雑誌って、ナンダロウ。本って、ナンダロウ。南陀楼綾繁って、ナンダロウ。
もともと出版だの編集だのには、あまり魅力を感じていたわけではないし、ライターなんぞになりたいと思ったこともなかった。ひょんなことから、20年前に『大衆食堂の研究』なる本を出してしまい、出版業界や文筆業界の片隅で仕事をしてきた、という実感があるほど仕事もしてない。ライター稼業というものに、ある種の後ろめたさを感じながら、成り行きでやってきた。
だけど、編集そのものや、表現というのはおもしろい。そもそも編集だの表現だのは、出版業界、つまり紙の上やメディアだけのものではなく、どんな仕事にも付きまとうことだ。「経営」も、ある種の編集であり、表現であるように。ということを、あらためて考える機会が、昨日、あった。
南陀楼綾繁さんからメールで問い合わせのことがあり、やりとりしているうちに成り行きで、昨日は川口市メディアセブンへ行くことになった。
ここで6月から「「袋雑誌」をつくろう」というワークショップをやることになっているナンダロウさんが、そのガイダンスのような、「ミニコミ」についてのトークをやるのに招かれたのだ。19時開始なので、少し前に着いた。
川口市メディアセブンは、川口駅そばのキュポ・ラという、川口市の施設と一般商業施設が入居する、いまどきの官民同居の複合ビルにある。このビルの設計には、知り合いのタナカさんが関係していて、前から行ってみてといわれていたのだが、とくに行く機会もなく、ようやく行くことができた。タナカさん、なかなか立派な建物を設計しているのですねえ。とくに図書館階の5階6階が、吹き抜け構造で、なかなか豪華というか、「市民のユトリやシアワセ」をカンチガイさせそうなほど感じさせる。
ナンダロウさんのトークは、かれが収集の多彩な「ミニコミ」「リトルプレス」とよばれるたぐいのものを見ながら、1時間半ほど。「私の表現」をカタチにすることの多彩な実例と楽しさ、ほとんど初めてのことなので、気まぐれで行った割には、なかなかおもしろかった。
「表現欲」というのは、食欲や性欲にならぶ人間の欲望なのではないかと思ったり、そういう人間の「狂気」を感じたり。
30名ほどの参加。質問になってわかったが、今年高校を卒業したばかりの18歳が最年少。
トークのあと、トークで使われたミニコミを実際に手にとって見る機会があり、また、下の写真、平山亜佐子さんの「純粋個人雑誌」を謳う『趣味と実益』は販売していたので、壹号を買った。今日開いて見たら、まさに表現欲と狂気のカタマリのような。
21時チョイ過ぎ。初対面の、メディアセブンの担当の方と、平山さん、やはりトークのときに見本にされたモノを作ったKさん(いま21歳のKさんが小学校5年だかのときに作った少女ファッションがテーマのものが、すごい傑作、写真を撮り忘れたのが残念)、それからトークが終わるころ駆けつけた既知のヤマガラさん、6人で近くの居酒屋へ。
ふだんあまり出あうことがない顔ぶれで、なかなか話がおもしろかった。
もんじゃ焼の話になったのだが、「川の東京学」とも関係あり、もんじゃ焼に限らず、隅田川・荒川流域の食文化という視点で見なおさなくてはならないことがありそうだ。
出版業界については、「不況」について、いろいろ言われていて、このブログでも何度か書いているが、ま、ようするに出版業界というのは、いちばん「近代化」が遅れている部類で、「旧態依然」の状態が多く、平均的にイノベーション能力も低く、それに慣れっこになっているのが病根の一つだと思う。
出版社は、「賞」なんか設けてセールスプロモーションを図るより、出版社と編集者自らが出したいテーマを決め、書きたい著者を広く募り、コンペで著者を選ぶぐらいの企画をすすめるとか、いろいろ「活性化」のやり方があると思う。「旧態依然」に慣れっこでは、できないだろうが。
「表現欲」と「狂気」にふれ、そんなことも考えた。
ところで、まだブログでは紹介してないが、南陀楼綾繁さん新著『ほんほん本の旅あるき』(産業編集センター)は、断固オススメです。まさにナンダロウさんの本領発揮、面目躍如、快著、これまでのナンダロウさんの本のなかで最高。ナンダロウさんに厳しいおれもベタ褒め。
自称「本好き」は、けっこういるけど、では「本」とは何か、本の本質について語れる人は少ない。おれは、本好きじゃないけど、本の本質ぐらいは、わかっているつもりなのだが。
ナンダロウさんは、「これが本の本質というものだよ」と大上段に構えるのではなく、「全国の個性的な本屋さん、変わり種の本にまつわるスペースをゆる~く紹介」しながら、自分が本の地べたをウルウロした体験から語っている。この人ならではの芸だろう。
「「袋雑誌」をつくろう」ワークショップ参加の受け付けは、5月24日まで。
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