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2011/05/22

おれとビッグ・エーのまったくもって妙な関係。

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5月15日発売のスーパー業界誌の『食品商業』6月号に、ひさしぶりにエッセーを寄稿した。以前に、同誌に一年近くエッセーを連載したときの担当編集さんが、おれがビッグ・エーのヘビーユーザーだというのを覚えていて、「ビッグ・エー ハードディスカウントの時代」に、カタイ記事だけじゃなんだから、何か書いて欲しいと依頼があったのだ。

ボックス・ストアあるいはハードディスカウンターといわれる業態は、とにかくトコトン安値を追求する。ほんと、ハードなディスカウントなのだ。ビッグ・エーは関東だけで、関西には名前すぐ思い出せない、違うストアがチェーン展開している。

であるから、大衆食堂バンザーイなことを言ったり書いたりしているおれが、ビッグ・エーのヘビーユーザーだなんていうと、「えええっ、大衆食堂といったらスローフードじゃないですか、ロハスでしょ、地産地消や手づくり、よい素材にこだわるんじゃないですか、それが、あんな安さ追求のスーパーのヘビーユーザーだなんて、許せん」といった、教条的な声が聞こえてきそうなのだが。

あ~、じつはですね、大衆食堂とビッグ・エーには共通点があるんですよ。それは、どちらも、じつに簡素なストア・オペレーションをしていること。気取りや飾り気がない。言い方を変えれば、「即物的」ってことですよ。今回も、この原稿を書きながら、おれって即物的な空間が好きなんだなあと、思いました。

即物的な空間なのに、なぜかあたたかい。自由である。いや、それは、即物的な空間だから、あたたかく、自由なのだ。これと、真逆をいく、デパートの空間と接客を、比べてみればよい。そう、あの厚化粧な空間と接客。おれは、たぶん育ちが悪いこともあるだろうが、デパートの空間と接客には、ヘドが出るのだ。あんなんで気持よくなって財布のヒモをゆるめるひとは、どーかしているとさえ思うことがある。

バブルのころには、よいものうまいものにはいくらでもカネを出す、なんてバカバカしいことを、生産者も流通業者も消費者も言っていたのだが、まだ、そういうブヨブヨした脳みそが残っているようでもある。しかーし、大衆食堂もビッグ・エーも、そんなことは信じない。まわりがゴテゴテ気取ろうが着飾ろうが、わが道をゆくで通してきた。潔いのだ。

ま、能書きは、これぐらいにして、堂々2ページ書きました。冒頭の書き出しを長めに紹介すると、こんなアンバイ。

 いまウチには、ビッグ・エーで買った、ビッグ・エーブランドの醤油と使いかけの小松菜が、冷蔵庫にある。テーブルの上には、バナナの最後の一本がのっている。2日ほど前には、伊予柑もあった。
 11日に発生した大地震で、時間帯と売り場によっては、棚がガラガラのときもあるのだが、数日前、津波の被害が大きかった宮城・気仙沼の〆鯖を見つけたので、ただちに買った。それをブログで紹介したら、ツイッター仲間が同じものを買っていることがわかった。ほかにもビッグ・エーユーザーとつながった。いずれも男で、住んでいる地域はばらばらだが、ツイッターで「ロハスの敵、庶民の味方、ビッグ・エー」などと冗談をとばして、盛り上がった。

そうなのだ、ツイッターで、「ロハスの敵、庶民の味方、ビッグ・エー」なーんて盛り上がっていた。
気仙沼の〆鯖のことは、すでに当ブログで書いている。
2011/03/19
「なんとなく、気仙沼・八葉水産のしめさば。」
ついでに、もっと本文を紹介しちゃおう。こんな風に、その即物性を評価している。

 実際、いまの東大宮のビッグ・エーの前には、やはり24時間営業の、数百坪はあろうかと思われる某ナショナル・チェーンのスーパーがあって、ときどき意を決して入っても、途中ですごすご退散し、ビッグ・エーで買い物して帰ることがある。これは、67歳というトシのせいなのだろうか。あの、制服を着たレジの女性が、ばか丁寧な挨拶を早口でしたり、厨房と出入りするたびに店内に向かってお辞儀をする姿まで、わずらわしく思える。
 そこへいくと、ビッグ・エーは気楽である。店舗の大きさといい、素っ気ない即物的な陳列といい、あまり圧迫感も情報的干渉もない中にほっておかれるのである。すると、気分も大らかに、店内をフラフラできる。急いでいるときは、すぐコンビニ並の早さで、めざす商品を手に入れられる。そして、制服で固められてない、私服にエプロンという店員さんの姿が、そのへんのまちの店まちの人という感じで、個人商店にいるような親しみを覚えるのだ。

・・・以上。いやいや、でもね、最後は、こう終わるのです。

まったくもって妙な関係になったものだが、かといって、ビッグ・エーさえあればよいという生活は、想像したくない。

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