杉山登志とオイル。
昨夜の忘年会の席で、キヨタさんと杉山登志のことを話した。若い彼女が知らない時代のことを質問されるままに話していると、自分の記憶の掘り返しと整理にもなってよい。
杉山登志のことは以前に簡単にこのブログに書いた記憶があるので調べてみたら、これがあった。
2003/04/08
「なんでこうなるの安曇氏と高橋氏の続き」
このタイトルで、例によって、先にタイトルから思いついて書き始めるから、内容はほとんど杉山登志のことだ。
キヨタさんと話していて気がついたのだが、杉山登志が37歳で自殺したのは、原油価格が高騰し日本は「オイルショック」で騒動の最中だった。1973年。当時30歳のおれは広告界との関わりが深かったから、杉山登志の自殺は衝撃的だったが、とりわけ新聞で知った遺書の言葉は忘れられないものになった。
きのうその遺書の言葉を口にしながら、その遺書には「リッチでないのに/リッチな世界などわかりません/ハッピーでないのに/ハッピーな世界などえがけません/『夢』をうることなどは……とても」とあったのだけど、ということは、ようするに、その原油価格高騰の大騒動の最中でも、「リッチ」だの「ハッピー」だの「ビューティフル」だの「夢」だのが時代の表層だったのだと、あらためて思い知ったのだった。
いま、当時とくらべれば原油価格は3倍以上ぐらいか?になり、為替レートは違うにせよ、その影響は深刻になっている。にもかかわらず、リッチやハッピーやビューティフルなんて言葉こそ使わないが、あいかわらず同じような感覚が表面を覆っている。かつてのオイルショックのときは、銀座のネオンも消えたのだが、いまや六本木や原宿あたりのイルミネーションの輝きを日本の輝きであると、マスメディアを通して幻想しているかのようにみえる。
原油高騰の影響は来年には、もっとハッキリ出ようとしている。おれが書くまでもなく、そのことは輝きの幻想のあいだにも報道されている。おれの耳にしたかぎりでも、現在の1バーレル約70ドルベースを90ドルから100ドルを読み込み済みの計画が動き出している。大手メーカーでは広告費の大幅な削減などがあるようだ。広告に頼っている新聞や雑誌やテレビなども、かなり影響があるというウワサを耳にする。
各社の来年度予算が動き出したら、値上がりやコスト削減で、どうなるか。ただただ不安で大騒ぎするのも愚かしいが、現実に、そういう予算が組まれようとしているのに、あいかわらずのリッチでハッピーでビューティフルなバブルな脳天気ヒラヒラフワフワ気分が支配しているのも気持悪いものだ。こういう「気持悪い」は「キモイ」とはいわないのだな。
厳しい現実を認識したうえでの、楽観楽天暢気ならよいが、そうでもなさそうだ。誰かに頼っていれば(国、政府、大企業、よらば大樹で)、なんとなるだろう。韓国じゃ経済悪くなれば政権が交代しているのに、この「自由」で「民主」な国には、それもない。なんか、こういう日本人って、不気味だ。こうして、また何かをキッカケに馬鹿げた大騒ぎにならなければよいが。
とにかく、いま原油価格が高原状態のとき、杉山登志さんの自殺と遺書とオイルショックを思い出してみるのは、よいかも知れない。
そういえば、2007/12/17「高岡さんのミカン。情熱のない世界に青年は住めるだろうか。」に書いた、山口瞳『酒呑みの自己弁護』も同じ年の発行だ。「情熱のない世界」が始まっていたことになるか。
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