エロ全開の日の翌日はエロ全開OKのトークの日。
先週のこと。この雑誌に書く機会はないだろうと思っていた「グルメ」というより「食道楽」ハイソ誌の『四季の味』から、チョイとワケありの原稿依頼があって、15日が締め切りだった。なにしろ雑誌が雑誌だし、おれに声をかけてくれた編集さんに恥をかかせるわけにもいかない。おれにしては考え抜いたテーマと考え抜いた書き方で、おれらしく仕上げた。異文化との交流って感じで、けっこう書くのが楽しかった。こうしてニンゲンは生長するのですね。70歳になっても生長はあるわけで。今日、校正まで無事に終り、来月発行になるのかな?
翌16日。『四季の味』とは天と地ほど違う真逆の文化圏、上野オークラへピンク映画を観に行った。山﨑邦紀監督の『淫行フェチ 変態うねり尻』(原題は『ヘブンズ・ドア ~暴走女子2013~』だが、まいどのごとく営業的配慮によって替えられたもの)。山崎さんの作品を観るのは、2010年4月の玉子ピンクの試写以来だ。
13時半すぎに上映が始まり、終わったあと15時から、主演女優さんと山崎さんの舞台挨拶があるので、この日を選んだ。17日には、どういうわけか山﨑さんには女子のファンが多く、その女子らが「暴走女子と行くピンクツアー」を企画し、それが15時から同じ映画を観る。これに合流し一緒に飲むというテもよかったが、17日は、わめぞみちくさ市のトークに申し込んであったから、1人でもよい16日した。
上野オークラは、上野公園の正面入口の近くだ。公園入口の毎年早く開花する2本の桜が咲いて、人だかりがしていた。映画館に着くと切符売場のロビーに山﨑さんがいた。撮影の鏡早智さんを紹介される。小柄だがパワフルな感じの着物の女子。山﨑監督とは初めてだそうだが、かつて山﨑さんと浜野佐知さんの製作会社「旦々舎」で撮影の助手をしていたことがあったそうで、まるで初めての顔合わせではないとのこと。
17日は女子専用席が設けられるという話だったが、この日も急遽、女子観客のために専用席が設けられるにぎわい。よくわからないなあ、女子ってのは。騒ぎのあるところ女あり、か。フツウの客も多く、中高年男ばかり。おれが座った席の隣は、おれとのあいだの席に大きな「移動用」荷物を置いた60代と思われる男。
映画が始まった。場面は、河にかかる鉄橋、そして玉子だ!ああ、あの観念の衣を着たような理屈っぽいピンク映画だ、と、思ったのだが、その予想を裏切る展開だった。理屈はあいかわらずあるのだが、衣を着たように前面に出ることはなく、以前は女だろうと男だろうと肉感は乏しかったが、今回は肉体が自然に躍動していて肉感的なのだ。おっぱい、おしり、ムチムチクネクネのエロ。
そして、ウツの男が檜の空の風呂に入っている。この場面が、風呂場の感じも含め、なかなかよかった。ブンガク的抒情も、ありましたね。そこで義理の娘(美月さん)に、手コキを迫る。爆笑。おれはウツの病人だからね、って調子で。よーするに、変態だが、以前の変態男のようなセックスと関係ない理屈は、いわない。何度も爆笑。
ま、あれこれ理屈はあるが、アホな男たちと、そういう男たちにツバして颯爽と生きようとする女。ピンクだが、寅さん映画が裸で演技しているような感じで(とはいえ寅さん映画のように寅さんや男に甘くない)、デジタル映像だけど35ミリフイルムで撮っているから、それなりに味のある画面が生きていた。娯楽と哲学の絡み合いに、男と女の絡み合いを重ねた妙か。なかなか面白かった。
舞台挨拶は、女優の、美月さん、大城かえでさん、山口真里さん、山﨑監督、この映画ではプロデューサーだが監督でもある浜野佐知さん、あとから、鏡早智さんと男優の竹本泰志さんも登壇。面白い話がたくさんあったが、書くと長くなるから、省略。
終わって、17時前、大統領へ。山﨑さんと、新宿ベルクにも置かれたという17日の「暴走女子と行く!ピンクツアー」のチラシのイラストを描いたヨキキロさん、『第七官界彷徨』など非ピンク系も含めて浜野組の撮影をしている小山田勝治さん、男優の竹本さんと、まずは飲み始め、あとからサイン会を終えた浜野さんと女優の山口さん。いやあ、楽しく飲んで、面白い話がたくさんあった。
21時ごろには泥酔状態。もう一軒という彼らと、モロロウと別れて記憶喪失帰宅。大統領の前で別れぎわ、浜野さんとハグしたら、右頬にブチュとキスをされ、その一瞬だけ酔いからさめた。そこのところが、翌日になってもツバが乾いたあとのような感触が残った。うへへへ。
17日は、昼になっても残る激しい二日酔いだったが、雑司が谷みちくさい市へ行って、15時半からの荻原魚雷さんと倉敷の蟲文庫の田中美穂さんのトークを聴いた。
トークの前に、みちくさ市の古本市を見て歩き、岡崎武志さんのところで、古本で買っては読んでいる中公新社の村上春樹翻訳シリーズの『バースディ・ストリーズ』を買った。まいどのことだが、買うと岡崎さん手製のおみくじがある。ひいたら、「吉じゃなくて エロ」ってのが当たった。「エロ」はタテに描くと、描き方で「吉」にも見えるのだ。で、「今日一日 エロ全開でいっていいです」と。岡崎さんは、ピンク系とは反対のカタイ書評を書くひとだけど、面白い。
でもねえ、昨日、エロ全開しちゃったよ。って感じで、エロ漫画屋の塩の字が出す「嫌記屋」へ。前日の山﨑作品の話し。おれが山﨑さんの映画観たよというと、あんなもの見てという顔して「おもしろくなかっただろう」。いや、今回は、これまでと違い、あまり理屈っぽくなく、肉感的だったというと、「じゃ、エロだったか」というから、そうだというと「それじゃ、ただのエロ映画じゃねえか」と。いや、それが、こうこうでと説明すると、あいつがそんな映画つくるのか解せないという顔。ともあれ塩の字は、長年の罵詈雑言のバチがあたっての脳梗塞も、憎まれっ子世にはばかるで回復、7月頃からは酒も解禁になるのだそうだ。解禁祝いをして酔いつぶしてやろう。
ここまで書いたら、もうメンドウになったので、オシマイ。荻原魚雷さんと倉敷の蟲文庫の田中美穂さんのトークは、期待した展開で、なかなか面白かった。後日、書くツモリだが、魚雷さんは山﨑さんと並んで、野暮でごくつぶしでぐうたらな未来の「希望」である。
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