楽しく売る。難しいこともある。
ひさしぶりに本が出たおかげで、ひさしぶりの人たちから電話やメールがある。電話でお互いの近況から話していると、けっこう時間がくわれる。時間は失われるけど、そうやって、わざわざ電話をかけてくれる人は、ありがたい。ほとんどは、出版関係ではなく、以前からの付き合いのフツウのビジネスの人たち、というのも、うれしい。ま、おれは、あまり出版関係の人とは、本が出たからといって電話やメールをいただくほどの付き合いは、ほとんどない。とにかく、物売りの現場(サービスの現場も含めて)の人と話していると、やはり出版関係というのは、ずいぶん特殊な感覚の人たちが多いなあとあらためて思う。「文系女子」とか「文系男子」とかねえ。
もっとも出版関係でも、出版社とその周辺の編集制作関係の人たちと、書店の人たちとは、また違うようだ。書店の人たちは、フツウのビジネスの人たちである。つまり日々客と向かいあってモノやサービスを「売る」という感覚がある。それと、出版社というのは、やはり「会社」としても特殊のように感じるが、会社組織の書店はフツウの会社である。
「客商売」という感覚が、日常どのていど存在しているかの「差」ということになるだろうか。おれも、マーケティングの現場からは遠ざかる一方だから、「客商売」という感覚は日常あまり用はなくなっている。そして、たまに、その現場の人たちと話していると、むかしの血が騒ぐ。
ま、そんなふうに、きのうもアレコ仕事をしながら、そういったアレコレの電話やメールで過ぎて行った。ブックフェアで必要な瀬尾幸子さんの色紙が宅急便で届き、あけてみたら、さすが書道を長年続けている人の文字におどろき、こういうのとおれのどうってことないヘタ文字の色紙を並べるのかと思いながら、近くの文房具屋へ色紙を買いに行く。
いつもヒマそうにしているオヤジが、ヒマつぶしの相手が来たとみたか、ちかごろのマスコミ批判を始める。もうマスコミの「政治とカネ」の話しなんかウンザリだよ。政治家はみなカネに汚いことは知っているんだ、自分のこんな商売だってカネにキレイでばかりじゃいられない、そんなことより、この景気をどうするかだよ。だけどマスコミの連中は、政治家のアラさがしばっかりで…。宮崎が大変だというけど、こっちの商売なんて、もうずっと10年以上も大変なんだよ…。これが「街場」の感覚なのかも知れない。
出たついでに、東大宮駅西口の本屋、文教堂へ行ってみると、棚に表紙を出して重ねてあった『みんなの大衆めし』が、最初は何冊あったか知らないが数日前よりは減っていて、あと2冊になっていた。帰ると、ある書評家の方が、ある週刊誌で、『みんなの大衆めし』の著者インタビューをしたいという申し込みがあったと版元から電話があり、その段取を組んだりという、うれしい話もあったりして、夜の9時に「よってってちゃぶだい」で、某大書店の担当の若い美女と待ち合わせ、おれと瀬尾さんの色紙を渡す。大竹聡さんのも用意するはずだったが、彼がドタバタ忙しいうちにはもちろん深酒も入っていたと思うが、おれとの受け渡しの段取が予定通りいかず、書店に直接送ってもらうことにした。ま、問題なし。
ブックフェアのアイデアをあれこれ、ちゃぶだいのタイショーも巻き込んで、ちゃぶだいの小物を彼女はもらったり。ようするに、ヒラが、フェアなど積極的に取り組もうと思っても、予算がつかない、彼女は自腹を切ってやるのだ。ウエは関心がないどころか出る杭を打ちかねない。ウエというのは、自分の無難な出世のために頭をつかう、それが積極販売につながらず保身に向かうことは、フツウの会社ではめずらしくない。自分は何もしないで、何かしら向上しようとしている人たちのアラを探してケチをつけ得点にする、どこか文房具屋のオヤジがいっていたマスコミの所業と似ているが、そういうマスコミの空気は全体の空気なのかも知れない。そんな難しさや悩みを抱えながら、それでも積極的に楽しく売ろうという。そういう人は、若い美女であろうとなかろうと、大いに応援しよう、一緒に協力して売りたいと思うのは、また人情というものだろう。彼女は、上り終電で帰り、それからチョイと呑んで帰る。
画像は、この会社の本社は北九州にあるのだが、イシトビさんに送っていただいた。だいぶ前に届いていたのだが、どうもありがとうございました。これ、人気のストラップなのだ。じつは、この便座のフタが開いて、なかには「黄金」が輝いているというものがあって、イシトビさんはそれを持っているのだが、やはり製作の費用がかかるらしく、フタは開かない。でも、楽しい。そうそう、イシトビさんがやって見せてくれた、5円玉と輪ゴムをつかってやる「人心掌握手品」だが、このあいだ画伯が飲み屋で女子にやってみせていた。練習不足であり、女心掌握に成功したとはいえなかった。
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