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2007/12/21

キモめし、キモ酒、キモ男。

20日「駒沢大学前駅23時56分発。」に、「キモイめし」か「キモめし」にするか迷っている、と書いたら、きのう、ひさしぶりに新宿飲食界下層民から長電話があって、「キモイめしは、ゼッタイやめたほうがよい」という抗議に近い「進言」があった。そして、コメント欄には吸うさんの書き込みがあった。このコメント欄のおれとのやりとりは、ナゼ「キモイめし」なのかを説明する助けにもなるので、ここにそっくり転載しておく。いや、なかなか「キモイ」は楽しい。

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「キモめし」が語呂がいいっすな〜
んで、おいらは「キモ酒」で。

投稿 吸う | 2007/12/20 19:13
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語呂はよくて、「キモめし屋」なんていう言い方ができるし、けっこう雰囲気だとは思うが、「キモイ」につきまとうブラックなニュアンスが失せやしないか、チト考え中。

「キモめし、キモ酒、キモ男」なんて、オンナにもてなさそうだが、洒落ているよな。こういうキモイ洒落が、通じるといいのだが。

投稿 エンテツ | 2007/12/20 21:11
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ん〜なるほどなるほど。
敢えて「キモイめし」ってな言い回しの方が野暮ったくてブラックな感じがするような...
文語で「キモイめし」でも、口語では「キモめし」になるでしょうしね。

投稿 吸う | 2007/12/21 00:33
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コノヤロウ、「文語」だの「口語」だのと、おれの知らない言葉をつかいおって。

ま、でも、そういうことで、とりあえず「キモイめし(キモめし)」とでも書いておくのがよいかなあ。

投稿 エンテツ | 2007/12/21 05:59
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新宿飲食界下層民との電話のやりとりは、こんなアンバイだった。
下層民「先輩、キモイはやめたほうがいいですよ」
おれ「なんで」
民「なんでって、キモイなんて最低じゃないですか」
おれ「なんで」
民「キモイなんて言うやつも最低だし、言われたほうだってものすごく気分悪い最低ですよ」
おれ「なんで」
民「先輩、キモイっていわれたことないんですか」
おれ「それが、どういう関係があるんだよ」
民「おれ、あるんすよ、女から面と向かって」
おれ「それがどうした、なんか嫌われるような悪いことしたからだろう」
民「そういうことじゃねえんすよ。嫌われたとしても、キモイなんてのは、よほどのことじゃなきゃ面と向かっていうことじゃねえんですよ」
おれ「よほどって、どういうことだ」
民「だから、もう二度とツラもみたくねえとか、ぶっ殺してやりたいとか、そういうことですよ」
おれ「おまえは、あのこのあいだの女に、そういわれたのか」
民「そうすよ、面と向かっていわれたんすよ」
おれ「それだったら、おまえだって、いつも女に向かって、ぶっ殺すぞとか、失せろバカヤロウとか言っていたじゃないか」
民「だから、それとキモイはちがうんですよ、ぶっ殺すぞとか、失せろバカヤロウってのは、惚れてるから言うんすよ、本気に殺すはずないでしょ、ウソとわかるでしょ、だけどキモイはちがうんすよ」
おれ「でも、それはお前の勝手なリクツで、キモイと言った女だって、おまえと痴話喧嘩のはずみじゃないのか」
民「いや、だから、先輩、わかってねえな、これだからオジサンは困るんだ。キモイはね侮辱ですよ、ツバかけられたも同じ」
……てな話が延々と平行線のまま続いたのだが。

この男は30歳なかば、もしかするとこの言葉は状況や年齢によって受け取り方に温度差があるかも知れないと思ったし、それならそれで、そこがまたオモシロイ、ますますこの言葉に執着したいと思ったのだった。

こういう情緒的な「新語」というのは、それまでに使われていた言葉が、イマイチぴったりこないという情緒において生まれるとするなら、そこに時代背景や社会背景が色濃くあるだろう。「あんたのことはキライだよ」という意味で、「キモイ」をつかったにしても、そもそも「キライ」にはいろいろなニュアンスが含まれるように、「キモイ」にもいろいろなニュアンスが含まれる。おれはとくに、なんとなく「ブラック」な雰囲気が漂うところがオモシロイと思う。言うほうも言われるほうも、なんとなくブラックなのだ、かっこよく気どっていない。

かつて『大衆食堂の研究』では、「いかがわし度」という表現を、おれとしては「よい」意味でつかったのだが、これはどうやってもよくは思われないらしく、なかなか通じない、わかってもらえなかったきらいがある。それにくらべると、「キモイ」はオモシロイのではないかなという感じがして、アレコレ考えているわけだ。

たまたま社会学系のメーリングリストで、ケータイ小説のヒット話題作『恋空』をネタにする研究会の案内が流れてきた。そこには、「ケータイ小説の文体の稚拙さは批判の的になり、俗流若者論や「学力低下論」と結びつきながら、ネット上のレビューページは罵倒の言葉で大荒れとなる」とある。「しかしそうした不毛な「大人」の議論とはかけ離れたどこかのリアル/ヴァーチャルな空間で、「ケータイ小説」は女子を中心とした数多くの若者たちに、圧倒的な「リアルな共感」を呼んでいる」。まずは「この「ケータイ小説」というサブカルチャーがなぜ現代においてかくも無視し得ない形で浮上しているのか」考えてみようということなのだ。

文学業界読書界あたりじゃ、言葉や文章が生々しく生きている現場を生々しくとらえることをしない。とりわけ近頃は、そういうことができる力のある批評家は少ない。自分たちの文学的価値観でしかみない。リッパな文体、リッパな文章に、ある意味、社会的には幼稚な頭を露呈している。業界内で、自分の批評が受けたか受けないかを気にしているていどの、業界ゴロな批評でしかない。それ自体が、コンニチの文学の現実に生きる力のなさと没落を語っている。『文学界』の芥川賞作家に関する批評鼎談や座談なんてものは、内輪向けの話ばかりだ。このセンセイたちは、「外」の人間もこれを読んでいることを知らないのだろうかと思わざるを得ないほどだ。

ま、それはともかく、「キモイ」といった言葉は、日々めしをくらって生きている、生々しい現場の言葉だと思う。
生々しいねえ。こういう言葉を使う女、好きだねえ。

わかったかい、新宿飲食界下層民キモ男。

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コメント

なるほど。とにかく、この言葉、生きている証拠でしょうが、人によって、かなり使い方や受け止め方がちがうからオモシロイですね。言われて深刻になる人もいるだろうけど。

投稿: エンテツ | 2007/12/24 07:33

「キモい」を使いだしたのは今の20代以下の世代なので、おっさんでもないけど若くもない、微妙なお年頃の30代には、格別の衝撃があるわけです。はじめて「おじさん」と呼ばれたような、そんな感じ。

投稿: でれ | 2007/12/23 23:09

おっ、あんたも言われたことがあるのか。うらやましい。

うふふふふ。

投稿: エンテツ | 2007/12/22 08:43

先生様のようにモテるおいらにゃ「キモい」は愛情の籠もった心地良い言葉。
うふふ...

投稿: 吸う | 2007/12/22 00:46

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