邱永漢の訃報に接し『食は広州に在り』を読み直す。
邱永漢さんが、去る16日に亡くなったというニュースを、今日知った。直木賞作家でありながら実業家として生きた、と言ってよいだろう。
訃報に接して、亡くなった方の著書を読もうと思ったことは、ほとんどなかったが、『食は広州に在り』を読みたくなって読んだ。この本だけは、違うのだ。
以前に、[書評]のメルマガで食文化本を紹介する「食の本つまみぐい」を連載していたとき、4回目に、この本を取り上げた。その時、すでに何度も読んでいて、まだまだ読み尽くせていない感じがあった。
ザ大衆食のサイトに掲載してあるが、[書評]のメルマガ2004年2月9日発行で、「国事よりも食事が大事」のタイトル。…クリック地獄
いま読むと、最初の頃だったので編集さんが言う文字制限を守って短くまとめ、じつに拙いが、「丸谷才一さんが『食通知ったかぶり』で「戦後の日本で食べもののことを書いた本を三冊選ぶとすれば」とやったうちの一冊。食文化的には、何度読んでもイロイロ面白いのは、本書だ」と書いたのは、正しく間違いない。
邱永漢さんが30代前半に著したものだ。チョイと台所に立ってみたくなる話がふんだんにあるこの本には、食をめぐる、あらゆること、とは言えないまでも、かなり多くの大切なことが盛り込まれている。そこは丸谷才一さんをして、「文明批評」といわしめた点だろう。そして、あらためて読むと、彼がなぜ直木賞作家の道を、さほど熱心に歩まず、実業の道を歩んだかも、よくわかる。
それはともかく。「南有嘉魚 海の幸は南から」に、自分は酒飲みではないないが、酒飲みの心理はわかるような気がすると書いている、つまり「その意地のキタなさは万国共通で、酒には種類はあるが、酒徒には国境がない」には、共感しつつ爆笑した。
爆笑しながら、邱永漢さんを追悼したのである。享年88。
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