一昨日、29日(日)は、予定通り、弦巻のtime spotで、この日一日だけ開催の「非公式物産展〈地球の歩き方 初回オリエンテーション編!〉」へ行ってから、経堂のさばのゆへ行った。
まだ前夜の酒が少し残っていたし、雷雨が来そうなので様子をみながらグズグズしていたら、ちょうど桜新町の駅に着いた16時過ぎごろだったかな? あたりは激しい雷雨だった。駅構内で避けている人たちにまじって小降りになるのを待ち、歩く。会場がある弦巻中学校あたりは、初めて。駅からの近道もわからないので、わかりやすい大きな道路をたどったら10数分かかった。
time spotの会場もおもしろかった。入口の看板がなければ、倉庫か工場のような外観。中は、間仕切りのないがらんどうの、二階の高さぐらいはありそうな空間、その半分はテキトウに本棚やテーブルやイスや机があり、半分ほどはしっかりした木を組んだコーナーが二つ造られている。ある種のリフォームとシェアの思想の空間か。普段は事務所だそうだが、人が集まりやすそうな、いい感じだ。
大村みよ子さんがいて、ひさしぶりの挨拶をしながら500円の会費を払い、大村さん手作りの参加証をもらう。木造の手前の空間に、非公式物産展が開催された場所の印のついた日本地図や、いろいろな地方のパンフや古い観光案内、それに昔の岩波写真文庫シリーズなどが、テキトウにある。
大村さんは、その中から、おれがこのあと経堂のさばのゆで「俺とエロと手拭と私」のトークをやると知っていて、手拭を数枚取り出してくれた。彼女は「山ガール」なので、山の手拭が多い。とくに、八甲田山の手拭が、堂々とした山容の絵、文字は映画「八甲田山」のタイトルロゴを使用して、すごくよい。ほかに、谷川岳や鳥取の大山など。
そういえば、昔は、たいがいの山小屋で手拭を売っていた、ペナントもあったね、バッチはいまでもある、といった話しをする。この企画は、こうやって、話すことが「アート」になっていくのだ。
もう一度、案内から引用。「日数や距離に差はあれど“旅”の経験の無い人はあまりいないと思います。そして、旅の動機やスタイルは以前よりもずっと多様化しているような気がします。/旅先での出来事は、話すのも聞くのも楽しいものです。/せっかくみんな面白そうな旅をしているのだから、ツイッターやブログとかでその断片を見せるだけでなく、自分の旅を話したり、誰かの旅の話しを聞いたりする場を作ると楽しいんじゃない?そこから繋がったり発展することとかあるんじゃない?と思って考えたのがこの企画です。」
おれは、2007年の夏に行って、このあいだの地震の津波で跡形もなく消えた、釜石ののんべえ横丁の写真をプリントして持って行った。その話しやらもし、「非公式物産展」って、最初はよくわからなかったけど、だんだんわかってきたとおれがいうと、大村さんは「よく私のやっていることはわかりにくいといわれるけど、わかりやすくする必要はないって思うようになった」といった。大いに共感するところがあって、その話しになったが、省略。
木造のもう一つコーナーは厨房とカウンターになっていて、ま、屋台の気分だ。そこでは、「bikiさんが韓国で食べた「マッコリと米粉で作るおいしい炭水化物」の再現」ってのをやっていた。かれは、料理を作りながら、変わるソウルの街の様子を話す。カウンターに座ってビールを飲みながら、話しに加わる人たち。別の床のコーナーでは、「自作アルコールストーブワークショップ」というのをやっていた。見るからに「山男」という感じの人たち。
それぞれが思い思いに何かをしたり、話したりしている。近所の食堂の話にもなった。
しかし、時間がない。桜新町の駅で17時15分ごろに、トークのお相手、手拭番長じゅんこさんと前回のゲストおのみささんと待ち合わせ、タクシーで経堂へ行くことになっているのだ。17時過ぎに急いで会場をあとにし、とにかく、17時半ごろ桜新町駅の地上で、浴衣美人の2人が、おれがなかなかあらわれないで、あのクソヤロウという顔をしているのと無事に合流。
トークは、ほぼ18時半にスタートした。じゅんこさんは、本を出されているわけではないし、トークショウなどは初めてなので、参加者の人数はあまり期待していなかったのだが、始まるころには、もう20名をこえていた。そのなかには、前回都合が悪くて来られなかったひとや、なんと、おもいがけなく、スソさんと久家さんが!
