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2012/05/13

故郷の南魚沼市六日町で温泉、山菜、酒、級友、ふるさと三昧。

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5月は、全国高千代ファンの集い「高千代五月まつり」があるのだが、最近は、ちょうど都合が悪く参加できないでいる。今年も、20日の日曜日に開催との案内をもらったが、都合が悪い。うーむ、しかし、この季節、故郷の山菜で故郷の酒蔵の酒を飲むのは、他に代えがたい魅力だ。考えているうちに、どうしても行きたくなって、昨日行ってきた。トツジョ思い立って行ったのだが、出たとこ偶然だらけで、めったに会わない中学同期の連中と飲むやら、じつに楽しく充実した日帰り小旅となった。

めざすは、まいどおなじみの、老舗の大衆食堂的蕎麦屋の萬盛庵だ。ここのとうちゃんは、自他ともに「山菜きのこ採りの名人」を認める。

前日、六日町中学同期のクボシュンさんに電話した。彼は最近は夜中の勤務をやっているので、15時ぐらいには帰って寝なくてはならないが、昼めしでも一緒に食べようということになった。10時少し前に東大宮を発ち、新幹線を利用、11時45分六日町着。クボシュンさんが駅に出迎えてくれた。東大宮も風が冷たく寒かったが、六日町は、当然もっと寒かった。しかし、雨の予報が、暗い雲のあいだに明るい白い雲や青空も混じり、どうやら晴れに向かっているような空だった。

Dscn0696_2駅から近いが、クボシュンさんのクルマで、まずは「さわだ食堂」へ。ここは、おれが故郷にいるあいだはなかったので知らなかったが、フェイスブックの「南魚沼!六日町!」に載っていたのを見つけ、気になっていった。40年ほど前にできた食堂らしい。いずれ、目下リニューアル作業中のザ大衆食のサイトに載せるとしよう。

とにかく、まずは、この町この季節ならではの、木の芽を食べる。アケビの芽のことだ。店主に玉子を落とすか訊かれたが、ナマの味と思い、抜きにしてもらう。これで、ビールを飲む。シャキッとした歯触り、やわらかな緑のような甘味に苦味がピリッと効いて。うーむ、これぞ、この町の春の味覚だ。

クボシュンさんはカツ丼、おれはオムライスを頼む。食べてアレコレ話しているうちに、上の原温泉に行って温泉に入ることになった。上の原は町からはずれ、西の山の中腹の高原といった雰囲気のところだ。池があって春には桜が咲く、昔から町の人の行楽地であり、高校卒業するまでは、時々遊びに行った。高校卒業して以来、初めてだ。スキー場ができ、温泉が湧き、あたりは大きく変わったが、町中よりは、風景に昔の面影を残していた。龍気という温泉旅館で、風呂に入る。はあ、温泉は、いいねえ。

まだ雪が残っている周囲の山々が見える龍気の前の畑には、この季節この地域独特の菜がなっていた(一番上の写真)。クボシュンさんは「大月菜」といったが、おれには、みな同じ菜に見えて、区別がつかない。大崎菜、長岡菜など、いろいろあるが、やさしい甘味があるやわらかい春の味覚だ。

上の原の帰り、六日町高校の前のケンチャンことケンイチくんの家の前を通った。中学の同期であり、高校の山岳部でも、彼は3年になってから入部したのだが、一緒だった。ちょっと会ってみたくなって、いるかどうかわからないが、クルマから降ろしてもらい、帰って夜の勤務に備えて寝るクボシュンさんと別れる。クボシュンさん、ありがとう。

Dscn0716ケンチャンは在宅だった。家は建て替えたが、彼は生まれたときから、ここに住んでいる。家に寄らせてもらうのは初めて、奥さんと会うのも初めて。あとで萬盛庵で聞いたのだが、同期のトコチャンの妹さんだそうだ。そういえば、どことなく似ていた、気性の明るく楽しいところまで。これまたひさしぶりの、この季節の味覚、チマキと先ほど畑で見たばかりの菜の漬物をいただく。

あれこれ話しているうちに、ちと思い出の場所を散策したくなり、辞す。ふらふら歩き、写真を撮ったりする。

Dscn072617時すぎ、萬盛庵に。ここに来ると、故郷に帰った、という気になる。町中の雰囲気は、かなり変わったが、萬盛庵の中は、人柄まで、昔の空気のままという感じがするからだろうか。テーブルに座って生ビールを頼むと、早速、木の芽が出てきた。生玉子落とし。別の小鉢のぬたは、食べたけど、なんだかわからない。女将のエッチャンに聞くと、ウルイとトリノアシだという。昔から食べていた山菜だという。ウルイを持って来て見せてもらったが、まったく覚えがない。人の記憶はあてにならないというが、そんなことがあるのだなあ。

Dscn0728おれが入った時は、にぎやかに飲んだり食べたりしていた、町内の会社の御一行さんという感じのみなさんが、持ち帰りのチャーハンなどを作ってもらって帰った。何度か電話が鳴り、出前の注文が入る声がする。おれは、土地の酒蔵の酒、高千代、鶴齢、八海山を飲むべく、まずはラーメンを食べて整える。ウドのキンピラが出てきて、高千代辛口の燗をもらう。

意外な展開になったのは、帰りの列車の時間が近づいてきた、20時少し前だ。仕事が一段落した萬盛庵のとうちゃんとエッチャンも一緒に飲み始めていた。ちょうど話が、昨年10月1日の同期会の幹事をやり、今年の冬の寒いとき、酔って側溝にはまって凍死したキイチくんのことになっていた。おれの背中で店の戸が開く音がして、エッチャンが、「チャーボー」と言った。振り向くと、同期のチャーボーと、もう一人は、やはり同期のミノルくんだ。お互いに、「やあ、なんで、ここに」と言いながら、握手を交わす。なんと、同期会では会っているが、こういう場所では初めてだ。もう、それからは、にぎやかなこと。

中学時代はよくおれのウチにも来て一緒に遊ぶことが多かったが、高校からは別になり最近の同期会以外は会う機会もなかったミノルは、横浜に住んでいるが、やはり、この時期になると山菜が食べたくなるらしい。前夜から家族と六日町の町内の温泉旅館に泊まって、今夜はチャーボーに電話して一杯やっての流れ。木の芽をほおばりながら、「これこれ、これだけは、こっちに来なくては食えない、これが食べたくて来るんださ」。同感、同感。

チャーボーとミノルが店に入ってきたとき続いて入ってきた若い男性が、おれの前に座っていたのだが、彼が、先ほど話題になっていたキイチの娘婿とわかる。そういえば、キイチとは、ここで何度か会ったことがあるが。そうかそうかと、また一段と同期の連中の話になる。すると別のテーブルにいた若い男性が、やはり同期のマツゴロウの息子だという。

チャーボーは地元で医者をやっているが、「死ぬときはこっちで死にたいだろう」と言う。そんな気になる夜だった。とにかく、なんだかんだ、にぎやかに盛り上がる。いったい、今夜は、どういうことだ。なんの引き合わせか。ふるさとの食堂の味と人のつながりのなかで、酔いは深まる。

が、泊まるわけにはいかない、帰らなければならない。20時50分ごろ六日町発の列車に乗らなければならない。フキノトウとコゴメとウドを、たっぷりみやげにもらい、エッチャンに電車の中に忘れないようにと念を押され、萬盛庵をあとにした。

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