ババアが二人、立ち話をしていた。ババアといっても、ジジイのおれとおなじぐらいのトシに見えた。「なんにつかうといったって、つかいみちを考えるほどのカネじゃないよ、もともと足りないカネで生活しているんだから」「そうそう家計の足しにもならないね」。給付金のことだ。
生活が消費生活に矮小化されると、生活は家計に矮小化される。余裕がある人たちは、その関係を感じなくてすむことが多いだろう。生活と消費生活と家計の違いなど意識しなくても、すべてカネが解決してくれているからだ。
だけど、余裕がない生活では、「生活」と「消費生活」と「家計」の関係を、リクツでは知らなくても、肌で感じることになる。少ない収入で、コメやおかず、電気ガス水道、テレビの視聴料…、家計をまかなうのもやっとで生きている。必要なものがあっても、やりくりを考え、今日明日の生存に関わらないものは先のばしにして。だから、これぐらいの給付金じゃ「家計の足しにもならない」という言い方になる。そんな生活の中では、何のために生きているんだろう、働くんだろうと、「生活」や「生存」を考えることになる。
もともと国民が負担するカネを、政府が「給付金」なんてもったいつけるのもおかしな話しだし、マスコミが「家計の足し」のつかいみちを騒ぎ立てるのも、おかしい。ま、新聞の記事によっては、これでアホウなアソウの自公政権のヨイショ支えをやろうという意図がみえみえの感じもある。
大方の庶民にあっては、このババアたちの話のとおりだというのが実情じゃないだろうか。カネのつかいみちを考えるのは、本来は、「生活」のひとつだ。だけど、余裕のないものにとっては、考える余地などない、すぐさま家計として消える。
コンニチでは、たいがい深く消費生活にはまっている。そこでは、商品やサービス(これには、もちろんファンドなども含まれる)の選択をすることが「生活」である。それは「カネのつかいみち」を考えるのとは違うし、「消費生活」というべきものなのだけど、それで「生活」が過ぎていくことも少なくないようだ。
そんな生活であり家計なのではないかと思うが、きのうのこの記事は、忘れないようにしたい。……
15兆円出動、異例の容認 財政審 再建の道筋明示求める
4月15日7時57分配信 産経新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090415-00000103-san-bus_all
財政制度等審議会(財務相の諮問機関)は14日の会合で、政府・与党がまとめた追加経済対策が15兆円と過去最大規模の財政出動となったことについて、妥当なものと容認した。財政健全化を議論する財政審で大規模な歳出拡大を評価するのは異例。ただ、対策後の財政再建への道筋を明示することが必要と強調。6月をめどに消費税増税を含む税制改革について意見をまとめる方針。
西室泰三会長(東京証券取引所会長)は会合後の記者会見で、個人的な見解として「経済状況が危機的であり対策としては時宜を得たもの」と評価。100年に1度といわれる深刻な経済・金融危機への対応として約15兆4000億円の財政出動など今回の経済対策の妥当性を認めた。
一方、経済対策の財源として新規国債発行額が10兆円規模になる見通しのため、財政審は急速に膨らむ借金の返済をどう進めるかなど財政健全化の具体的な政府方針の提示が必要との考えを示した。
具体的には、政府が追加経済対策に盛り込んだ消費税増税など税制抜本改革の道筋を示す「中期プログラム」の改定を重要視。財政再建への対応の明示を求める考えだ。
……この記事は、「給付金」も含めた「経済対策」や「景気刺激策」が、すべて国民の負担であることを、あらためて明確にしている。それだけではなく、今回の「経済対策」や「景気刺激策」は将来の国民負担を軽くする見通しが、まったくナイことをさらしている。
では、いったい、国債40兆以上も発行しての、「異例」の大盤振る舞いは、なんのためなの? といえば、アホウなアソウが政権維持の人気とりのばらまきということもあるだろうが、ここに、西室泰三会長(東京証券取引所会長)なんていう株屋の大ボスがいることで察しがつくではないか。そ、また、まだ、泡銭師たちのために、国民のカネをつかおうというのだ。と、考えたとき、天下の大新聞が、なぜ、小沢民主党をたたきながら自公政権を支えようとするのかも、みえてくる。
