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2008/03/20

10年前の『町雑誌 千住』のオコトバ。

この本を見て、お店に出かけられる皆さんにお願いがあります。この号に、町雑誌千住編集部は総力で取り組み、私たちが本当にいいと思い、皆さんに知っていただきたいと感じたお店に取材をお願いしました。宣伝などは一切ありません。なかには夫婦だけでやっておられたりして、お客様が増えても困る、誠意のないお客に物見遊山で来てもらっても困ると取材を断られたお店も多く、そこを押してお願いし協力いただいたお店も少なくありません。千住には良いお店が本当に多いのですが、良いお店は良いお客との二人三脚でできるのだと今回多くのお店から教えていただきました。もうすでに二人三脚ができているお店も多いわけですので、あらためて出掛けられる皆さんは大人として誠意と節度をもってのれんをくぐっていただきたいのです。千住のお店の多くは人にやさしく、職人気質ではあっても、初めてのお客様も暖かく迎えてくれることと思います。その暖かさに甘えることなく、私たち客の側も誠意ある客になろうではありませんか。どうぞ私たちの趣旨をご理解いただいた上、本誌をご利用いただきますようお願いいたします。

……これは、『町雑誌 千住』3号の本文1ページめの扉にある。

1997年4月15日発行。特集が「千住名物 食べ処飲み処 part1」だったから、どうしても、こういうことを書いておきたくなったのだろう。おれが、当時、『町雑誌 千住』の編集発行のために一生懸命だったサトコさんと初めてあったのは、この号が出たあとぐらいだったのではないかと思う。

いまや下町酒場巡りの「古典」「バイブル」ともいうべき大川渉さんたちの『下町酒場巡礼』が四谷ラウンドから発行になったのは、翌年1998年10月。

思い返せば、まだ1997年4月ごろは、コンニチほど「下町」や「大衆酒場」は注目をあびていたわけではないが、それでも、このようなことを書かなくてはならない状態はあった。

その後、『町雑誌 千住』の編集制作に関わるみなさんとは、一緒に仕事をする機会もあったが、ようするにワレワレという言い方をするが、ワレワレは店と客が二人三脚でつくるような店と、そういう店がある町の魅力を伝え続けたいという願いがあった。こういう生き方、こういう在り方を、伝えていこう。そのためには、町や店を紹介し広く知っていただかなくてはならない。いま見ても、その記事には、「レトロ」のニオイすらない。町に生きる姿があるだけなのだ。そういうことだった。

しかし、事態は、ここに書かれた懸念が拡大する方向へ転がった。「下町」や「昭和」をキーワードに、「大衆酒場」「立ち飲み」といった細分化されたカテゴライズがすすみ、たえず新しいコトやモノを求め集める消費主義そのままが、この分野にもおよんだ。大人でもなければ誠意もない節度もない、ただの消費主義のカタマリが、カテゴリーごとに、まだ知らない入ったことのない店を「開拓」し、それをインターネット上に開陳し、誇らしげにしている。そこには、すでに、二人三脚でつくる店の姿も、そういう店がつくる町の姿もない。えらそうな、あるいは通ぶった、あるいは人情家ぶった、単なる情報の蒐集が、手軽なデジタルな写真と文章で並んでいるだけではないか。

で、店や町は、彼らのように「腐敗」するだろうか。おれは、そうは思わない。

さきほど用があって、ひさしぶりにサトコさんの元気がはじけるような声を電話で聴きながら、そう思った。そして、この雑誌を引っ張りだして見ているのだ。

現在の「町雑誌 千住」のホームページ…クリック地獄

しかし、近頃は、自分が「大衆食堂」だ「大衆酒場」だといっているのが嫌になるぐらい、大人でもなければ誠意も節度もない客が増えた。でも、いつか、彼らは去る。ブームというのは、そういうものだ。

いま気がついた、あれから10年たったのか。

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コメント

消費主義者さま

コメントありがとうございます。お怒りのようですね。

ま、人間、矛盾にみちた不条理な存在で、とかく現代はアンビバレンツに巻き込まれながら、よりよい選択をしなくてはならないこともあり難しいのですが。

だから、怒りに任せた議論もときには疲れないていどには必要かと。

コメントに対しては、本文のほうに書かせていただきました。悪しからず。
https://enmeshi.way-nifty.com/meshi/2008/03/post_1e71.html

投稿: エンテツ | 2008/03/23 12:25

自らが本媒体やネット上で情報発信していながら、「消費主義者」などという古くさい言葉で、いったい誰を攻撃しているのですか? 「大人でもなければ誠意も節度もない」客って、同じ店に貴方の目線からして気分が悪い客がいると、そう思うだけなんでしょう?
失礼ですが正直、大衆食堂を「金稼ぎのネタ」にしている人間に偉そうなことをいわれたくないですね。あなたよりは、たとえミーハーであれ「消費主義者」のほうがマシだと私には思えます。「思わぬ「悪事」に利用される」ことを望まないなら、まずは書かないことです。自明でしょう。

投稿: 消費主義者 | 2008/03/21 17:26

がつん!とくるお話です。
単なる興味本意から土足で足を踏み入れ大迷惑しかもフォローなし。いつでもブームなんてそんなものですね、しかし。

投稿: おけい | 2008/03/21 12:12

ま、自分のやっていることが、思わぬ「悪事」に利用されるってことはよくあることなので。

それでも舌打ちしながら、ときには厚顔無恥をからかいながら、反面教師としながら、続けるこってすね。引いてしまったら、ますますヤツラの天下だから。

投稿: エンテツ | 2008/03/21 07:10

むぅ〜身につまされる話で...
好むと好まざるとに関わらず、消費主義者どもに情報提供してしまっている現状の我がブログも、そろそろ引き際ではないかと思っているんすよね...

投稿: 吸う | 2008/03/21 01:16

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