壊れゆくなかで。
スキャナーが壊れた。困るなあ。新年早々にパソコンが壊れたばかりなのに。今年は、壊れる年なのだろうか。そういえば、パソコンとスキャナーのほかにも、壊れたものがあるな。脳みそは酒で壊れているし。
パソコンが壊れてデータのほとんども壊れたのだけど、昨年末に熱海をうろついたときの画像は、デジカメにまだ残っていた。
このなかに、男と女の関係が壊れる瞬間の銅像があった。蹴りをいれる貫一、「あれ~っ」というかんじのお宮。いかに名文句が残る名場面とはいえ、こういう男女のバイオレンスな銅像はめったにないのではないだろうか。
この前で、お宮は悪くない、では貫一が悪いのか、しばし議論になった。まじめにやる議論じゃなく、ほんのお遊びだが。その間に、若い女たちが来ては、記念撮影をして去る。「きゃあ、蹴る貫一さんって、かっこいい」という声はなかったが、「お宮さんって、かわいそう」という声も聞こえなかった。みな、とてもうれしそうに記念撮影をして行く。ま、たかだか小説の舞台にすぎないが、熱海の「観光名所」なのだから、たいしたものだと、なんだかわからん感心。
おれは、このあと、お宮と貫一は、たぶん別々だろうが、何を食べたか気になった。想像してみたが思いつかない。アジの開きあたりだろうか。キンメの開きじゃないよな。貫一は酒をあおったにちがいないと思った。酒をあおり、お宮の記憶を壊そうとしたにちがいない。でもパソコンじゃないから記憶を完全に壊すのは難しい。かわりに性格が壊れ、復讐の金色夜叉、鬼の高利貸になる。すごい銅像だ。拍手。
酒で壊れた脳に、さらにうまい酒「秘田」(この生酒、うまい、かなり好みな芳醇)をそそぎ込み、考え、「観光」の原稿を書き出すタイトルを決めた。タイトルが決まれば、もうできあがったもおなじだと、また、さらに呑む。べつに消したい記憶はないし、蹴られたり蹴ったりの女の記憶も消すつもりはないが、酒で壊れた脳のほうが勝手に消してしまう。とりあえず、いま思案の末に決めた原稿のタイトルだけは、消えないうちに、メモ。
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