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2008/05/07

5月7日はコナモンの日というわけで、せんべい汁、はっと、やせうま。

きょうは「コナモンの日」。コナモンなんぞは毎日のように食べているから特別のことはなく、しかも、いまやどちらかといえばコナモンのほうが「B級グルメ」や「ご当地グルメ」で話題になるから、むしろ「コメモンの日」があってもよいぐらいだ。だけど、正確には「コナモン」と「コメモン」が対抗関係のわけではなく、コメのコナモンだってある。

伝統とか歴史からすれば、白米原理主義のおかげで、コナモンは冷や飯ぐいをさせられてきた。たいがいは白米食の「代用食」といわれ、一段も二段も低くみられてきたし、いわゆるナントカ流の板前がふんぞりかえってきた伝統的な日本料理からは蔑視され相手にされず、食べるほうも「そんなもん」「へんなもん」はビンボー人が食べるものと卑下してきた。そういう意味では、「下品」とみられ、まっとうに語られることがなかった汁かけめしとおなじような境遇と運命にある。だから、「コナモンの日」は、騒ぐだけじゃなく、そういうことを考えてみるのもよいかな。

食べものは食べて「うまいかまずいか」あるいは「どううまいか」「どうまずいか」だけであり、そこに「優劣観」を持ち込むなんざ、最低のことだ。しかし、飲食のことでひとの上に立ちたい連中は、あとをたたず、グルメぶった通人ぶった権威主義は、あいかわらずだ。

「このへんで、料理を通人ごっこの話題にまかせっぱなしにしておく態度を改めて、われわれはもう少しまじめに問題をとりあげてもいいのではないかと提言したい。」と江原さんが『庖丁文化論』に書いたのは1974年のことだった。

そして、「あれから30年たとうとしている。すでにカレーライスまでがラーメンまでが、「通人ごっこ」の、いまふうには「グルメごっこ」ということになるだろうがその、餌食になってしまった。「グルメ」とは、食や料理を「まじめ」に考えないひとのことだったのか?」と、おれが、いまでは当ブログの「「日本料理は敗北した」か?」に書いたのは2002年12月13日のことだった。いまや、さらに、大衆食堂、定食屋、大衆酒場、立ち飲み屋、あらゆる「ジャンル」に、そういうビョーキがはびこっている。

コナモンの日を前に、たまたま東北取材があって、いろいろなコナモンに出会った。とくに何度でも書くが、八戸のせんべい料理には、ビックリだった。さらに、つい先日4月30日には、世田谷区経堂の太田尻家で、家長考案の九州地方の「やせうま」を「刺身」で食べるというビックリなコナモンにまで出会った。

Kona_sebeisiru_hatinoheここに掲載する画像は、上から順に八戸市の居酒屋「おかげさん」の「せんべい汁」(4月11日撮影)、一ノ関市の「蔵元レストランせきのいち」の「はっと膳」についた「はっと」(4月11日撮影)、そして太田尻家の「やせうま」の「刺身」(4月30日撮影)。

せんべい汁は、きのうの画像を見てもらえばわかるが、「汁」というが「鍋」料理だ。しかし、いまではどうか知らないが、八戸で乗ったタクシーの、おれと同世代のドライバーの話では、むかしは単なる汁の具だったということだ。家庭ではせんべいを切らしたことがなく(中学生のころまで自分チの囲炉裏で焼いていた)、おやつでも食べたが、汁のなかに入れるか、器にせんべいを割って入れ、汁をかけて食べたりもしたそうだ。だんだん進化して、いまでは、たいがい「せんべい汁」といえば、鍋料理らしい。

Kona_hattosiru_sekinoiti「「はっと」は、日本海側では体験したことがないから知らないが、宮城県、岩手県、青森県、この地域で日常の料理だった。地域によって、名前は異なるところがあるようだが、小麦粉をこねてのばしたものだ。詳しく把握できていないが、小麦粉をこねて、ちぎってのばすのか、のばして切るのか、両方ありそうだ。そのものは、埼玉県北部や群馬県の「おきりこみ」と似た印象を受ける。これを、ゆでずに、そのまま汁にいれて煮込む方法が一般的らしい。となると、すいとんやほうとうにも似ている。が、うどんのように、ゆでてから汁とあわせる方法もあるらしい。ま、こういう大衆の日常の料理は、それぞれのやりようなのだな。

せんべい汁もはっとも、だしのきいた汁と小麦粉の味や食感のからみが決め手のようだ。

Kona_yaseuma_ootajiri「やせうま」は、大田尻家の家長にきいたところでは、大分の「郷土料理」といわれているけど、彼の郷里である熊本でも食べていたし、九州の広範囲で食べられているらしい。そのものは「はっと」に似ている。ふつう地元では、ゆであげて、砂糖と黄な粉をまぶして食べる。それを家長が工夫して、ゆであげたそれで薬味をくるみ、ごま油をたらした醤油や酢醤油につけて食べる「刺身」にした。このうまさには、おどろいた。

とりあえず、コナモンの日のきょうは、こんなところで。

いやあ、ほんと、生きている人たちの呼吸が伝わってきそうな、それゆえジャンクでアナーキーでソウルフルな生活のなかの料理は、奥が深くおもしろいですね。

連休あけのきょうは、メールや電話のやりとりだけでも忙しく、連休中の連続泥酔ヘタリのタタリもあって、とにかくいろいろ片づけなくてはならない。

最後の画像は、八戸の片町朝市で売っていた白せんべい(「白せんべい」は、せんべい汁につかうせんべい)と生のはっと(4月12日撮影)。
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八戸せんべい汁研究所…クリック地獄
日本コナモン協会…クリック地獄

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