それに、若い男性の一人は、この日のために浴衣姿。ってことで、浴衣姿が3人。エロ手拭トークらしい雰囲気になった。
手拭番長じゅんこさんとは、何度か酒を飲んでいるが、手拭の話をするのは、この日が初めて。そもそも、おれはじゅんこさんが手拭で有名な会社に勤めていることも知らなかった。トークに入る前に、すでに飲みながら、おれが持って行った手拭を見せると、見ただけで、これはドコドコのメーカーの手拭とわかっちゃうのだ。
トークは、手拭の柄やデザイン、品質や歴史などのことより、暮らしのなかでの使い方使われ方を中心にすることになっていた。会場のみなさんも、ほとんどの方が手拭を持っている、つまり「ありふれたもの」だが、うまく使われているとはいえない。おれの場合も「死蔵」が多い。やはり、「ありふれたものを上手く」が必要なのだ。
まずは、まだタオルやハンカチより手拭が圧倒していた、おれの子供のころからの話から始めた。そして、話は、あっちに転がり、こっちに転がり。
おれは化粧をしないから知らなかったが、女性はクレンジングにカネがかかるらしい。じゅんこさんによると、手拭をちょちょい濡らして拭くと、きれいに落ちるのだそうだ。クレンジングを買う必要ないという。それから、手拭で肌を拭くと、肌がしっとりとなる、タオルだと、なぜかわからないが水分不足の肌の感じになってしまうとか。
そんなことを話しながら、じゅんこさんは手を動かし、手拭をたたんで小物入れや財布にしてみたり、テイッシュ箱のカバーにしてみたり。なるほどねえ。手拭は、長方形の布だから、これを紙のように折りたたんで、いろいろなものが作れるし、たたみ方で正方形にして、使い方も広がる。
と、おれは、10歳ごろにはやっていた、手拭二枚で覆面して遊ぶ、嵐寛寿郎の「鞍馬天狗」ごっこを思い出した。やれるかどうかやってみたら、あんがい思い出すもので、やれた。60年ぶり。
手拭は、もとはといえば、晒しだ。いまでも晒しは売っているが、これに布用のペイントを使って、自分の好きな柄をつけることもできるそうだ。とにかく、使ってこそのもの。それに、いまの手拭は、ほとんど化学染料を使っているので、使わないでいるとそこから痛む。使っては洗い、使っては洗い、使って洗うほど、柔らかい感触になっていく。手拭番長じゅんこさんは、たくさんの手拭を持ってきたが、一番長く使っているのは15年。布の硬さ、柔らかさによって、使いようもいろいろ。
話しながら、いろいろアイデアが浮かんだ。新たな企画のヒントもあった。
この日、おれは、澤姫試飲会のジャンケン勝ち抜き戦で勝って手に入れたまま、使っていなかった澤姫の前掛けをしてトークに臨んだ。前掛けや、店の暖簾などは、手拭の仲間なのだ。
トークが終わったのは20時近く、それからにぎやかな懇親会になった。いろいろな人がいて、この日が誕生日の馬場さんもいたし、いろいろ、酒の量といい、じゅんこさんの話しの内容といい、チャチャの入り具合といい、ひとの混ざり具合といい、なかなかエロうよい加減のトークだった。
そして、手拭番長のほかに「酒呑番長」の異名のあるじゅんこさんは、前回のエロトークのときに、ホッピー外1本で、中9杯飲むという、「ホッピー」というより「ホッピー風味」の飲み方の記録をつくったのだが、この夜は、外1本で、中11杯を達成。生まれて初めてのトークを無事に終えた疲れとよころびもあってか、最後はご主人の肩にもたれて帰って行った。が、その翌朝、つまり昨日は、何事もなかったかのように、普通に出勤し、さらに記録を塗り替える意欲満々とか。めでたし、めでたし。
おれは、早速、手拭を洗って干した。まずは、洗って干して、取り出しやすいところに重ねておいて、どんどん使う。
じゅんこさん、おのみささん、参加のみなさん、ありがとうございました。まだまだ、おもしろいことやりましょう。
「非公式物産展」も、これからが、楽しみ。
画像は、すべて、さばのゆ亭主の須田泰成さんの撮影。
