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2007/07/09

門前仲町で落語馬花、飲まずに帰る

きのう。酒好きササキ嬢さんから以前に誘いがあり予約しておいた、落語馬花へ。まだどことなく前夜の飲み疲れがデレッと残る身体。

昨年12月のときとおなじ、門前仲町の門仲ホール。6時半ちょいすぎにエレベーターにのろうとすると見たことあるような男が一人。誰だか思い出せない、芸能人のような気がするが、テレビを見ないから知らない、でもなにかで最近見た顔だなと思いながらエレベーターのなか。

大盛況、予約を断るほどだったと。知っている顔はいないだろうと思っていたが、着物姿のセオ嬢さんが。そういえば昨年12月もいたな。おれと顔を合わすや急いで、おれの顔だけ見ながら近づき足下がぁ、床の台につまづきドタッと、おれの腕のなかに転がりこむ、とはならずにこらえて踏みとどまる。そしてなんと、カワハラ嬢さんもいる。おととい電話で話したばかりだが、お互いここで会うとは思っていないから、そんな話はしてない。このおれを含めた3人は、古墳部で、今月末東北へ行く。しかもみなと一緒に行かずに先発するヘソマガリ5人のうちの3人なのだ。それが、どういうつながりでここにいるのか。はてな。見えないところでつながっている糸。七夕に願をかけたところでもとのようにつながらない切れてしまった糸だってあるが。大都会の糸、いと不思議、なんてね。

はてな。といえば、エレベーターの見たことあるような顔は、松尾貴史だった。彼は、この日飛び入りゲストとして落語をやりに来たのだ。噺は「はてなの茶碗」。それはともかく、まずは馬吉が「ざるや」。うまいがはしょりすぎ、もっと聴きたかった。おあとの飛び入り松尾の関係があったのだろう。つぎ、こみち「お菊の皿」、前回とちがい硬さもとれ、女ならではのはなしっぷりをいかし、上達がわかる。

そして、ここで松尾貴史なのだ。高座にあがった顔を見て思い出した、さきほどは違うメガネだったが、このメガネの顔は『酒とつまみ』9号の「酔客万来」に酒グラスを持ってアップで写っていた、あの顔じゃないか。ちかごろ落語をやる芸能人がふえているらしい、落語が女に人気だというので落語をはじめるのか、やるなら浪花節をやれ、と思いつつ聴いていると、これはきのうきょうの芸じゃない、それなりに聴ける。「有名人」ということで会場も盛り上がった。

中入り前最後が初花の「悋気のこま」。これはちょいとツラかった、というか可愛そうだった。中入りあとにしたほうがよかった。デキそのものは、そんなに悪くなかったと思うが、会場は、松尾貴史のところで緊張感盛り上がり、疲れが出たのか少しダレていた、それをまとめなおし引っ張るほどの臨機応変の芸はまだ無理というわけで、チト中だるみ。

中入りのとき。飲み人の会に参加のコン兄さんを見つける。これまた不思議な縁じゃのう。どうやら、この落語会は早稲田の落研あたりがからんでいるらしいと見当ついた。

中入り後は、それでトリになるゲストが登場する。今回は正朝が「井戸の茶碗」を。正朝を聴くのは初めてだったが、落語家というより、そのへんのしがないサラリーマンのオヤジが酒場で世間話をするような感じでマクラが始まった。マクラだけではなく、その感じが続く。なんだか妙な味がある。それがこの人の芸なのかどうかはわからないが、この日のだしものにピッタリだった。

武士の意地というか、正朝は「正直がテーマ」といったが、武士の正直と町人の正直のちがい。武士は刀にかけても正直を通そうとする。正直というより、意地と面子というか、丸くおさまるものもおさまらなくなる。こんなのに付き合わされたら、とんでもないめにあう。正朝は、そういう二人の「正直者」の武士のあいだで、右往左往させられ、とんでもない目にあう正直者の屑やのオヤジになりきっていた。意地を通そうとする上司のもとで、右往左往のヒラみたいな感じもあった。

この噺は何度も聴いているが、その滑稽さが、よく出ていた。けっきょく、噺は、噺家の芸のレベルということもあるが、自分なりに噺の素材やテーマをどう消化あるいは昇華するかという工夫が、けっこう大事なのだな。このへんは、なんでもおなじか。そのように感想したのだった。

ま、とにかく、若いひとたちが懸命にやっている芸を見るのは、成熟した完成度の高いものや洗練されたものにはない、あふれる荒削りな元気がイイ。ま、おれのばあい、とくに自分で「粋」や「通」をやるつもりはないから、こういう「発達中」「挑戦中」というかんじが好きだな。

セオ嬢さんカワハラ嬢さんコン兄さんにさよならをし、ササキ嬢さんには打ち上げ飲みに誘われたけど、チト疲れが残っているし、体調を整えておかなくてはならないので、めずらしく飲まずに帰る。

当ブログ関連…2006/12/04「門前仲町で落語、信濃路で浪花節の気分」…クリック地獄

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