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2007/10/10

「風味」をさがす

風味というのは、口腔から鼻にぬける味わい、というようなかんじで覚えていた。そういうふうに教えてくれたのは、江原恵さんで、ま、実践のなかで教えてくれたのだった。口の中を満たした、このばあいは「ニオイ」といってよいのか、それが鼻にぬける、そのかんじを「風味」だと。

ワサビのばあいは、わかりやすい。酒のばあいは、これが酒の質のかなりを左右しているのではないか。また、たとえば、そばやうどん、あるいはダシの風味といえば、それのことだろう。鼻で吸って嗅いだニオイとはちがう。

このあいだ、ひさしぶりに昔風の、小麦粉がネバネバのカレーライスを食べたとき、その口腔から鼻にぬける、小麦粉の甘い香りを感じて、おおそういえば、確かに昔のカレーライスというのは、これだったなと思った。

近頃は、うどんというと「のどごし」の讃岐が人気で、考えたら、それは「のどごし」という味覚に話が傾斜していることがほとんどで、小麦粉の風味が話題になる場面というのはあまりないような気がした。

埼玉の熊谷から秩父あたりのうどんは讃岐とちがって、まるでねった小麦粉をかじるようにうどんを食べるから、小麦粉の風味が大事だ。

そんなことを考えながら念のために広辞苑で「風味」を引いたら、こう解説していて、その口腔から鼻にぬけることについてはふれてない。

「あじ。特に、上品なあじわい。趣致。」

これだけだ。すると、おれが覚えていた「風味」はどうなるのだろうか、あの鼻にぬける味わいをなんというのか、トツゼン気になったのだった。なんだか、おかしい。そもそも「特に、上品のあじわい」を風味だなんて、おかしいんじゃないの。

ついでに書けば、たしかに味覚はそれぞれのものだから、自分がうまいと思ったものをうまいでよいのだけど、そういう言い方のなかに、ちゃんと味や味覚を理解することをごまかしているようなところがある。それはインチキというものだろう。これは、こういう味だ、こういう味覚だ、そのこと自体は判断が必要なのだ。

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コメント

ほんと、「匂い」系の表現は、むずかしいですね。匂いの基本になる言葉がなくて、どう表現してよいか。けっきょく、植物や動物の匂いに例えるよりしようがなく、でもそれでは伝わらないもどかしさがある。

粉に熱を加えると、やわらかなソフトな感じの風味がたつというか、そんな気がするときがあります。それを「上品なあじわい」といえないことはないにしても、日本語は「上」「下」の観念にしばられて、精神の躍動に欠けるような。

投稿: エンテツ | 2007/10/11 01:10

「あじ。特に、上品なあじわい。趣致。」-

これはちょっと酷いですね。言語的な分類は、その文化の発達を示すようですが、その程度のものなのか?しかし、匂い系の表現は難しいのは確かです。

そう言えば、粉を煎ったりした香りや風味には極上なものが存在しますね。

投稿: pfaelzerwein | 2007/10/10 15:49

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