あたりまえフツウのことを当たり前ふつうに位置づける
五十嵐さんにメデタイことがあったようなのでブログを見たけど、そのことは書いてない。謙虚だねえ。そして「『現代思想』6月号」というタイトルで書いているなかに、こんなセリフがあった。
“外国人関係の問題を日本社会の中にすげー当たり前に位置づけるような話がわりと少ないと常々思っているので、これはこれでよかったと思っています。”
このへんが、五十嵐さんの謙虚な、というか、当たり前フツウを正確に位置づけていこうという姿勢のあらわれなのだろうなあ、と思った。
メディアは、とかく、突出、特別、特殊、新奇、めずらしい、変わっている、そんなことに偏って話題を求めたがる。普通、スタンダードを見失いがちだ。
かなりキチンとやるマーケティングリサーチや社会調査は、基礎調査とか基本調査というものをシッカリやる。それは、ごく当たり前フツウすぎて、そんなことワザワザやるこたあねえだろうということをやる。じつは、未来のカギは、そこにあるからだ。たとえば、国勢調査は、いろいろ問題が噴出しているようだが、そういう普通を示すデータがなくては、未来を構想することはできない。
だけど、人びとの関心は、メディアの影響もあって、なかなか普通へ向かない。ブームな、マニアックな、突出した、そういうことでないとコーフンできないのだろうか。コーフンしたいのだろうか。あるいは未来やビジョンなんかどうでもよいとか。
人生、フツウで終りたくないのかな。自分が、注目される特別な存在になりたいのかな。みる人間より、みられる人間を意識するほど、何かに偏執していく。細分化していくグルメもそのようにみえる。
おれは、「あたふた流行の言説にふりまわされることなく、ゆうゆうと食文化を楽しみたい」「普通の食事を大切に」「ありふれたものを美味しく食べる」とか、やっている。何度も述べているように、おれの関心は、現代日本食のスタンダードとは何か、だ。スタンダードのシッカリしない文化など、浮き草のようなものだと思っている。
やはり、堅気のサラリーマンやビジネスマンや労働者、呼び方はいろいろあるが、社会や生活の土台を支えている人たちの余剰を頼みに、おれのようなフリーライターがやっていられると思う。学者や研究者やエセ文化人やメディアが偉そうにしていられる。ま、いまや、実態のともなわない余剰のために、虚業家の群が「活躍」しているにしても。文化だの芸術だの科学だのは、普通の生活のなかにあるものだ。おれは、そう思っている。カンジンなことは、普通酒や普通のめしがうまくなることだ。そのことを考えなくなったら、人間としてオシマイと思っている。そのわりには、五十嵐さんほど謙虚でないと、反省。
とにかく、いろいろなことを「当たり前に位置づけるような話がわりと少ない」。そのことを、あらためて思った。ので、忘れないように書いておく。
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コメント
やあ、まあ、とにかく「おめでとう」です。ま、たしかに、知るひとぞ知るで、わざわざ言い立てることじゃないかも知れませんね。
どこかのブログで「ジャンル愛」という言葉を使っていたけど、そういう傾向強いですね。ま、閉塞の時代が続くかぎり、そういうことなのでしょうけど。もう、そろそろ「脱」へ向かいたい。
とにかく、あれから1年たつわけだけど、「地理的」な見方に刺激をうけ、これはかなりこれから有効だなあと、いまだコーフンしています。けっきょく都市と農村を対立的にとらえたりする傾向、古いものと新しいことを対立的にとらえる傾向あるいは「細分化」が進む傾向というのは、本来の「地理的」な見方を欠いてしまったからではないかと。
ま、そういうことは、また飲みながらでもやりたいですね。これからチョイ忙しくなって、夏休みナシ、9月上旬ごろには片づくはずなので、ゼヒつくばで、H口さんともイッパイやりたいです。例の話は、ゆっくり進行しながら、まだ生きていますし。
投稿: エンテツ | 2007/06/19 11:13
あらら、こんなところに(笑)
「めでたいこと」に言及しなかったのは、謙虚というよりは、面倒くさくて書かないでいるうちにタイミングを逃したというのもあるのですが(笑)、まあわざわざ言い立てることでもないですしね。お世話になった方にはご連絡するのが浮世の筋ですが。
フツーに位置づけるということ、これが重要だなぁと、最近つくづく実感しますよ。コレが本当に案外ない。
あるのは、視野の狭い業界話(エンテツさんの言う「細分化」かな?)か、それができりゃあ苦労がないよな正論か、あとは目立ちたい一心の自意識過剰な極論か、ですよね。
ところでところで、つくばってやっぱり変なところですよ(笑)
慣れなきゃいけないんだろうけど、そして案外簡単に慣れちゃうんだろうけど、ここに慣れちゃうのってやっぱりコワイ。
まあ、でも隙間に変な店、しょぼい店もできつつあるんですけどね。
一度こっちでも飲みませんか?
(秋にはある会合で、H口くんも筑波に来る予定です)
投稿: yas-igarashi | 2007/06/19 10:00