ともあれ、忘れてならないのは、このことだ。のちに、消費税の大幅引き上げが議論になったとき、必ず、「福祉のため」という美しい脅迫まがいのリクツがつかわれるに違いない。
だけど、この記事では、消費税増税と引き換えに大規模財政出動が認められる方向を示している。あとでくる消費税の大幅引き上げは、それから未来の「福祉のため」ではなく、すでに、ここで泡銭師たちのためにつかうカネを、国民の負担で「国に返す」という関係である。「給付金」というが「借金」の押し付けだ。しかも、家計が手にする以上の巨額の押し付けなのだ。
家計もまっとうに成り立たない状態をつくっていて、給付金を手柄話のようにする政権党は、自ら放火をしては駆けつける放火魔消防士みたいなものだ。
もちろん、そこには、いま泡銭師たちにカネがまわる仕組みにしておけば、それ以上のカネになって、のちに国民に還元されるというリクツがあるだろう。だけど、そんなこと、すでにさんざんやってきた。マジメに働かないで博打ばかりやって、負けがこんでくると親に泣き付いてくるバカ息子のような泡銭師たちに、さんざんカネを恵んできたではないか。それで、このザマなのだ。
で、「バカ」といえば、この記事の見出しだ。
裁判官、反省の姿勢見せない被告に「バカ」2009年4月16日10時16分
http://www.asahi.com/national/update/0415/NGY200904150019.html
その内容を部分的に転載する。……
大量の漫画本を万引きしたとして窃盗などの罪に問われた被告は、公判で「漫画本を売って借金を返したり、大麻を買ったりした」と述べた。裁判官が「大麻が体に悪いという認識はあるのか」などと尋ねると、「体に悪いと思っていない」と即答。それを聞き、被告に向かって「あんたがバカだから分からないんだよ」と傍聴席に聞こえる声で発言した。
その後、「害がゼロとは言わないけど、インターネットで調べたら、たばこや酒より害がないと書いてあった」と反論を続ける被告に、裁判官は「だまされているんだよ」と何度も諭した。約40分間の公判を、3人が傍聴していた。
……これは、また、とても、おもしろいことだ。前にも少し書いたと思うが、近年のヒステリックな、公権力をつかった強制的な「禁煙」は、大麻や覚せい剤の「普及」につながるだろうという、名前を忘れたが学者さんの指摘を、昨今の大麻汚染報道で思い出す。
大麻と覚せい剤を一緒にすることについては異論のあるひとがいるだろうが、いまはどちらも、それがヤミルートであることでは同じだ。そのヤミがはびこっている。妙な、現象だ。
また誰か学者さんがいっていたような気がするが、そもそもタバコが「健康」に害があるというのなら、もっと健康に悪いのは、労働だ、ストレスの多い労働、ストレスの多い社会。だけど、人間は「生存」のために、ストレスの多い労働や人間関係などを排除するわけにはいかない。そういう中で、自己のバランスをとっていくためにも、タバコのような嗜好品を必要としてきた。毒をもって毒を制するというか。だから、嗜好品は、制度的に排除するものではなく、生存や生活のあり方を考えるなかで、よりよい選択がされるようにすべきだろう。でないと、ヤミがはびこることになりかねない。
ともあれ、とりあえずイマの日本の禁煙周辺で、「健康」が問題になるときは、「生命」と連動している。つまり「健康で長生き」という一つの「理想」というのかな「欲望」というのか、見受けられる。そこでは「生存」のことは考えられていない。
この「「生存」ぬきの「生命」」の姿は、食育にも顕著だし、現代日本の食問題と密接にからんでいる。もっと「生存」を考えなくてはなあ、おかしなことがますますおかしくなるような気がする。
どれだけ生きるかは生存の結果だろう。生存が行きづまり自殺したり、生存のありかたで生命の長短が左右されたり、「いのちを大切に」なんていう空念仏じゃ生命の保障にならない。自分の食べ物、自分の嗜好、自分の生存ぐらい、自分に決めさせてよ。
てなことで、長くなったから、ここで、トツゼンおしまい。
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