八戸の酔い方。
昼すぎ。ふう、はあ、ほっと一息、一杯の酒、といきたいところだ。
やっと、なんとか来週から今月末までの目安や段取りがついた。連休を前にしてか、みなあせりまくっているからなあ。しわよせは、おれのような下積みフリーに。そりゃまあ、長年こういう生活をしているからなれてはいるが、近頃は、なんてのかな、「仁義」なきやりかたというのか、そういうものがまかりとおって、ふむべき手順もふまないで先を急ぐ。若いアタマのよい連中が、それが要領のよいやり方だとおもっているらしい。きっと、上司が、そういうふうにやっているのだろう。もっと、愚直にやることを覚えやがれ。各駅停車でいかなくてはならないところもある。仕事なんてのは、宇宙戦艦ヤマトなワープで結果だけ得るなんてことはありえないんだよ。ああ、今日の高千代酒造の蔵開き、ついに行けなかった。と、まずはグチだが、でも、けっこう片付いて、かなりよい気分だ。今週からは、けっこうユトリだな。おれって、ようするに、口は悪いかもしれないが、優しいんだよ、親切なんだよな。
そのあいだに、盛岡のサキさんから、メールで画像が届いたり、宅急便で紙焼きの写真ほか、うまいケチャップなどが届いたりした。木村衣有子さんのブログ「パール日記」を見たら、八戸旅行のことが書いてあった。楽しかった旅の気分が持続する。…クリック地獄
先日、旅行に着ていったものを洗濯したら、シャツの胸ポケットからクチャクチャになった紙が出てきた。ソッと復元したら、ハシ袋だった。その裏に、「エンテツさん、日曜日、7時にホテルのロビーで」というようなことが書かれてあるのが、やっと読めた。あれっ、最近は愛人と会ってないのにオカシイなとおもったら、これは、どうやら、12日土曜日の夜、4軒入ったうちの、たぶん最後の呑み屋かその前あたりでだろう、翌13日の早朝に八戸漁港の朝市へ行こうということになって、だけどおれはかなり酔っていたから忘れないようにと、木村嬢が書いてくれたものとおもわれる。
だけど、おれはすでにかなり酔っていたのだから、そんなこと覚えていないわけだ。そのシャツを着たままベッドに入り込んで寝て、翌朝は寝坊して木村嬢に電話で起こされ、着替える間もなく、簡単にツラを洗って出た。そのままアチコチまわり盛岡まで行って呑んで、最終の新幹線で帰ってきた。ハシ袋は、ずっとシャツの胸ポケットに入ったまま一緒に旅をしたのち、洗濯機にほうりこまれたのだな。
ま、そういうわけで、サキさんから送られてきた、いちばん上の画像。これはたぶん12日の17時開店早々に入った一軒目、昭和通りという、どうってことない横丁のどうってことない居酒屋「弁慶」で呑んだあと、二軒目のローれんさ街の「おかげさん」へ行く途中とおもわれる。
五番街という、昭和通り側の入り口には「ガールハント」なるサロンがあって、スナックなどがならぶ、昼でも薄暗いヒジョーに狭くいかがわしい魅力的な路地をぬけ、続くたぬき小路に入ったあたりだ。19時ごろ。すでにおれは酔っている。うーむ、しかし、おれには、こういう景色があっているなあ。一人だったら、このへんでフラフラ入ってしまうところだ。
で、つぎに行った「おかげさん」のことは、後日、ここのせんべい料理を紹介しながら書くから、とばして、3軒目。2008/04/14「一ノ関、八戸、盛岡、朝市から夜中泥酔まで。」に書いた、バー「花」だ。ここがモンダイなのだ。記憶が、ところどころある、それぐらい印象的だったのだな。
まず、たしか、どこかはずれのほうだった。どこか通りからはずれて、住宅街のような横丁を入ったところ。ほかに商店はなく暗いなかに2、3軒、ドアー周辺にだけ灯りがついている酒場があった。その一軒。この入口が、なんてのかなあ、たしか銀色のような造りで、なかにスパンコールだらけのロングドレスを着た女装の男がいそう。と、おれはビビビとかんじた、そういう風俗営業店な佇まいだったとおもう。
しかし、なかに入ってみると、きわめてオーソドックスなバーなのだ。シェーカーをいくつも大事そうに並べたカウンターの向こう側の、きちんとチョッキを着たバーテンダーは18歳のときからこの道で40年とか45年とか。ほかに客はいなかった。おれたちは、それぞれ気に入りのカクテルや、バーテンダーおすすめのカクテルを頼んだ。
おれは、ドライマティーニ。キーンと冷えたグラスにステンの楊枝をさしたオリーブが入っていた。おれは、よろよろする頭で山口瞳さんの『酒呑みの自己弁護』にある「ドライ・マルチニ論争」をおもいだしながら、山口瞳が呑むように呑んだ。つまり先にオリーブをたべ、その楊枝をカウンターのうえに置き、一気に呑みほす。うまいっ。
ここで、おれは、おれだけがカウンターのなかに入ってバーテンダーと一緒に写真を撮ってもらったと思い込んでいたが、サキさんから送られてきた紙焼きを見たら、そうではない。おれがバーテンダーと肩を組んで写っているほかに、ワレワレ3人が、カウンターのなかで写っているものがあるのだ。ということは、ワレワレがなかに入って、バーテンダーを外に出して、写真を撮らせたということになる。いやはや、バーテンダーの聖域であるカウンターのなかに入るなんてことも、できることではないのに。たぶん、こんなことは二度とないだろう。おもてからはうかがい知れない意外なバーで、よい楽しい記念になった。画像は、おれのデジカメで撮ってもらった。撮影時間22時22分。ご満悦。
そのあと、おれが泊まっていたホテルにもどる途中にある、みろく横丁を、そのまま通りぬけられるわけがない。ここで入った店の名前は覚えていない。すでに書いたように、韓国人のビジネスマンがいて、おれはこのひとが持っていた札を撮っている。この札、サキさんたちの話だと、おれにくれると言ったらしいが、彼はちゃんと取り上げて、おれたちより早く店を出たということだ。この札の撮影時間が0時1分。おれは、まったく記憶がない。ほかの写真に写っている木村嬢も、酩酊の表情。おれは取材で朝6時にホテルを出て、途中すこしだけホテルにもどって横になったが、もうヨレヨレだった。
さきほど、故郷のクボシュンさんから、電話があった。高千代酒造の蔵開きは、行けない。残念。来月の五月祭りのときには行きたいという話をする。
そうそう、木村さんのブログには、「『天然生活』6月号(地球丸)の「私の街歩き お気に入りの場所へ」で、「早稲田の好きな場所×3、『ボワ・ド・ヴァンセンヌ』『古書現世』「早稲田松竹」の紹介をしました。52,53ページに掲載されています。」とある。あのエコシャレな雑誌に、中央線文化人気取りカルチャー系古本屋ならともかく、どんな意味でもコシャレ系とはいえない古書現世が! 木村さんのワザも含めて、見なくては。
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