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2008/02/14

いい酒いい店って? ゴキゲンが大事。

某誌の編集者と仕事の件でメールのやりとりをしながら、ついでに、こんなムダ話をした。

編集者…………………………………………

こんにちは。また飲みましょう。安くてまずい店なんて遠藤さんと以外いけませんね。池袋北口からまっすぐ行った(エロ映画の15メートルぐらい先だったと思います)酒屋みたいな立ち飲み屋知ってますか? トイレからションベンのにおいがぷんぷんして店のアンちゃんも普通でなく無愛想で客もおかしい。あんなにまずい酒はあまり記憶にありません。ウーロンハイもめちゃくちゃ濃い。もちろん清●の日本酒もまずいですが、世界が違います。遠藤さんはたまにはうまい酒を飲んでいるのですか?

おれの返信……………………………………

池袋の、その立ち飲み知りませんね。そのあたり、ときどき行くけど、あるのも知らなかった。こんど行きましょう。

> 遠藤さんはたまにはうまい酒を飲んでいるのですか?

それはもう、このばあいの「うまい酒」って、高いよい酒ということでしょうが、清酒でもワインでもウイスキーでも、おれは嫌でも向こうから近づいてきますからね。イヤイヤ呑むわけです。とくに外酒のばあいは、高いよい酒を飲ませる店というのは、だいたい店の雰囲気が、肌にあわないですね。酒はよくても、ゴキゲンになれない。ゴキゲンになれなければ、酒呑んだことにならない。

編集者…………………………………………

いい飲み屋ってなんですかね。まずい飲み屋はめったにない分、記憶に残りのちのち楽しい記憶に熟成したりしますし、笑いながら名店に認定でしたりしますね。
私はもともとつまみは何もなくて大丈夫なので、つまみのうまい店なんて興味ありません。
寒い店は行きたくない、醤油差しやブルドックソースがべとべとになってるような店は嫌ですね。
頭悪い店主と話すのも優越感に浸れていいわけですし、そもそも飲み屋のオヤジに知性なんてもとめていない
自分が不快な思いさえしなければだいたいいい店です。

今度安い店で議論しましょう。

…………………………………………

こういうムダな会話をやりながらできる仕事は楽しい。たいがい、よい仕事ができる。なので、考えてみた。

飲食で大事なのは、ゴキゲンになれるかどうかだと思う。

2008/02/08「肉で盛岡の肉を思い出す。」に書いた『ミーツ・リージョナル』2月号肉特集だが、編集肉姫様が編集前記のタイトルで「すべての肉はゴキゲンに続く…」といったワケは、その本文にある。

つまり彼女が取材で訪れた焼肉屋で、「「肉は切り方も大事なんですよね」という私に「そんな薀蓄なんてゴキゲンの前では何の意味も持たへんねや」とお母さんから〝肉パンチ〟をズドンと食らわされた。/ どんな美味しい肉も、その場にゴキゲンがなければ2度目はない。」

飲食の本質ではないだろうかと思う。

関係ないかも知れないが。たくさんの飲食店を食べ飲み歩くほど、2つの対極にむかって、言うことがわかれるようだ。

一つは、これが一番おおいように見受けられるが、おれはたくさん食べ歩いているから、いい店うまい店を知っているゾ、あそこが聖地だ、ここが一番だ、ここを知らなきゃバカだクソだ……とのたまう。もう一つの対極は、あまり見かけないが、あそこにはこれがある、こっちにはこれがある、おれはこんなに知っているぞという感じで、序列はつけずに、それぞれについて能書きを開陳する。

もちろん、この両方をやるひともいるし、まったくちがう軸もあるのだけど、よく見受けられるこれらは、どちらも一つのことの表裏だ。つまり、おれはたくさん食べ飲み歩いているということを「正しさ」の根拠や権威にして、述べている。

本質を考えていない点は共通する。本質と向かい合うには、アイデンティティが必要だ。

日経朝日読売の「三強」が恥じも外聞もなく手を組んで始めた「新s あらたにす」に08年02月11日の「編集局から」の読売の欄には、「最近のミシュラン騒ぎもそうでしたが、日本人はランキングが大好き。文化面の企画「平成を歩く」は今回、この現象を考えてみました」とある。

「日本人はランキングが大好き」とのことだが、ランキングというよりは序列が好きで優劣感が強い、という感じではないかと思う。その結果がランキングになる。

自分と同じ人間はいない、自分は1人しかいない日本の人口1億数千分の1人であると、想像するだけで不安になる。地球上に数十億人いても、みなちがうのだというところから想像をスタートできない。みなと何か共通するところからスタートしようとする。「単一民族幻想」と似ている。

ある種のグルーピングとランキングのなかにおさまっていないと不安である。うまいもの好きというグルーピング、あるいはラーメン好きとか、おでん好きとか、下町酒場、立ち飲み、大衆食堂まで……。そのなかの自分は何軒知る人間であるとか、「聖地」を知る人間であるとか、「正統」を知る人間であるとか、そういう自己認識の方法なのだ。そしてアイデンティティが不在のゆえに、情報にヨワイ。とりわけ流行の「グルメ」には、そういう傾向の人たちが群がりやすいようだ。

自分がゴキゲンならいいんだよとか、自分がどうゴキゲンになれるかだよとか、さきのお母さんのように「そんな薀蓄なんてゴキゲンの前では何の意味も持たへんねや」と、なかなか言い切れないし、そこから、なかなかスタートできない。

いい店ってなんであるか。こんど安い店で議論しましょう。

ところで、この「持たへんねや」だが、これを文節にして一括変換できない。関西のひとが使うワープロソフトは、どうなっているのだろうか。肉姫様、こんど焼肉くいながら教えてください。

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コメント

メールします〜

投稿: 吸う | 2008/02/16 11:14

書き込みに酒のニオイがしていた。

ぐふふふふふ、来週あたり一杯。

投稿: エンテツ | 2008/02/15 19:10

うはははっ!
このコメント書いた記憶全然無い!

書き込んだ時間にはすでに布団に潜り込んでたはずなのに、いつの間に書いたんだろ。
一度、便所に起きた記憶がうっすらあるけど...

投稿: 吸う | 2008/02/15 13:15

おやまあ酒の呑み方が足りないのか、そのようにキマジメに。「読み」まちがえじゃないの。

これはビンボウ人同士の自虐的会話(仕事の合間のムダ話)を楽しみながら「いい店いい酒」の話をしているんじゃないですか。「キマジメ=頭悪い」ということなら、「この編集者は頭悪いと思うのは」、あんたが頭悪いということになるだろうけど、そもそも、そういう話をしているんじゃないんだよね。もっと酒を呑んでから読みませう。

投稿: エンテツ | 2008/02/15 07:22

この編集者は頭悪いと思うのは、おいらが頭悪いからですかね?

投稿: 吸う | 2008/02/15 04:04

この記事へのコメントは終了しました。

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