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2011/01/18

街の生命力とストリップ劇場、そして「雑菌の街」と「無菌の街」。

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すでに書いたように天満市場は、一部が市場ビルと高層マンションになり、周辺に昭和なままの使い込んだ本建築の木造と闇市的バラックであり、隣接して団地や倉庫街がある。

最初の写真が市場ビルの部分で、この左側にタワーマンションがそびえているのだが、この位置から、視線を左にずらすと、二番目の写真。卸問屋直営のホルモン酒場と銭湯があり、さらに視線を左にずらすと、道路の正面に団地があり、さらに視線を左に動かすと、銭湯の前あたりになるのだが、ストリップ小屋「東洋ショー」と弁当屋が同居している。「東洋ショー」は、出入り口を路地側にしたり装飾に気をつかっていることもあるだろう、街に溶け込んで違和感なく存在している。

写真ではわかりにくいが、ホルモン酒場の看板には、ワイン、ダーツとある。この街では、ワインが人気なのだ。ビール大瓶320円の立ち飲みでも、チューハイはなくても、カチ割りワインはある。大阪は全体的に、炭酸割りの酒は少ないし、革新的で新しい動きをつくる「ハイカラ」な傾向は見られるのだが。

戦後闇市の雰囲気を色濃く残しながら、新しい動向も飲み込んで、渾然一体。「ゾーニング」などという都市計画屋のような、なにかがなにかを排除して成り立つ思想と構造は、ここには見当たらない。「生きる」ことのすべてが、この狭い地域に生きている。

たいがいの「再開発」においては、ゴチャゴチャした古い街は、「汚い」「危険」であるということで、まっさらの敷地にもどして、ゾーニングによって選ばれた「無菌の街」をつくる。それとはちがう「街の生き方」があるように見えた。

ま、つまりは、なんでもありの大衆食堂のような街なのだ。

下の写真は、横浜の、「有名」といってよい、ストリップ劇場「黄金劇場」だ。1年前の1月ごろの撮影。この横浜の黄金町や日の出町あたりは、大歓楽街であったが、どんどんマンション化がすすんでいる。なにしろ横浜市自体が、「不動産屋」といわれたほど、再開発屋である。そのマンション化は、イコール、「無菌の街」づくりというわけで、どんどん「汚い」「危険」は敵視され排除されている。街を歩けば、ケバケバしく汚らしい「売春飲食店撲滅」の看板が電柱に立っている。

「黄金劇場」周辺もマンションだらけで、「清潔」になり、おかげで以前より、この劇場は目立つようになった。そのうち「新住民」によって排除される可能性なきにしもあらず。

047風俗営業に対しては、いろいろな考えがあるだろうが、「無菌の街」をつくっても、無菌室は外部にさまざまな生きるための生命維持装置が必要であるように、みな雑菌なのであり、そこだけで「生きる」ことが成り立っているわけではない。そのことに思いをめぐらさない街づくりに、かつて大々的に取り組んだことがあった。いまや廃墟遺産になりそうな、郊外の「ニュータウン」づくりが、それだ。

官僚と組んだ都市計画屋は、近ごろは「コンパクトシティ」づくりなるものを掲げ、廃墟となりつつある郊外を捨て、都心部に都市機能を集中させようという動きのようだ。それも悪くはないだろう。

だけど、「生きる」ことの本質は、そこにあるのではない。そのことを、この天満の街は語っているようでもあった。街は「つくる」ものではなく、「生きる」ことにしたがうものである。街の「行き方」つまり方向ではなく、「生き方」つまり生存の在り方を考えるべきではないのか。

悪党として象徴的な言い方をすれば、ストリップ劇場もエロ本屋もない街は、自らの生命力のない街であり、もちろん本質的な意味において文化的でもない。

ま、ストリップ劇場やエロ本屋にとっては、インターネットのほうが脅威らしいのだが。

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コメント

どーも、このブログも戯言集のようなものなのです。

「まちづくり」という言葉は、ほかによい言葉がないので、仕方なく自分でも使っていますが、好きな言葉ではないし、いい言葉ではないと思っています。

むかしは、もっとヒドイ「人づくり」なーんていう言葉も流行ったことがありましたが。

現実は「まちづくり」といえば、税金予算に群がる人たちの、錦の御旗のようなアリサマ。

そりゃそうと、そちらは寒いでしょうね。気をつけてください。

投稿: エンテツ | 2011/01/19 00:47

北海道より戯言を。

>街は「つくる」ものではなく、「生きる」ことにしたがうものである。

さすが、エンテツさん!

いかがわしい、まちづくりを生業にする人たちに、この言葉を贈ります。

投稿: 森末 | 2011/01/18 23:40

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