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2014/05/27

『大衆めし 激動の戦後史』にいただいた、お声、その6。

いま関川夏央の『昭和三十年代演習』(岩波書店)を読んでいる。関川夏央の本は、けっこうよく読んでいると思うが、「好き嫌い」をいえば「嫌い」な作家であり、「反面教師」としては優れた教師だと思って、よく読んでいる。

ま、おれは昔から、自分が共感できたり、自分をほめてくれる人より、ちょっと違うなあ、イタイところを突いてくるなあ、イヤなやつだね、なーんていう避けてしかるべき人に自ら近づいていったり、よく酒を飲んだりするクセがあった。30代には、おれのことをボロカスにいうやつと、よく酒を飲んだし仕事もよく一緒にやったことが、けっこう糧になっていると、いまも思う。

自分が共感できたり、自分をほめてくれるひとは、自ら近づかなくても、自然に縁ができて近づきになれるものだ。言葉尻や上げ足をとってくるようなやつはツマラナイ人間で相手にする必要もないが、明確な考えを持った、ちがう立場からの批判などは、必ずしも「反面教師」とはいえないにしても、最もよい「教師」だと思う。関川夏央の本を読むことは、おれにとっては、そういう「教師」とつきあうようなものなのだ。

それはともかく、おれは、「文章がわかりやすい」だの「感動した」「感動的」だのといったほめ言葉をいただく気は、まったくない。文章の「わかりやすさ」や「感動」を求めている方には興味はないのだ。おれも誰かの本に、文章の「わかりやすさ」や「感動」を求める気はない。ましてや本の体裁など、どうでもよいとはいわないが…体裁を気にする方にも興味はない。

なので、このようなツイートを見ると、うれしくなってしまう。

ochaseijin ‏@ochaseijin 0:26 - 2014年4月6日
https://twitter.com/ochaseijin/status/452467293604569088

ブックスルーエ、大盛堂、八重洲ブックセンターの3店合同フェアで買った、遠藤哲夫さんの『大衆めし 激動の戦後史』が面白い。ちょっとクセのある語り口だが、中身は王道。 http://instagram.com/p/macKu7OOE6/

「ちょっとクセのある語り口」のところを読んでいただき、中身に評価をいただく、ありがたいことだ。
なので、

エンテツこと遠藤哲夫 ‏@entetsu_yabo 4月6日
@ochaseijin ありがとうございます!

と、お礼の返信をした。
すると。

ochaseijin ‏@ochaseijin 4月6日
@entetsu_yabo あぁっ、恐縮です。「野菜炒め」考がとても示唆に富んでいて、食にとどまらない広がり(住居、生活、家族、文化まで)を感じます。

と、具体的な感想をいただいた。

最近もありがたい読者がいて、ツイッターにこのように投稿してくださった。ツイッターは、1回140字までしか投稿できないので、5回にわたっている。ありがたいことだ。

Hikaru_Saitoh ‏@hikaru_sth 17:16 - 2014年5月21日
https://twitter.com/hikaru_sth/status/469028928984588288

『大衆めし 激動の戦後史』(遠藤哲夫、ちくま新書、2013)を『ラーメンと愛国』『フード左翼とフード右翼』の流れで読む。速水の2著に比べ、圧倒的に面白くけた違いに勉強になった。書手の蓄積と根本の違いがこう出るとはびっくり。速水のは『大衆めし』の前菜としてすばらしい、という位置。→

Hikaru_Saitoh ‏@hikaru_sth 17:58 - 2014年5月21日
https://twitter.com/hikaru_sth/status/469039512434135040

『大衆めし』(遠藤哲夫、2013)で勉強になる点は多数あるが、現代「食」日本思想史での重要な切断面をあげている点は必押え事項。二つある。①江原恵『包丁文化論』出版、これは1974年。②玉村豊男『料理の四面体』出版、これが1980年。遠藤の意見は説得力がある。→

Hikaru_Saitoh ‏@hikaru_sth 18:52 - 2014年5月21日
https://twitter.com/hikaru_sth/status/469053082064547840

遠藤哲夫は、『大衆めし』(筑摩書房、2013)で、現在の食現象を見る上で重要な二つの概念の興隆について、年代などを示しつつ、また、関連文献を提示して、整理している。独自にリサーチする必要はあるとはいえ、意味があるし便利。その二つの概念は「食文化」と「グルメ」。→

Hikaru_Saitoh ‏@hikaru_sth 20:13 - 2014年5月21日
https://twitter.com/hikaru_sth/status/469073501228236800

遠藤によれば(@『大衆めし』(2013))「食文化」がブームになるのは、1970年代。中心人物は石毛直道。起点として押さえるべき文献は、石毛の「錦市場探訪」(『ミセス』1971年6月号)であるという。石毛を中心として「食文化」は学術化の道も歩んでいく。→

Hikaru_Saitoh ‏@hikaru_sth 20:13 - 2014年5月21日
https://twitter.com/hikaru_sth/status/469073540180762625

遠藤によれば、「グルメ」が流通し始めるのは1980年あたりから。急速に広めた中心人物は山本益博。ポイントの文献は『東京・味のグランプリ200』(講談社、1982)らしい。山本を先駆として「グルメ」によって食現象は、ファッション化、ゲーム化、大衆化、ポピュラーカルチャー化していく。


この方のほかのツイートを見ると、読書感想が多く、自分にとって「勉強になる」本の評価が高いようだ。何を勉強したいかにもよるが、おれの本が、そのような期待に多少なりとも応えられたのだろう。

「勉強になる」本を求めてよく読んでいる人は、「学ぶ力=読む力」もあるようだから、こういう読者にであえるのはうれしい。

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