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2012/12/02

忙しくても、これだけは、『みんなで決めた「安心」のかたち――ポスト3.11の「地産地消」をさがした柏の一年』。

余裕の年末と思っていたのに、あれやこれやと「師走」な感じになっている。しかも、年末年始の予定が錯綜していて、なかなか決まらない。

よーするに、昔と比べると、何かとイベントが増えているか、ネット環境の進化でイベント情報が流通しやすくなったことが関係あるのではないかと思う。

物の生産が過剰になったあとは、サービスが過剰になり、そして文化や芸術なイベントの過剰時代か。そもそも、おれの最初の著書『大衆食堂の研究』が出た1995年頃は、本の発売にあわせてトークショーをやるなんて、会場も少なかったし、そのスジの限られた売れっ子たちのことだったが。

近頃は、食品にしても、「季節限定」や「地域限定」「期間限定」だのテキトーな名目をつけて、ようするにイベント的な売り方を織り込んだ商品開発をする。最初の商品開発段階からイベントを組み込んで、イベントで目を引きながら売ろうというものなのだ。「イベント商品」と申しましょうか。飲食店の営業も、おれもこのあいだトークしたけど、イベントで客を集めるのが日常化しているところが増えているようだ。

イベントが販売促進じゃなくて、販売そのもの。いつも「新装開店」のパチコン屋のよう。もう、それで、ドンドンあわただしいことになっている。あわただしくて、じつは、あまり儲からない。儲からないけど、ひとがやっているのに静かにしていては、ますます埋没して売れないのではないか、テナ不安も過剰になって、悪循環というか。

つぎは何が過剰に?足りないのはおれの財布の中身と頭の中身。

だけど、どんなに忙しくても、今年の年末は、これをぬきには語れない、『みんなで決めた「安心」のかたち――ポスト3.11の「地産地消」をさがした柏の一年』(亜紀書房、五十嵐 泰正・著+「安全・安心の柏産柏消」円卓会議・著編) の発売が、今週の6日に迫った。一足お先に、読ませてもらった。

これからの食を語るにあたっては、このことを避けられないだろうし、まだまだゆれ続けるだろう、食と「放射能」の問題。その取り組みの大勢は、この本の前と後では変わるだろう。いやいや、それだけじゃない、いわゆる「コミュニティ」だの「まちづくり」「まちおこし」ということについても、大きな一石を投じる一冊になるだろう。

「ホットスポット」といわれた拍で、何があったか、人びとは何を考え、何をしてきたか。本書は、人間はどうやって社会的に食べているのか、あらわになった亀裂をどう縮めていくか、のドキュメンタリーの書でもある。そして、「社会的に食べている」が忘れられた時に、傷つくのは誰か。

すぐ白黒つけて、「反対」「賛成」・「敵」「味方」と、角突合せ憎みあうのではなく、できることやることはあるのだ、ってこと。

ってことで、この件に関しては、じっくり取り組んでいきたい。本の販売は初速が大事といわれる昨今だが、それはそれとして、じっくり掘り下げながら、本書の普及の一助の片隅の端でも担いたい。

と、69歳の年末の決意を新たにしつつ、まずは、このリンクから。

本書の著者であり、「安全・安心の柏産柏消」円卓会議の事務局長を務めてきた五十嵐泰正さん(筑波大学大学院人文社会科学研究科准教授)がシノドス・ジャーナルに寄稿した、「「My農家を作ろう」方式の放射能測定がもたらしたもの」だ。
http://synodos.livedoor.biz/archives/2001647.html#more

そこにも書いてあるが、昨日は、本書の発売と「安全・安心の柏産柏消」円卓会議の一つの締めくくりの意味で、柏でシンポジウム(まさに、本の発売にあわせたイベント!)があったのだが、おれは都合が悪く出席できなかった。

シノドス・ジャーナルでは、2月15日発行のα-Synodos vol.94と、3月15日発行のvol.96で、「ホットスポットとよばれた地域がつくる『安心』とは」と題して、五十嵐さんを取材して記事にまとめている。これが、そもそも本書のキッカケといえるが、その一部はこちらでご覧いただける。「柏市で再生される「信頼」のかたち ―― 「農地を測る / 農地を見せる」で何が変わるか」
http://synodos.livedoor.biz/archives/1913579.html

この記事の取材・執筆を担当していたのが、当時シノドス編集部に在籍していた柳瀬徹さんで、フリーの編集者・ライターとして、本書の縁の下の力持ち的役割を担った。

なんとまあ、五十嵐さんといい柳瀬さんといい、おれの知り合いなのだ。

五十嵐さんは、最初に会ったときは一橋の院生だったと思うが、その後なにやかにやと酒を飲むだけじゃなく、2度ほどシンポジウムで一緒に登壇したこともあった。また、かつて青山ブックセンターの「カリスマ書店員」といわれた柳瀬さんは、たしか初めて会った時は、そこをやめたあとだったと思うが、それから転々としているあいだに、彼は『現代用語の基礎知識』の編集に関わり、声をかけていただき、それが「さまざまな食育」にまとまった。
http://homepage2.nifty.com/entetsu/sinbun05/syokuiku_gendaiyougo.htm

なんだか面白いつながりは、この食と「放射能」問題をめぐっては、まだほかにもあるのだが、またの機会に。

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