『四月と十月』バイヤー気質パイル手芸社十三湖不真面目礼賛ザ大衆食便器集英社文庫古墳部マイヤマ
11月2日に『四月と十月』が届いた。『雲のうえ』5号と同じ10月の発行だから、おれが北九州7月の末のロケハンと8月のホンバン取材のあいだに参加した古墳部の北東北縄文の旅は、この号のためだった。夏は『四月と十月』10月号『雲のうえ』5号ですぎたのだなあ。ああ、そしてもう今年も第4楽章最終節燗酒グイグイといったところだ。
「表紙の作品について」。表紙は、大熊健郎さんのコラージュ作品を内藤昇さんがデザイン。画像でわかるだろうか。拡大鏡をあてた『四月と十月』のタイトルは、そのコラージュ作品に組み込まれた前号のものなのだ。
その顛末を大熊さんが書いている。読んで笑った。大熊さんはギックリ腰で自宅療養。気がつくとネットサーフィン、やらないように注意していたヤクオクに手をつけてしまった。元来の買い物大好きのバイヤー気質が勃然と。しかもガラクタに目がない。はずみで『四月と十月』を落札。届いたのを見たら、まだ手元に7冊も残っている最新号だった。
内藤さんは書く。この内藤さんの文が、いい。「ご自分の趣味で集めた様々なものを、現物でコラージュする。それを写真に納めたものが、大熊さんの作品。だったらその中に「四月と十月」を入れてもらおう。 / 大熊さんの生活の風景の中にある「四月と十月」。 / 大熊さんの趣味の中にある「四月と十月」。 / みなさんの「四月と十月」は、どんな風景にありますか?」。
いろいろなものを生活の風景の中に見てみたい。
さらに大熊さんは本文では、そのヤクオクで落札したらしい動物のぬいぐるみの写真に、タイトルは「パイル手芸社のぬいぐるみ」。おれがガキのころのぬいぐるみは、たしかに大熊さんが書くように、おがくずのつまったカタイぬいぐるみだった。「ああ、諸行無常」。パイル手芸社の創業者である三田村工社長が、動物の骨格から研究して世に送り出した、桐のおがくずのつまったカタイ優れた品質のぬいぐるみの数々。しかし、パンダブームを境に、「アクリル綿をつめたフワフワしたぬいぐるみばかり。この影響で次第にパイル手芸社の業績は低下し、平成四年五月、三田村社長の他界とともについに終止符を打つことになる」
平成軟弱フワフワ社会が葬り去ったものは、こんなところにもあったのか。
久家靖秀さんは、古墳部の旅行で立ち寄った、十三湖の海の写真。そういえば、あのとき、堤防の突端まで行って荒れる海の様子を見た久家さんは、カメラをとりにクルマまでもどったのだった。おれも、おなじ場所から撮った画像を、このブログに載せているがクリック地獄、やはりちがうねえ。ちがって、アタリマエ、くらべるのが、マチガイ。
古墳部部長の須曽明子さんは「不真面目礼賛」。いいねえ、フマジメ大好き。と、読めば、そこに「尊敬するEさんも」とあるが、この話、おれのことのようだ。いやあ、おれはマジメですよ。うふふふふ。ボクラハミンナリカイフノウ。
そして、ななんと、田口順二さんは「アトリエのかたづけ」で、ザ大衆食のことを。「よく本誌についても取り上げてくださっているし、なにより、エンテツさんの文章がおもしろい」と。いやあ、うれしいけど、照れちゃいますねえ。てれてれ。今回も『四月と十月』をネタにさせてもらっています。
編集長の牧野伊三夫さん、「便器との対話」って……。いや、マジな芸術活動に参加した話。北九州市の芸術祭だもの。だけど、便器なのだ。ちょうど、その作品ができあがったのは、『雲のうえ』5号のホンバン取材の最中だった。TOTO、ご存知ですよね。あの会社の本社、工場は北九州にある。その便器の素地を使って、しかも、まだ「やわらかい便器に手を加えて立体作品をつくるつもりだった」。いやははは、おもしろい。写真も載っている。なんじゃ、これは。「さて、しかし自分が一体何をつくったのかわからない」。おれにはもっとわからないよ。でも、これは「便器との対話」なのだ。
連載の有山達也さんは、集英社文庫の外回りのデザインの「競合プレゼン」に「気合を入れて参加してみた」話。無事にしとめ、いまそれが本屋の店頭にならんでいる。へえ、こんなふうに決まったのか。
「古墳部活動記 第8回 北東北の縄文を訪ねて」須曽明子さん。ああ、夏を思い出す。須曽さんは参加してない「前日出発隊」のことも詳しくあって、すっかり忘れていたが、釜石駅前の市場で食べた「たらの刺身」を思い出した。これ、撮影して画像があるのだけど、なんの刺身か見てもわからなくて困っていた。なにしろ食べ物が出ると、まず食べてしまって、メモするのも忘れちゃうもので。といったぐあいに、几帳面で真面目な須曽さんの文章のおかげで、いろいろ細かいところまで思い出した。
前号からだが、山部ができて「山部山行記」がある。今回は、箱根の鷹巣山と浅間山。おれも歩いたことがあるぞ。若菜晃子さんが書いている、そこに「マイヤマ」という言葉が。有名でもなくても、高くなくても。「たとえば、同じ山に何度も登るのも案外よいもの」。いや、まさに。いまのおれのマイヤマといえば、秩父あたりの山々だろうか。いや、まてよ、「八海山」とか「巻機」とか。でははは、これは、山の名前だけど酒の銘柄。マイ酒の山に登っているのですね。
ってことで、今号も充実の『四月と十月』でした。
『四月と十月』のサイト……クリック地獄
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