『雲遊天下』111号に「大衆食堂から見るなくなったもの」を寄稿。
さきほど届いた『雲遊天下』111号。特集が「なくなったもの」で、おれは「大衆食堂から見るなくなったもの」を寄稿している。
この雑誌に書かせてもらうのは初めて。編集発行人の五十嵐洋之さんと、だいぶ前になるが一度お会いしたことがある。
特集の最初を飾るのは「大竹昭子インタビュー」で、南陀楼綾繁さんが聞き手。タイトルは「スクラップ&ビルドの街のつながりを生み出す」。
特集寄稿は、おれのほかに、のむみちさんによる「失われた名画座、失われる名画座」、岡崎武志さんの「上京して二十三年で失ったもの」。
おれは、失われた「人情」についてはよく話題になるが、それと一対のはずの「義理」については話題にならない、その話題にならないほど失われた「義理堅さ」についてふれ、もう一つ失われたものとして「労働や労働者との共感」をあげた。
最後を、このように結んだ。「もしかすると、失われたように見える「義理堅さ」と「労働や労働者との共感」には、共通する大切なことがあるのではないかと思っている。SNSなどの「つながり」で、好きでもないやつと暮らす地域や労働から離れやすい傾向もあるようだ。広がる裂け目のようなものを感じる。」
おもしろいことに、大竹昭子さんの話は、東京生まれ育ち「まさに中央線どっぷりの生活」から始まり、ニューヨークへ飛び出し、また東京にもどる。そして『日和下駄とスニーカー』(洋泉社)をまとめる。そこに「移動」が関係する。最近『上京する文學』(新日本出版社)を出したばかりの岡崎さんは、上京して失ったものを書いているが、これも「移動」が関係している。
いま日本の人びとのあいだでは、さまざまな亀裂があらわになっているが、その一つが「移動」に関わることなのだ。たとえば、「放射能汚染」をめぐってあらわれた「避難」「移住」、つまり「定住」と「移動」をめぐる亀裂だ。
このことに直面した「場所」は、いくつもあるわけだけど、首都圏でホットスポットとして注目を浴びた柏の、これは文字通り「苦闘」といってよいだろう、「「安全・安心の柏産柏消」円卓会議」の活動が本になり、12月6日に発売になる。タイトルは『みんなで決めた「安心」のかたち――ポスト3.11の「地産地消」をさがした柏の一年』(亜紀書房)。著者は、おれもなにかとシンポジウムなどでお付き合いさせてもらっている五十嵐泰正さんと「安全・安心の柏産柏消」円卓会議。
必要があってチラッと読んでいる。この本は、人間は、どうやって社会的に食べているかの本質に関わるドキュメントになっているが、まとめ的な発言で、五十嵐さんは「移動」や「亀裂」にふれている。後日、当ブログで紹介します。
ってぐあいに、偶然にも、いま目の前で「移動」と「亀裂」と「つながり」の問題が絡んでいるのだ。たぶん、これは偶然のことではないと思われる。今日は、これぐらいで。
とにかく、近頃ブームのように見える「つながり」は、それほど万々歳のものばかりではないのだな。SNSなどで簡単に「好き」だけでつながり、嫌なものはブロックしたり、見識や感覚の違いぐらいのことで憎悪し中傷し排除を強め、「亀裂」を深めている傾向も少なからずあるのだ。それは、もしかすると、失われた「義理堅さ」と「労働や労働者との共感」に共通する何かの、穴埋めができていない結果かも知れない。
『雲遊天下』発行元のビレッジプレスのサイト。こちらからもお買い求めいただけます。
http://www.village-press.net/?pid=51856043
『みんなで決めた「安心」のかたち――ポスト3.11の「地産地消」をさがした柏の一年』は、amazonで予約受付中。
http://www.amazon.co.jp/dp/4750512303/ref=cm_sw_r_fa_dp_DMiPqb0X59WN7
岡崎武志さんの『上京する文學』は、すでに読み終えているので、やはり後日紹介したい。とりあえず、写真だけね。
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