泥酔第四夜、西日暮里で新緑のトンネル。
きのう書いたように、夜は西日暮里で大竹さんが取材する店へ木村さんと押しかけることになった。
昼近くなっても、胃だけがもたれている。ゴロゴロしながら連夜の飲酒に備えて読んでいた山口瞳『酒呑みの自己弁護』。「失われた混合酒」のところで、書き出しに「酒がテーマになっている小説では、O・ヘンリーの『失われた混合酒』の右に出るものはない。」とある。読んでいるはずだが内容に記憶がなかった。本棚から新潮文庫の短編集を探した。一と二があって、その二に収録されていた。短いから簡単に読めた。それで飲む準備は整った、古書ほうろうに寄り、クドウヒロミさんの『モツ煮狂い』を買おうと、チョイはやめに出た。
クドウヒロミさんとは、2007/07/01
「鳩の街、玉ノ井で「酒とつまみ」泥酔」に書いたように、6月30日に一緒に飲んでいる。
西日暮里の駅についたが、まだ胃がもたれていて、『失われた混合酒』を読んだぐらいでは備えが足りないような気がする。売店でソルマックを買って飲む。
18時チョイすぎ。古書ほうろうのドアをあけると、すぐ正面の通路の入り口で本棚に向かって本を手にしているオンナが1人。おお、絵になる景色だ。すぐ木村さんとわかる。木村さんも『モツ煮狂い』を求めて来たのだという。一緒に、西日暮里駅の反対側にある、19時に待ち合わせの店へ。
以前に、大竹さんともここでは飲んでいるが、裏通りの場末感タップリの韓国家庭料理の店。大竹さんはすでにいて、取材のOKをとっている。ある週刊誌の連載だ。地元民の南陀楼綾繁夫妻も誘ったが忙しくて都合つかず。
ってことで、約24時間休憩した前夜の続きのような飲みが始まる。メインつまみはホルモン鍋、ほかにチヂミやレバー刺しなど。前夜、三次会まで行った大竹さんに、そのスゴイ結末を聞きながら、まずは生ビールから飲み始める。
のち、マッコリ、レモンサワー。最初はローな気分でゆったりしていたが、しだいにサードな気分ぐらいになる。ま、大竹さんはシゴトで来ているわけだから、なんとなくシゴトまわりの話になる。お互いのシゴト、ギョーカイ。飲み屋や料理のこと。約一年前に編集長がかわった某グルメ系雑誌の交代劇のウワサ的真相ナノヨナノヨネノネノネ比較文化論的に編集者なるものをツマにする。いずこもおなじ、●能だが調子のいいやつが出世して、だんだんおかしくなるコンチニ的構造的病理の深層にあるものは何か。なんてことから、しだいに昔的つれこみ旅館の良さに関する考察および鶯谷におけるドトールの街的おもしろさの地理学的考察へ。では、もう一軒いこうか。と、21時ごろ出て、ガード下の●多八へ。
ちょうどテーブルが一つあいていた。3人ともホッピー。ここで一気に飲みギアはトップへ。前夜の私小説的アブナイオトナの続きへ話は転がりだす。そうそう、木村さんは、きのうおれが書いたあたりのことは酔って覚えていないという。うふふふふ、いいこと聞いちゃったぞ。
とにかく「失われた人々 旅情編」というかんじで、男の無計画一人旅あるいは計画的旅のトキメキ、漁港旅の楽しみなどなどから、しだいにオトナ度は深まり、据え膳もくわない近頃の若い男の心理学的生理学的分析、なになに不倫旅とな、誰だ、そんないいことをしているやつは!そして文化人類学的考察としての、新緑のトンネルをぬけて列車は走る、オンナはオトコを追いかけ、オトコはオンナを追いかけ、あるいはオトコとオンナが手を取り合って、行くは、こういうときはなぜか九州じゃ私小説にならないのよ、やっぱり北海道、それも北端か東端をめざして……ですよ。ああ、残念ながら、ここに赤裸々に書くわけにはいかない。大竹か木村の小説を楽しみにしよう。
この日記のタイトルに使えそうな言葉がつぎつぎに飛び出した。ナントカ~、とおれか大竹さんが叫ぶと、「それ、タイトルになる!」というぐあいに、何本かタイトルがあがったのだけど、メモをしなかったから、「新緑のトンネル」しか覚えていない。これだけじゃなんだかわからん。いや、3人にはわかるのだが。
ま、ワレワレはアブナイオトナの話をしながらも教養ある人物であるので、コトバアソビとして、きわどい話をして楽しんでいるだけなのですな。どーかみなさん、ご心配なく。なんて書いても、誰も何も心配してないか。
しかし、これが、じつに清々しく楽しい酒なのだ。うーむ、しみじみ私小説的に深い、まさにオトナの酒ですね。かくて、23時になり店のひとに追い立てられながら、まだ粘って、ついに腰をあげる。
またやろうと、西日暮里の駅のホームで、山手線で新宿へ向かう、大竹、木村と別れを惜しみ。彼らが電車に乗って去ったあたりまでは覚えているが、京浜東北線はまたもや遅れが出ていて、それからが記憶がモヤモヤモヤ……。今朝メールを見たら、帰ってから愛のメールを一本していた。愛してるよ~、がんばれよ~、待ってるよ~。
木村さんから、このブログに何度か登場している、岩手は盛岡のリトルマガジン『てくり』の最新号をいただいた。この夏、盛岡を訪問したときにサキさんに案内されて行った「carta」の特集なのだ。タイトルは「cartaからの手紙」。で、この雑誌をおれが飲みながらパラパラ見ていると、「ねっ、ここを見て」と木村さんが開いた、そこには、盛岡へ単身赴任中のご主人がニコヤカな顔で。これは、「あなたは、なぜここにいるのですか? 東京ではなく、富良野でもない。盛岡で働き、暮らす理由。」というコーナー。木村さんのご主人は、なかなかよいことを言っている。「僕が、いま、盛岡で暮らしているのは偶然なのですが、現在の年齢で来られたことが良かった、そう感じています。落ちついた大人の街だから、若い時では分からなかったかもしれない。盛岡という場所の面白さが…。」おれは短い滞在だったけど、同感。しかし、このご主人の写真を、すぐ見せたがる木村さん、ああ、離れて暮らすオンナ心の切なさよ。
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コメント
おお、神田森莉さんにコメントをいただけるなんて、うれしいです、ありがとうございます。
ほんと、すごいものがありますね。しかし社交ダンスまでやっていたとは……。大きなダンスホールがあるから、そこの関係者だろうか。おれは全時間帯を知らないけど、ほかの時間帯たとえば早朝とか知っているひとの話を聞いたりすると、どうやら時間帯によって、変化が大きいようで、でもどの時間帯もオトコとオンナの何かがあって。こういうところが山の手の駅そばにあるなんて、あのラブホ街も含めて、素晴らしいですね。もうすごく面白い。このドトール、漫画ネタになりませんかね。
投稿: エンテツ | 2007/12/16 21:23
こんばんは。
鶯谷のドトールは、たまに入るんですが、すごいですねえ。
熟年カップルが店のBGMに合わせて、社交ダンスを踊っていましたよ。女性はプロの方だと思うのですが。
投稿: 神田森莉 | 2007/12/16 19:30