「アメ横から考える」を考えている場合じゃないのだが。
山手線・京浜東北線の右、線路際、この狭い谷底のようなアメ横の空間には、いろいろなことが詰まっている。
先日、五十嵐泰正さんから、『アメ横から考える -イメージ、コミュニケーション、空間性-』という、A4版217ページもある、冊子をいただいた。「筑波大学社会学類社会学専攻 2012年度 社会調査実習Ⅱ 報告書」というものだ。
約1年間かけてのアメ横調査の報告書で、この調査の始まる前に、五十嵐さんや学生さんたちと大統領で飲んだ。当ブログの2012/02/25「朝10時半から上野で呑み始め、終電で泥酔帰宅の一日。」てのがそうなんだね。朝からのキックオフ飲み会のようなものに、参加させてもらった。それで、一年間がすぎ、この報告書になった。
いただいたけど、こういう報告書は、さらさらと読み流すことができないから、少し余裕が出るまでと思い、机の脇に置いといたのだが、やはり、なんとなく気になって、手にとって、パラパラパラ。
おお、すごい、報告書だ。「Ⅰ、来街者の基礎分析」の最初、「アメ横の経営者と来街者の抱くイメージの乖離について」では、その乖離におどろく。「明るさ」も「充実度」も「活気」も、来街者のプラスイメージは圧倒的なのに、経営者のプラスイメージは、その半分ぐらいと低いのだ。何よ、このギャップ、という感じ。思わずに気になって、読んでしまい。
Ⅱ、観光地としてのアメ横。Ⅲ、賑わいと回遊性。Ⅳ、「アメ横的」なコミュニケーションの快楽。それぞれ、なかなかおもしろい。調査と統計もおもしろいのだが、分析に引用される、さまざまな学者が述べていることが気になったりする。それに、アメ横で働く労働者の状況にまで目配りしている。だけど、詳細に読んで、考えなくては、そう簡単に感想を書けないことばかりだ。
いま、どこの商店街も「観光化」をめざしている感じがある。「活性化」イコール「観光化」という感じなのだ。やどやゲストハウスの女将も中野観光協会なんぞでがんばっているのだが、観光地ではない商店街の「観光化」は、ようするにこれは一つの景気づけなのだと思ってやるぶんにはよいが、いろいろ難しい問題をはらむ。
アメ横の場合、「観光地」という性格はゼロではなかったが、「商業地」が長く、その他にない商業地としての魅力が観光につながってきたという印象を、おれは持っている。近隣の飲食店などを相手に卸の商売をしていた商店が、核の一つになっていたけど、その状況は、変わりつつある。
と、書いていると長くなる。こうしてはいられない。といいながら、縦長通り抜け型のアメ横の場合は、近隣商店街との回遊性が課題になるだろうし、アメ横ショッピングセンターの活用も課題だなあと思うこともあった。そして、こういう報告書を見ると、おれはマーケティング屋で、似たような調査をしてきて、市場調査には社会調査も含まれるけど、こういう社会学の社会調査と重なるところが多く、だけど、マーケティングと社会学では、やはり違うのだから、どこが違うかというと、主には分析の視点と分析になるのだろうかとか、「市場」と「社会」の関係は難しい、あれこれ、考えることが多い。このへんで、やめておこう。しかし、学生も、いろいろだろうが、この学生さんたちは、すごいものだ。
それに、アメ横は、ますますおもしろい。五十嵐さんが「まえがき」での述べているように、「わずか南北500m余のアメ横という空間が、消費社会化と購買行動の変化、コミュニケーション志向の変化、再開発と観光化、グローバル化と多文化化、そして情報社会化といった、現在の社会学的な大テーマが凝縮された場所である」からだ。
ああ、大統領へ飲みに行きたくなった。いやいや、早く仕事を一段落させて、この報告書を、じっくり読みたい。
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