大阪・庄内のパセミヤで。
3月6日、「場所の力」シンポジウムの前日、午後2時ごろ五十嵐さんとパセミヤで待ち合わせた。阪急宝塚線で十三から二つ目の庄内は、新大阪から行きやすい。昨年8月に行ったパセミヤだが、またこんなに早く機会があったのは幸運だった。
よっちゃんには前もって知らせておいたら、最初に出してくれたのは、画像の、ごぼうの梅(梅酢)煮だった。まだ湯気がたっていた。
おれにとっては、ごぼうの料理は、難しい一つだ。ごぼうの味が、とれた土地や土によって、かなりちがうことがあるし、複雑で、よくいわれる「それ本来が持つ味を生かす」といったところで、ごぼうの味のどこをどう生かすかの判断が難しい。生を水にさらしただけで、味が変ってしまうものを。…とかとか、リクツをこねまわすと、余計に難しくなる。なので、たいがい、ごぼうの単品料理は作らない。
このごぼう梅煮は、なるほど、このようにつくればよいのかと思わせるものがあった。柔らかな優しい味わいのうちに、じつに微妙に、ごぼうの旨みとえぐみ、そして香りをコントロールしている。こうは、なかなかできんなあ。甘さも何もかも控えめの菓子のような味覚。
さらに、煎り酒をつくり、それを冷奴にかけて食べるようにしておいてくれた。これは、めったにつくれない。なにしろ、いい清酒を料理につかうのだからね、しかも投入した量の半分ぐらいに煮詰めるのだから。おれのように酒に意地汚い男にはつくれない。
そもそも、よっちゃんがパセミやのよっちゃんであることを知ったのは、おれが2008/05/02「江原恵さんの「煎り酒」そして「醤油とのあいだ」。」で、「検索で見つけ、まだよく目を通してないのでまちがっているかも知れないが、おそらく料理のプロと思われる方の、なかなかおしゃれなブログ「Art de Faire」の08年4月15日は、「醤油と煎り酒のあいだ」というタイトル。…」と書き、そしてよっちゃんに、そのときは「zenzo」というハンドルネームで、コメントをいただいたからだった。そういう記念すべき煎り酒なのだ。
煎り酒は、2008/05/02にも書いたように、醤油が普及する以前の刺身の食べ方で、江原恵さんの『料理物語・考』(三一書房)にある、江戸初期の料理本「料理物語」にしたがってつくったそうで、よっちゃんは、その本も店に持ってきていた。
もちろん当時と、酒も何もかも材料のつくりがちがっている。江原さんも、そのことで苦労しながら復元していたようだが、おれの感じでは、よっちゃんのは江原さんのより昆布だしの味が効いていたような印象だった。これを、ふきよせのような豆腐にかけて食べたのだが、これがまたうまい。ほんに、柔和で優しい味わいで、うまかった。
なんの料理でも梅干を用いるばあいは、それで何をどうコントロールするかの微妙な、まさに「塩梅」が必要のようだ。
とにかく、よっちゃんのブログを見てもわかるが、ほんと、器用だし、研究熱心だ。
ほかに、ネギたっぷりのお好み焼きと、今回はやきそばも食べた。おもしろいことに、お好み焼はよっちゃんがつくり、やきそばはおかんがつくるのだ。そういうふうにやってきたらしい。
おれと五十嵐さんは、それらを食べながら、生ビール、赤ワイン、クロアチアだかどこかの酒、焼酎、清酒を飲んだ。そうやって、いちおうシンポジウムの打ち合わせなどもやり、とにかく17時ごろまで、よく食べよく飲んだのだった。そして、それぞれ「夜の部」へと流れたのだった。
よっちゃん、遅くなりましたが、ありがとうございました。また大阪へ行く機会があったら、寄らせてもらいます。
お好み焼パセミヤのサイト…クリック地獄
関連
2008/08/29
大阪・庄内、お好み焼「パセミヤ」。
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コメント
よっちゃん、どうも、お世話になりました。
楽しくて、よく飲んで、記憶もあやしい状態でした。
ごぼうの梅煮は、そうなんですか。ほんと、見かけによらず繊細なヤロウで、悩ましい。
煎り酒は、あの豆腐との相性も、よかったですね。チョイと関東じゃ食べられない味。ま、むかし通りなんてことはありえないから、イマにどう生かすか、生かせるか、なんでしょう。
米の味だって、私がガキの頃とは、ずいぶん違っているし。梅干だって、私がガキの頃の、干からびたような梅干なんか、ほとんど見ませんもんね。
ま、とにかく、またお会いできるの、楽しみしています。
投稿: エンテツ | 2009/03/20 19:21
こちらこそ先日はありがとうございました。
エンテツさんと五十嵐さんの
刺激的な会話に混じることが出来て
楽しかったです。
またお会いできる日を楽しみにしています。
五十嵐さんにもよろしくお伝えください。
ごぼうをごぼうの味のまま食べるって難しいですよね・・・。
梅煮は、不思議と今の時期が美味しいんです。
5月頃になると、ごぼうと梅の味のバランスが崩れてきます。
煎り酒は、いろいろと試しているのですが、お酒の味が浮きやすいので、再現することより、昆布を多めにして、現時点での味わいをとっています。
「料理物語」中では、かつおをしっかりと使っているのですが、エンテツさんと五十嵐さんに食べてもらった煎り酒は、昆布と梅干しと「きもと仕込み」の日本酒を使いました。当時と今との日本酒の製法の違いが味わいにもたらす影響が大きいのかもしれません。
かつお節も枯節ではなかったでしょうし。
まぁ、なんにせよ「当時の味そのもの」を味わうことが不可能に近いので推測にしか過ぎませんが。
調べれば調べるほど、「伝統的な日本の食文化」と言ってすませれるほど単純ではなく、連続と断絶と変容がないまぜになっていることがよくわかります。
三代ほどさかのぼれば確実に食の体験って異なるように思います。
投稿: ぱせみやのよっちゃん | 2009/03/20 10:34