ、財布からカネをだすにしろ、釣をもらって財布におさめるにしてもグズだ。おまけに、まわりのこと、ひとのことに、まったく無関心のようだ。
そもそも、いまのレジは打っている最中に、打ち込み合計がつぎつぎ表示されるから、それを見ながら財布を出して支払う用意はできるはずだ。なのに、打ち終わってから、店員がイクラですというのを聞き、それをまた聞きなおし、それからバッグから大事そうに財布を出し、カネを取り出し、ツリを受け取り財布におさめてから、ともするとその前に、レシートをていねいに点検し、それからやっとレジを立ち去ってくれるのだ。その動作の一つ一つが、わざとほかの客に迷惑をかけて楽しんでいるかのように、ノロノロしている。
とにかく、ここ数年のあいだに、レジの風景は、まったく変わってしまった。そのことをおもい、つぎの5年を考えると、ゾッとするものがある。自分も、その風景のなかの一人であることを考えると、よけいゾッとする。
社会全体が、ノロノロゆっくりペースになるのなら大歓迎だが、いまの流れは、そうではない。たとえばレジ処理が遅くなって効率が落ちたぶんは、どこかで吸収されないと、べつの破綻につながる仕組みだ。だれかのグズノロは、だれかどこかにしわよせされる。
おもえば、人間には未来を想像し対策する能力があるはずだが、ここ10年ばかりの大勢は「懐古ブーム」というか、「過去形ブーム」だった。今日あったこと、きのうあったこと、古い評価を定めやすいことなど、そちらのほうに関心が集まり、つまり未来ではなく過去の画像を眺めながら喜怒哀楽し、脳天気にすごしてきた。ま、こういうブログ日記なんてのも、そういうものだったかもしれない。2007年モンダイといっても、赤信号みんなでわたればこわくない、というかんじだ。
未来を想像しないかぎり、その能力は退化し、過去にながされる。そして、いまのレジの風景があるのだ。もう5年すると、この風景は、どうなっているのだろうか。
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コメント
ティコティコさん、はじめまして。
竹屋食堂、お会いできないうちに閉店で、残念ですね。
いつのまにか「年寄り」が増えたかんじだけど、
まだ増えるんですよね。
で、増えてみてわかったことは、
いまの年寄りは、自分もふくめてだけど、
そんなにマナーのよい育ちや生き方をしてこなかったということです。
そのわりには、いまの連中はおかしい、
自分は「正しい」ってやつが多いけど。
もともとマナーが悪いから、厚顔無恥なだけです。
といったことをシミジミおもい、これを書きました。
ま、これからも、よろしく~
ブログ、ちょろっと拝見しました。
またゆっくり見させてもらいます。
投稿: エンテツ | 2007/02/16 00:30
エンテツ先生、初めまして、
数年前から『竹屋食堂』にたまにいって、
親父さんからエンテツさんのことを、よく聞かされてました、
「昨日来たよ....」とかすれ違ってばかしで、
お会いできずざんねんです。
いま一文を拝見して、
40年ほど前にはじめてパリに行ったときのことを思い出しました、
その頃の日本には青山通りに、紀伊国屋をはじめとして、
どこのスーパーに行っても
元気な若い主婦が買い物籠を下げて来ていたのです、
パリで初めて行ったスーパーは
なんとも『年老いたおばーさん』ばかり
杖を突いた人も沢山居て、よたよた、フラフラ、
しゃがみ込んで一息ついてる人、
それまでスーパーには若い人しか居ないといった
日本でのイメージを持ってたのでビックラたまげました、
五年後に日本に戻ってきた時も、
やはりスーパーは若い主婦で一杯でした、
いつの間にか昔のフランスのようになった現状を
先生の一文で改めて思い知らされました。
何時も楽しいホームページを読ませて頂いてます
『ただ呑んでるだけ』のブログにも
エンテツさん、らしき人が頭文字で出てくるのが
なんとも楽しみです。
これからもどうぞよろしくお願いします。 ティコティコ
投稿: ティコティコ | 2007/02/15 13:52