「日本で最も美しい村」連合、山形県大蔵村で、いろいろな「美しさ」に触れた。
行ってから、大蔵村は、屈指の美味しいトマトの産地と知った。たくさん生産され、そのほとんどは、ココおれのウチから3キロぐらいのところにある大宮市場から東京圏に出荷されるのだが、高い評価を得ている。食材にうるさいモスバーガーにも採用され、モスバーガー公式サイトの「産地だより」に、その詳しい紹介がある。…クリック地獄
なので、取材予定にはなかったが、真っ赤な情熱のトマト栽培農家を、トツゼン訪問した。人口が減り続ける村で、稲作農家を継ぎ、5年ほど前からトマト栽培を始めたイトウさんは30歳。「このかっこうで写真は、カンベン」というのをおれは撮影し、カメラマンの写真には、シャツを着て写っています。「ちかごろやっとトマトの気持がわかるようになった」という美しい話を聞いた。「美しい村」の「美しさ」は景観だけではないのだな。
2005年、全国7町村でスタートした「日本で最も美しい村」連合の加盟町村は、現在18。今年の10月、この大蔵村で開かれる総会では30をこえる見通しだが、加盟には審査がある。「1.人口が、概ね1万人以下であること」「2.人口密度が、1平方Km当たり50人以下であること」の条件のほかに、景観や環境や文化や歴史などの面で、なにかしら二つは認定基準をクリアしてなくてはならない。
大蔵村のばあい、棚田百選にも選ばれた、「四ヶ村(しかむら)の棚田」の景観が一つ。それと開湯以来1200年、湯治場600年の歴史の「肘折温泉郷」だ。山間の、最上川上流の銅山川沿いに、20数軒の宿がある。
日本で温泉なんて珍しくない。いくら歴史が古くても、それが「美しい」ことの基準を満たすことがありうるのか、かなり疑い深く接近したのだった。
が、しかし、ここは、歴史が古いだけではなかった。どんどん近代観光地化やリゾート化を推進する他の温泉地からはほとんど失われてしまった、まさに無形文化遺産ともいうべき「湯治文化」が息づいている。部屋はもちろん、建物にも鍵がない宿がある。ゆかたに下駄ばきでフラフラするのがフツウである。行楽温泉地で失われてきた、昔の湯治場ならではの、まったり感が残っている。
一泊し、温泉にも何度も入り、取材をした。そして、この「湯治文化」の核をなす価値が、「なにもしないことの美しさ」であると知り、目からウロコがボロボロおちた。
いつもなにかしていないと不安である、いつもなにかを追いかけ、ちょっとのことで知ったかぶりをし虚勢をはらなくてはならない「都会文化」のアホ臭さを、あらためて「醜い姿だなあ」とおもったのだった。そして、だからこそ、こういうところで、目からウロコをボロボロおとし、なにもせずのんびりすごすことを覚える価値がある。
平日にもかかわらず、大変なにぎわいの朝市は、雪がない季節は、毎日開かれる。というのも、湯治の自炊客用に始まったからだ。いまでも自炊、素泊まりができる。画像、左側の三階建てが泊まった宿、200年か300年かわからない、現存の建物は大正年間の写真にある、古い湯治宿の一つ「三浦屋」さんだ。
襖で仕切られているだけのワレワレ取材陣3人の部屋の隣には、男一人の長逗留の客。部屋に布団を敷きっぱなしで、テキトウに缶ビールを買ってきたり、弁当を買ってきたりして、過ごしていた。つまり、クウ、ネル、温泉にハイル以外は、なにもしないでゴロゴロしているのだ。
しかし、ちかごろの「都会人」は、そのなにもすることがない状態に耐えられず、3泊ぐらいの予約で来ても、「もう見るところもない、やることもない」と1泊で帰ってしまうひともいるとか。まさに「湯治」しなくてはならない、悪癖都会文化に染まった現代人といえるか。
ご夫婦で世話してくださる、民宿風の、昔からの湯治宿だ。温泉もよいし、食事もたっぷりで、うまい。山菜は、かなりいろいろ食べているつもりだが、調理の仕方も含め、初めての山菜が、いくつかあった。もちろん、大蔵村の東北最古の酒蔵といわれる、創業1593年の小屋酒造の「花羽陽」もタップリ飲んだ。
最初、見たとき、水量が多いからダムかと思った。だけど、近づくと、水流がはやい。ワレワレは、感動しつつ、地元の人たちにとっては、こんな景色は、どうってことないのだろうなあと、しばしこの景色を眺めていた、最上川。ここ、立っている位置には、2000年まで渡し舟の船着場があった。
「美しさ」を考えながら、「美しさ」にタップリふれてきた。詳しくは、9月末ごろ発行予定の本誌をお楽しみに。まだまだ、北海道の美瑛町と長野県の大鹿村の取材も残っている。
「美しい村」は「美味しい村」でもあるのですね。関東地方には、ミニも含め3億個近く出回る大蔵村の美味しいトマトを食べているひとが、たくさんいるはず。どーか、大蔵村の「美しさ」「美味しさ」を訪ねてみてください。
おいしくて評判のトマトジュースや小屋酒造の酒あるいは山菜や蕎麦など、入手困難な大蔵村の産物も、ネットで買えます。
「おお蔵Network」
http://www.ookuramura.jp/
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