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2011/05/04

小沢信男さん『本の立ち話』は、小沢さんならではの話がてんこ盛り。

Dscn0081a小沢信男さんから、新刊をいただいちゃったのである。もう2週間以上前のことで、それから2回も読んじゃったのである。

前回の『東京骨灰紀行』は、出版社の筑摩書房の編集の方からいただいた。この本も、もう素晴らしく、2009/09/09「小沢信男さんの新著『東京骨灰紀行』筑摩書房から。」に紹介した。

そして、この本は、朝日新聞の「ゼロ年代(2000年ー2009年)の50冊」に選ばれたのだ。もう小沢さんは、おれのようなものが「小沢さん」なんて気安くいっちゃいけないような大先生である。だけど、いっちゃうけどね。

ま、それで今回の『本の立ち話』(西田書店)。

おれは、不精というか礼儀知らずというか、両方だけど、引越しをしても、新住所のお知らせなど特にしてなく、成り行きまかせで、小沢さんにも連絡してなかった。そんなやつにも関わらず、小沢さんは、前の住所に送ってくださり、当然そこには住んでいないから送り返されたものを、おれの住所をほかの人に聞いて、ところがその聞かれた人にもおれは住所を知らせてなかったものでメールでたずねられ、そんなことでいろいろ面倒かけてしまった末に、送り直していただいたのだった。ほんとに、もう大先生に、冷や汗ものです。

で、この『本の立ち話』、タイトルからしてよいけど、腰巻にある惹句もいい。「行く先々に本があって人がいた」。作家を気取らない、だけど、本や文学や人を愛する小沢さんの気持が、しみじみ伝わるような。

まず「あとがき」から紹介したほうがよいでしょう。

「かえりみれば多年ほそぼそと雑文渡世をつづけてこられて、幸運でした。積もり積もってふくらんだファイルから、書評、解説、跋文、読書随想の類をひろいだして一冊にしてみないか。という機運がふいに生じたのも、かなりの僥倖だ。さっそく、いさんで編んだ本書であります」

「題して『本の立ち話』。つまり対話。あるいは路傍で何人かとの、ほんの雑談。ベンチに掛けるか、芝生にすわりこめば長ばなしにもなるでしょうが。ゆめゆめ独り言でも、演説でもない心づもりなので。ですから、いまこの「あとがき」から立ち読みしていらっしゃるあなた。ぜひお買い上げください。あなた。」

というぐあいで、本文の文章の調子も、こんな感じで。こういう小沢さんの文章を「洒脱」とかいう人もいるようだが、そうかなあ。とにかく、けっこう難しい話をしているのだけど、大上段に構えることなく、まさに読者に向かって「演説」をぶつことなく、わかりやすく気楽に読めちゃうのだ。

しかし、ほんと、さわやか快調ともいえる文章に、なかみは、ズッシリしている。2回も読んじゃったけど、まだ読み尽くしてない感じだ。そして、読むと、ここに登場する本や作家の本を、読みたくなってしまうから、困るんだなあ。いま、忙しくて、そんなことしているヒマはないんだけど、ついつい永井荷風さんを引っ張りだしたり、小沢昭一さんや谷川俊太郎さんを引っ張りだしたり。知らない詩人のことをネットで検索したり。

本文の最後は「『東京骨灰紀行』を書いて」だ。たぶんこれは、「ゼロ年代の50冊」に選ばれたあとだろう。きょねんの5月23日に朝日新聞に寄稿した短文。それは次のように終わる。

「いまやグローバルに競う巨大都市化が、たぶん諸処でゆき詰まるだろう二十一世紀の波頭に、泡粒の私がいます。あなたも。」

登場する本や作家の、名前だけでも、ここに紹介したいのだが、いまチョイと書いてられない。とにかく小沢さんは、たぶん『東京骨灰紀行』までは、知るひとぞ知るという感じで、一般的には、それほど有名人ではなかったと思うけど、戦後すぐから長いあいだ「文学運動」に関わってきた、その分野では「重鎮」ともいえる存在で、小沢さんでなければ書けないことが、てんこ盛りなのだ。そして、詩、ルポルタージュ、評論、エッセイ、小説、俳句など幅広い創作活動を続けてきた小沢さんならではの、洞察力や批評力が、そこここにふんだんに盛られている。

小沢信男さんは、関東大震災から数年後の1927年生まれ、まだ下町の雰囲気だったであろう新橋で生まれ銀座の泰明小学校に通い、東京大空襲下を生きた。80歳をすぎて、ますます好調の頭脳と文章。

『本の立ち話』と同時ころ、『小沢信男さん、あなたはどうやって食ってきましたか』という本も出ている。そのチラシには、こんなぐあいに書かれている。

「現役最長老級、今年84歳の作家・小沢信男さん。いまも軽快に町をくまなく歩き、旺盛に創作活動を続けておられる・・・」「笑いとカンシャクの人、小沢信男さんの仕事と人生と文学運動の全貌を・・・」

とりわけ「笑いとカンシャクの人」に笑ってしまった。おれも、一度だけ、カンシャクを爆発させたところを目撃したことがあります。

とにかく、愉快で素敵な84歳。

で、ようするに、きょうは、このことを告知したいのですね。

5月6日(金)19時から。千駄木の古書ほうろうさんで、「小沢信男・大村彦次郎トークイベント「本の立ち話」 」があります。こういう機会は、めったにないと思うので、ぜひ。
http://www.yanesen.net/horo/info/detail.php?id=78

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