いま最高に刺激的な雑誌『四月と十月』最新号
さて、昨日から前置きが長かったが、やっと本題の、画家のノート『四月と十月』vol.16最新号のことだ。
その濃密な読みごたえは、2006/12/12「「四月と十月」の濃密」に、詳しく書いた。今号もまただ。
まず、袋からだしたら、アレッ表紙、真っ白じゃないか、裏を見ても真っ白。これ、この、しっとりした感触のアイボリーのはいった白い紙が作品なのかと思いながら、何回かひっくりかえし、何度目かに、やっと表紙の左下にある絵に気づいた。これが、パラパラ漫画なのだ。味なことやるねえ楽しいねえ。宇田敦子さんの作。デザインは内藤昇さん。
というぐあいに一つひとつ感想を書きたいが、きょうは忙しいので、省略。いつもの四月と十月の参加メンバーが書く「アトリエ」からも、ほかの記事・連載も、どれも読むと刺激になる内容ばかり。なんてのかな、さあ書きますぞ、どうだ書くというのはこういうことなんだぞ、こんな風に書くと受けるんだよな、という感じがみえみえの、視聴率稼ぎのような表現の、文術家系のひとたちが書いたものとちがって、美術家たちの日常、日常のなかで考えていることが、サラリと書かれていて、その視点や感情の働き表現などが、とても新鮮に興味深く読める。この雑誌は、いま最高なのだ。
今回の注目は、なんといっても、編集長の牧野伊三夫さん執筆の連載「仕事場訪問」だ。「福田尚代が現代の美術表現をはじめるまで」というタイトル。「彼女がある雑誌のインタビューで、何故わざわざ文章を墓石に彫るかときかれ、「私はあくまでも文章家ではなく、造形作家でありたいと思う」とこたえていたのを今でも覚えている」という牧野さん。「美術が「絵」という限られた空間からとび出して久しいが、僕たちは何を手がかりに表現を考えていけばよいのだろうか」と、なかなか重い出だしなのだが。
福田さんが、「回文」と福田さん自身が「転文」とよぶ文を、墓石に彫ったりといった美術表現にとりいれる、現在のような表現方法にいたるまで、なかなか重い人生があった。読んでいても痛々しいほど。おれなら、酒飲んで、さっさと表現稼業なんか、やめちゃうね。ま、実際、福田さんも一度は、おれのような俗人からみたらエリートな、東京芸大と芸大大学院を出ていながら、なんともったいない美術から離れ、郵便局で働く。しかし、それが、「郵便局が好きだったから」というのもオモシロイ。そして結婚、渡米、別居、帰国、離婚……。
牧野さんは、福田さんを訪問した結果を、このようにまとめる。「回文は彼女にとって遊ぶ道具、つまりおもちゃなのだ。回文をつくることによって、美術表現しなければならないという脅迫観念から解放されていくのではないだろうか。僕がギャラリーで感動したものの正体は、彼女がこうしてたどりついた自由な世界で、自分自身を素直にさらけ出していることだったかもしれない」「表現は「いかに自由な世界に遊ぶことができるか」にもかかわっていると思う」
ここでいう「表現」は、表現を稼業にするものたちだけのことではないだろう。あらゆるひとに関係することだと思う。
おれなどは、さしあたり、このブログが遊び道具なのだが、「書かなくてはならない」「なにかのために、書かなくてはならない」と思い出したら、とても続けられるものではない。ようするに、ここにこうして書くことで、さまざまな強迫観念から解放されていくこと、それが「自由な表現」「自由に生きる」への道なのだな。なーんて考えたりした。
しかし、おもちゃだと思っていたものが、いつのまにか稼業ってことになると、それはまたそれで切ないことであり、おもちゃはおもちゃのまま遊ぶのがよい。で、こうして遊んでいるわけだ。ここに書いたものを出版につなげたいといったスケベごころなんか持たないほうがよいのだ。気ままになりゆきまかせを遊ぶ。チョイと表現にからんだ仕事をしているからといって、自分を特別な人間のようにおもったり、芸術家や文化人を気どるなんて、サイテーなのだ。
ましてや、もっとも自由な楽しみでなければならないはずの飲食の場に、知ったかぶりの食べ飲み歩き情報屋や栄養学が強迫観念を押しつけてくるなんぞは許されることではない。もっと自由にやろう。すべての自由は飲食の自由からはじまる。って、わけわからんか。
と、話は、ずれたようだが、『四月と十月』の文の一つひとつが、そういうふうに自分のことを考えさせてくれるのだ。しかし、「回文」をつくるのって、どうも楽しそうだから、やってみよう。
はて、長くなってしまった。古墳部の旅のことは昨日ちょっとだけ、田口順二さんの文を引用しては今日の早朝深夜、ちょっとだけ遊ばせてもらったので、きょうは、ここまでよ。
四月と十月公式サイト…クリック地獄
こちらもご覧ください…2006/12/12「「四月と十月」の濃密」…クリック地獄
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