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2015/05/30

豚レバ刺し問題。

一昨日、昨日とスノビズムにふれることを書いていたら、1995年以後の、とくに食がらみのそれが気になって、あれやこれや古い資料を出して見ているのだが、なかなかおもしろい。

考えてみれば(というまでもなく)、『大衆食堂の研究』の帯には、「気どるな!力強くめしをくえ!」とあって、このキャッチフレーズを掲げ、名刺にまで刷り、おれのライター稼業はコンニチまで来ているのだ。しかも、上京したが「東京者」になりきれなかった田舎者として。

自身のフォークロアから飛躍できなかった馬鹿者ともいえるか。馬鹿は馬鹿を洗練させながら開き直る。

ところで、自身のフォークロアと食べ物や味覚は大いに関係するところだけど、最近の豚レバ刺し禁止騒ぎで、またそれを思った。

いろいろ姦しいなかで、「食文化消える」店主ため息=E型肝炎感染者、昨年最多-豚レバ刺し禁止〔深層探訪〕時事通信 5月30日(土)8時31分配信 の記事にあった、墨田区向島の大衆酒場「かどや」の店長のコメントがらみの記述が印象に残った。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150530-00000032-jij-soci

それは、この部分だ。

「店長の男性(40)は「下町では昔から豚のレバ刺しを出す店が多い」と話す。理由は安さとボリューム。豚レバーは牛と比べ仕入れ値が5分の1ほどで、「大衆酒場で安く出すには、鳥か豚のレバーになる」と明かす」

この話のおもしろさは、「安さとボリューム」であり、味にふれてないことだ。じつに、気どらない、即物的な文化。安さとボリュームを堪能するよろこび。いわゆる下町の大衆食堂や大衆酒場の文化とは、スノビズムから見れば文化とは言えないような即物性に、生き生きとしたフォークロアが息づいていて、だから、やはり、文化なのだ。

そういうフォークロアに生きてきた人たちにとっては、今回の「禁止」は、「残酷」といってもよい措置だと思う。インディアンとインディアン文化が抹殺されてゆくような。

豚レバの生食の危険は指摘されていることで、それ自体にどうのこうのはないが、リスクと禁止の措置のあいだ、それと文化の関係は、十分論議されたようには思われない。

続き→2015/06/11「豚レバ刺し問題、もう一度。」

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