「日本で最も美しい村」連合、長野県大鹿村。下諏訪すみれ洋裁店経由。
「日本で最も美しい村」連合の取材は、山形県大蔵村、北海道美瑛町のあと、最後の大鹿村が、5日と6日だった。
おれは前日の4日、11時ちょうど新宿発のあずさに乗った。下諏訪で降り、ふらふらし、14時過ぎにすみれ洋裁店の、古いペンキのドアを開けた。みどりさんと06年夏以来の再会をよろこびあい、短いがたのしい時間をすごした。ほんとうは、一緒に酒を飲みたかったのだけど、みどりさんと酒を飲みだすと、翌日の取材に差し支えあるほど飲むことになりかねないから、前回の北海道取材前夜の飲みすぎの教訓を生かし自重。あらためて、飲みにだけ来訪する約束をし、辞した。
ひとりで、諏訪大社を詣で、温泉銭湯などに入り、湯上りに酒屋の店先で地ビールを飲み、うな富のうなぎなんぞを食べながら飲み、日没時を諏訪湖まで歩き、下諏訪駅にもどって列車に一駅乗り、20時ごろ岡谷のホテルに入った。ここんとこの疲れがたまっていたのか、すぐ寝てしまった。
おかげで、5日朝は快調なスタートだった。10時20分ごろ、岡谷駅前で、都内からクルマで来た秋山カメラマンに拾ってもらい、中央自動車道松川インター経由で大鹿村へ。鹿肉ハンバーグの昼食を食べ、約束の13時に役場に着いた。
担当の吉田さんに話を聞き、14時から村長さんのインタビュー、予定どおり1時間でおわって、産業振興関係を担当する課長さんに話を聞く。16時ごろ役場を出て、村内の取材やら撮影。標高約千メートルのところにある山荘のような温泉宿、赤石荘に宿をとったので、そこへ向かいながら、こまめに動きまわった。
通りすがりのひとに話を聞く「突撃取材」だが、みなさん、とてもよく対応してくれる。ほんと、よい印象のひとたちばかり。たまたま、20年ほど前に移住したという方に、二人も出あい、この村は、むかしから移住者が多いことを知る。
そのひとりの中年の女の方に、「「マチとムラの幸福のレシピ」ってのが、取材のテーマなんですよ」というと、ふと考えるようにしたのち顔をほころばせ、声をひそめ、「いいこと教えてあげる、この村は、幸福がたくさんあるの」と言われた。その顔は、少女のようであり、そして、いかにも幸せそうだった。
赤石荘についたのが、17時半ごろ。着いてからわかった、赤石荘は、「日本で最も美しい村」連合の会員企業だった。名簿には「有限会社多田」としかなかったので知らなかった。入口や受付カウンターの壁に、美しい村のマークポスターが貼ってあった。なんという偶然だろう。個人経営旅館で、こういう会員になろうというのだから、まだ30半ばの男主人は、こころざし高く、研究熱心でもあり、熱いものがあった。それは、料理にも、あらわれていた。
大鹿村は、名前のとおり鹿がとれる。とれるどころが、獣害に悩まされている。この鹿が、うまい。赤石荘では、ステーキと刺身をたべた。ステーキは、8400円の一泊二食の代金に含まれている。ソースに地元の名産である、ブルーベリーをつかう工夫がしてある。しかも、ほかにも、虹ますの姿揚げがついたり、食事はうまくタップリあった。
鹿肉も、猪肉も、これまでけっこう食べてきたが、野生のものだから場所などによって、味や肉質がちがう。大鹿村の鹿は、かなりよいものだとおもう。刺身なんぞは、上質のレバ刺しみたいだった。そして安い。いいジビエを食べたいとおもったら、都心なんぞで場所代に高いカネとられるより、そのカネを自動車道につかい、大鹿村へ行ったほうがよい。鹿肉以外にも、野菜や蕎麦など、うまいものがたくさんあるしね。
きのう6日は、朝5時におきた。赤石荘の露天風呂からの眺めがいいねえってことで、撮影。クルマで出かけ、いま大都会のスイーツ流行もあって、評判が高い夏イチゴの朝摘みを取材した。
トツゼンの乱入なのに、おばさんは手を動かしながら、自然にカメラにおさまってくれた。話もしてくれた。このおばさんは、朝の5時から正午まで、こうやってイチゴを摘みながら面倒をみている。ごらんのとおり、「土」は使わない「農」であり、いまや珍しいことではない。じつは、建設会社が営農するイチゴハウスなのだが、ゆき届いた管理で良質のものができる。土は使わない水耕栽培でも、品質は、場所の気象条件に左右される。つまり、良質の夏イチゴのためには、ここならではの気象条件がなくてはならないのだ。
村内あちこち撮影しながら、もどって朝食。9時すぎ、赤石荘を出た。引き続き、村内あちこち取材。11時ごろ、移住者がやっている農園に着き、そばを食べた。
雨は降らないが、はっきりしない天気。赤石岳などの3千メートル級の高山には雲がかかりっぱなしで、山岳風景のなかの農村景観を撮影しておきたいのだが、すっきりは晴れそうにない。だんだん雲は濃くなり、ときどきパラッと水滴が落ちてくる。あきらめて、国道を北へ向かい、中央構造線が露出しているところなどを撮影しながら、大鹿村を離れた。
そのまま国道を北上し高遠へ。ぜひ見たいと思っていた、北尾トロさんらが始めた「本の家」へ行った。のち、近くの温泉につかり、一休み。伊那インター経由で新宿駅まで送ってもらった。新宿着は、18時過ぎ。帰宅。
北九州市発行「雲のうえ」最新号、松本清張特集が届いていた。
とりあえず、そういうこと。
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