浪曲乙女組、浅草泥酔
12日は、ひさしぶりに浅草の木馬亭へ行った。夜、7時からの「浪曲乙女組」の公演。たぶん、これが初公演のはずだ。「組長」関東節の玉川奈々福、そして関西の春野恵子、菊地まどか。
木馬亭へ行く前に、チト散歩をしようと、早めに出て、JR山手線鶯谷駅から下谷とかっぱ橋あたりをウロウロして浅草へ。下谷のときわ食堂、かっぱ橋商店街のときわ食堂、浅草ふれあい通りの五十嵐食堂の前を通った。下谷のときわ食堂と五十嵐食堂は、まだ5時前ということもあってか、開いていなかった。浅草で閉店のウワサのあった阿つみ食堂の前へ行くと、たしかに、そこは喫茶店になっていた。
ついでにそばのニュー浅草本店に入る。一人客用の大テーブルにすわって、暑かったのでビールを飲む。おなじテーブルに見たことがあるひとがいる。風体からして木馬亭の客らしいと思っていたら、やはりあとで木馬亭にいた。
乙女組は、すばらしかった。身体がゆさぶられるような演技だった。奈々福さんがお姉さんということは、ほかの2人はもっと若いということだ。まどかさんは、まだ20歳代か。関西の2人の声の太さと声量にはおどろいた。これは、もう、こんな若手が3人もいるのだから、すごい。ほんと、まだ芸が若いのはやむをえないけれど、それをこえる可能性を感じた。
聞くところによると、近頃は若い女性の入門が続いているとか。浪曲界も、なんとなく若やいだ活気が出てきたような感じがした。一年前には、考えられなかったことだ。
まどかさんは、新作の「嫁ぐ日」。同年代の女性にもよろこんでもらえる浪曲を、ということで作ったものらしい。なるほどと納得。奈々福さんは、小沢信男さんの原作による新作「悲願千人斬の女」、もう余裕の演技だった。こういう新作が生まれるのも、活気の反映だろうが、恵子さんの「齋藤蔵之助堅田落ち」は、古典ながら古臭さを感じさせない声と節で、現代をとらえていくセンスのよさを感じた。古典の洗練再生ということになるか。とにかく、ぞれぞれの個性が、現代に生きる浪曲を生んでいるようで、うれしかったねえ。
曲師(三味線)は、沢村豊子さん。ほんと、いつも、うまいねえ。この乙女組は、じつは今日、国本武春と組んで、新宿歴史博物館でやる。これが、曲師は、豊子さんのほかに、おれが好きな佐藤貴美江さんなのだ。あのニヒルでアナーキーな、やさぐれな感じがいい貴美江さん。応援しているよ~
奈々福さんの師匠の福太郎さんが、おもわぬ事故で急逝したのは、去る5月23日だった。おれは、たまたまネットニュースを見ていて、その午前1時過ぎの一報で知り、すぐブログに書いた。2007/05/24「玉川奈々福さんの師匠、福太郎さん亡くなる」。師匠は、おれより2つぐらい若い。奈々福さんは、この師匠に導かれて浪曲をやりはじめた。その突然の死だった。
奈々福さんの心中を察すると痛々しくて、なかなか木馬亭に足がむかなかった。先日、今回の予約のこともあって、メールのやりとりしたが、奈々福さんは、こんなふうに胸中を書いていた。「師匠が死んで、希望の星を失って、私は二度と浪花節を楽しい気持ちで演じることができなくなっちゃったと思いました。ひとの浪花節を聞くのも含めて、イヤで、アレルギーみたいになりましたが、人は希望をつながずには生きていけないもんですねえ。」
もともと先の見えない逆境どん底の浪曲界に身を投じて、ここまで来たのだ。まずは、祝「乙女組」。
画像は、その夜の浅草寺。ライトアップされ、昼間とはちがった姿を見せている。しかし、人影もまばらで、もったいない。
そうそう、この日は、シンさんとタノさんという若い男たちと一緒で、おわってから、もうすでに有名店の「正ちゃん」でホッピー、中3をやって、そのあと前から気になっていた小さなもつ焼屋に初めて入ったのだが、ここがよかった。ホルモンつまみ充実。〆張り鶴が安く飲めるので感動。燗のつけかたもよかった。また行きたい。帰りは、泥酔、終電。
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コメント
五十嵐さん、そちらのブログのコメントにも書きましたが、春野恵子さんの東京公演の件で出したメールがもどってきてしまいました。
メールアドレス教えてください。
って、そうか、携帯電話に電話すればよいのか。
でも、いちおうメールアドレス教えておいてください。
投稿: エンテツ | 2007/10/20 10:57
ええ、万難を排して(笑)、ご一緒させていただきます。
一度共通の旧友と行ってみようかななんて思ってはいたのですけどね、浪曲の聴き方が全然分からないもので、エンテツ師匠とご一緒させていただけるなんて、またとない機会です☆
投稿: yas-igarashi | 2007/10/17 02:19
春野恵子さん、だいたいトシは知られているから、いいんですよ。それに、とにかく、浪曲界では若手だから。もう抜群のうまさ。感覚が現代的だし。
年内の東京の舞台、調べて連絡します。たしか、玉川奈々福さんと一緒の舞台があったように記憶しているので。都合よろしかったら、ご一緒しましょう。
投稿: エンテツ | 2007/10/17 01:38
20年前なんて、春野恵子さんになる前どころか、別の名前でテレビに出まくってたときよりも遙か前、つうかお互い中1ですよ、中1(笑)
あ、彼女の年齢ばらしちゃいけないのかな(笑)
浪曲にはとんと疎いんですが、うまいんですね、恵子さん。
年内にあるということなら、一度ご一緒しましょうか。
アメ横、とみに最近変わり方が早いですね。
第1世代が軒並み鬼籍が近づいてくるころだというのも関係しているでしょうし。
投稿: yas-igarashi | 2007/10/17 01:08
どーも、おひさしぶりです。いかがですか、「就職先」の住み心地地は。ご活躍ください。
春野恵子さんと20年来の知り合いとなると、彼女の浪曲家以前からですね。この方、若手なのに、すごいですよ。目が離せません。ときどき東京でやっていますよ。年内も、たしか、あるはずです。
土井が浜、いいところです。また行きたい。あの弥生人のミュージアムも見たいし。
ま、また一杯やりましょう。例の話も、のびのびになっていますが、まだ生きていますし。
アメ横は、どんどん変わっていますね。
投稿: エンテツ | 2007/10/17 00:42
あ、ちなみにエンテツさんがついこの間いらした土井が浜って、うちの婆ちゃんが死んだ養老院の足下に広がってるところなので、何度も行ったことがありました。
久しぶりにブログまとめ読みすると、なんだかいろんなところで引っかかってしまいます。(笑)
投稿: yas-igarashi | 2007/10/16 23:04
オヒサシブリです。
おー、この春野恵子さん、実は20年来の知り合いで、幼馴染みみたいなもんなんですよ。これはまた意外なところでお名前を拝見しました。
最後に連絡取ったのももう5~6年前、よくテレビでお見かけしてたころの話で、このところはときどきネットで近況を知るぐらいのもんでしたが、元気にやっているようですね。
嬉しい限りです。
投稿: yas-igarashi | 2007/10/16 22:59